444 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/07/07(土) 04:28:53

三枝さんは座った状態から両手をついて立ち上がろうとしているが、やはり僅かだがふらついている。
フラフラしているのに歩かせるのも忍びない、背中を貸す事にしよう。
「三枝さん、無理はしないでいいよ、背中貸すから乗ってくれ」
「え? ええっと……いいのかな?」
「大丈夫、三枝さん軽いから」
それは……思い出すと顔が赤くなるが昨日の風呂で実証済みだ。
「そういうことじゃないんですけど……それじゃお願いしちゃいます」
ぺこりと頭を下げて、そのまま倒れ込むように背中に乗る。
爪先だけで膝立ちですらなかったので危うくバランスを崩しかけるが、それを堪えて中腰になる。
「それじゃ居間まで歩くけど、落ちそうだったり、嫌だったら言ってもらえるかな?」
なんとなく、しがみつく事さえ出来ないように思えたので一応言うだけ言っておくことにして、手を後ろに回して太腿を脇に挟み込んで下半身を固定する。
「……はい、わかりました、大丈夫です」
少し躊躇していたようだったが、首に手を回して上半身を固定する。
これならそう簡単には落ちないだろう。
……とりあえず、背中に当たっている柔らかな感触について言及するのは止めておこう。
既に顔が赤くなりかけているこの状況から意識するとどうしようもなくなってしまいそうだし。


三枝さんを背負ったまま居間に足を踏み入れると、道場に居たはずの面々が各々タオルで汗を拭ったりしながら休憩している。
「これはまた随分と……」
腹ごなしと言いながら始めたらしい事は相当に厳しい『特訓』だったらしい。
蒔寺は会話をする元気もないのかタオルを顔に掛けて部屋の隅で倒れているし、遠坂やルヴィアはそれに比べれば幾らかマシだが、頭にタオルを被って静かに座り込むその姿は15ラウンド戦い終えて燃え尽きたボクサーみたいだ。
ジェネラルは飲む気にならないのか、目の前の卓袱台に置かれた茶を睨み付けるようにして硬直している。
なのはとフェイトは熱で真っ赤になって床の上に倒れ込み桜と名城にタオルで扇がれている。
……昨日のダメージは治りきっていないはずなのだが、あんなに消耗するほど動き回って大丈夫なのか? 普通に考えれば悪化しそうだが。
涼しい顔をしているのは先生とライダー、それにシャリフさんだけだ。

……疲労しているみんなを羨ましいと思った。
身体はぐったりしているが全員目は死んでいない。
特に何人かは疲労よりも充実感が勝っているのか、身体が回復したらもう一丁と言いそうな位目が燃えている。
「衛宮くん、下ろしてください」
「あ、そうだね」
三枝さんを床にゆっくりと下ろすと、全員の様子を見て回ろうというのか、少しだけふらついた足で歩き出そうとしている。
「……三枝さんは大丈夫なのかい?」
これで倒れられたらどうにもならない。
「平気です、それよりも、疲れを溜めさせないように太腿とかを揉んであげてください、本当は歩いたりしてクールダウンさせた方が良いんですけど……ちょっと無理みたいですから」
ああ、そう言うことか……自分もふらふらなのにそう言う気遣いを忘れないのは凄いと思う。
良い言葉が思い浮かばないが、優しいとかそういう類のものではなくて、むしろ母性に近いような……

っと、考えるより行動だ。
体が冷えるよりも前に少しでも足やら腕、体全体の乳酸を散らしておかないと筋肉痛やらで後々……夜にまで影響しかねない。
三枝さんは蒔寺の足を揉みほぐしている。
そしてライダー達はクーリングまで済ませたのかくつろいでいる。
と、なれば——


山岡士郎:遠坂の体を揉む
北倉志郎:ルヴィアの体を揉む
鈴木史朗:なのはの体を揉む
伊東四朗:フェイトの体を揉む
佐野史郎:ジェネラルの体を揉む
衛宮士郎:……いや、ちょっと待て

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年11月24日 14:12