672 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/07/20(金) 04:48:57
口中の水分はとうに乾ききり、心臓の鼓動は早鐘のように打ち続けている。
それに伴って体温は上がり続け、段々と目眩が激しくなり。
「きゅう」
目眩が三半規管で修正できる範囲を超え、足下の地面が喪失したかのように倒れ込んだのだ。
残った一同、音がして『まずい』と思うと同時に僅かに冷静さを取り戻し、倒れたなのはを抱えて即座にその場から離脱した。
その際に全員が足音一つ立てなかったのは驚きの一言であろう。
「とりあえず、水を飲ませて縁側で休ませましょう……それから私達も一回冷静にならないと危険ね」
「……うむ、確かに、このままでは二人の顔をまともに見られん」
その後、居間に直接戻ることも出来ず、赤い顔のまま言葉を交わした。
荒い呼吸を唐突に止めることは出来なかった。
「……ん?」
だが貪るように豊かな胸に貪りついた舌の動きが唐突に止まった。
腰の動きと共に漏れ出してしまう声も、その声に酔いしれるように動き続けていた腰も、その動きを止めていた。
「どう、したんですか?」
唐突な停止に、桜が僅かに不満と疑問を漏らす。
「いや、何か聞こえたような気がしたんだが、桜は何か聞こえなかったか?」
「……いえ、私は全然、それよりも、あと一回だけ、良いですか?」
結局、二人は物音に大した注意を払うことなく、ここ数日分の性欲を一気に解消した。
二人が後始末を終え居間に戻ろうとした頃には、夕食の予定時刻は疾うに過ぎていた。
「……ん?」
縁側に誰か居るな。
あれは……
「フェイト、それになのはも、何してるんだ?」
風呂に入った様子もないから、涼んでいると言うわけでもないだろうが……なのはは縁側に寝ころんでいた。
「あ、し、し、士郎さん、こっ、こんばん、は……」
「こっ、こんばんはっ!」
二人とも明らかに動揺している。
なのはに至っては起き上がりこぼしの如くがばっと起き上がってがばっと頭を下げた。
何となくその姿は微笑ましいが、なんでそんなに動揺してるんだろ?
「あー、えっと、改めて言うけど、そんなに畏まらなくても良いからな? 遅れて悪かったけど、すぐ飯にするから」
とりあえずその原因を腹が減って苛々していたのだろうと当たりをつけて話をする。
二人の頭をわしわしと撫でる。
「はっ、はいぃ……お願いします……」
「それじゃ桜、ちゃちゃっと用意しちまおう、基本は鍋だけど他に何か必要かな?」
「うーん、そうですね……お野菜もきちんと鍋に入ってますから……」
「なんていうか、凄い、ね」
縁側で残された二人は、ぽつりと言葉を交わす。
「うん……あんなに、その、凄いこと、してたのに、今は普通だよね」
撫でられてから体が熱い。
撫でてくれた手で、さっきまで凄いことをしてたんだなあと考えると、こうして時間をおいても尚、体が熱くなってしまう。
「……私達も、大人になったら、ああいう風になれるのかな? ……なっちゃうのかな?」
「わ、わかんないよ……そう言う経験、無いもん……」
「そ、そうだよね、ははは……」
体の火照りは収まることなく、二人の心にモヤモヤした物を残した。
673 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/07/20(金) 04:49:46
居間のテレビは季節外れのホラー特集が写されている。
朝見た新聞のテレビ欄ではこの後に地上波初登場のホラー映画をやるらしい。
……その前振りで7時から2時間もホラーものの特集を組むあたり、どうやら番組の構成者はホラー映画を見せる気満々のようだ。
丁度CMになったし、聞いてみる事にしよう。
「ノイン、ホラーとか好きなのか?」
三枝さんはノインと一緒になって見ているが明らかに腰が引けているし、ホリィの方も三枝さんに抱きついて震えていたりする。
先生とジェネラルが将棋をやっていて、ライダー二人はそれを観戦しているから、実質見ているのはノインだけだ。
「んー、好きってわけじゃないんだけど、なんだか馴染み深く思えてねー」
そう言って笑うその顔はどこか寂しそうで、少しでも昔の手掛かりが欲しいのかもしれないと思うと、ちょっとだけ心が痛んだが、番
組内容には満足しているようで、声そのものは弾んでいる。
「そっか、それじゃ三枝さん、悪いけど最後まで付き合ってあげて……夕飯の後は俺も付き合うから」
「は、はいいぃー……」
あ、ちょっと涙目だ。
朝と言い今と言い、ごめんなさいとしか言えない。
ふと思った。
「そういえば、遠坂達が居なかったな……」
「あ、そうでしたね……部屋に戻ってる、とか? 先輩のこと心配してたんですけどねー」
「ん……そうなのか?」
心配してくれたのなら付き添うとかしてくれても良さそうな物だが……いや、今回の場合付き添われてたらそれはそれで困った事態に
なるんだけど。
実際、『アレ』を見られていたらと考えると恥ずかしすぎて身悶えしてしまいそうだ。
「あー……サラダとかはこの位で良いかな?」
「そうですね、この位で十分だと思います、柳洞先輩の持ってきてくれた鯛焼きの事もあるから多すぎるくらいかもしれませんよ?」
「そっか、それじゃ——」
最終更新:2007年11月24日 14:24