667 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA:2007/11/19(月) 12:16:26


第四章『もしも自分の人生にもう選択肢なんて存在しなかったら』

黒く塗られた壁、7つの扉、だがしかしこの部屋は他の部屋とは明らかに違った。
どの部屋にも備え付けられているモニター、これが6分割されており同時に多数の
部屋内を覗けるようになっている。そしてそのモニターの前では、髑髏の面を付けた
小太りの老人が椅子に座って様子を観察している。彼こそがこの奇想奇舘の創造者
ハサンその人である事をバゼットは部屋に入った瞬間に理解した。

「いらっしゃいませバゼットさん」

椅子から立ち上がり声を掛けてくる。反響効果の違いだろうか、その声は念話や
部屋全体から発した時の性別年齢不詳の声と違い年相応にしわがれた男の声だった。

「ここに来たのは偶然ですか?それとも―」
「マスターとして命令します。今すぐこの館を解除し自害しなさい」
「最初にも言いましたけどそれは出来ません。確かに勝手に皆さんを閉じ込めたのは
やりすぎだったかもしれませんが、現状では誰もがここから脱出しようと考えている
訳ではありませんよ。貴方が戦ったマスターがいい例です。彼は全員が閉じ込められた
という状況を利用し勝者になろうとした。つまり、このゲームに乗ったのです。
今この奇想奇館を解除する事はマスターの意思に反するのですよ」

人と英霊の契約のルール上では確かにハサンの言っている事は間違ってはいない。
もっとも今回の多人数による一騎の召還は完全にルールの範疇外だが。

「なるほど、脱出したい人物とそうでないものが同時に命令権を持つ以上
貴方は現状を維持する事によって平等でなくてはならないと」
「ええ、こうしないと令呪の縛りで私に苦痛が与えられますからね。
しかしバゼットさん、貴方の命令に従えない理由はもう一つあります」
「現在私との繋がりが切れているからですか?」

そう言い、感覚の無い凍てついた左腕を肩の力を使い軽く揺らすバゼット。

「なんだ気付いていたのですか。つまらないですねー、ここぞという所でバラそうと
思っていたのに」
「確信が持てたのはこの部屋に入ってからですよ。貴方はさっきからずっと私の事を
マスターと呼んでいない」
「これはうかつでした。で、どうします?その左腕が治ったらどうなるのかは
分かりませんが、少なくとも現在は私達には何も繋がりは無い、そう他人だ。ゆえに
貴方を攻撃しても私には何のペナルティも生じない」
「望む所です。元々貴方に会ったらこうしようと思っていた」

右腕一本で構えを取るバゼット、対してハサンは――――――、

[選択肢]
イ.「では二人きりで楽しみましょうか」全ての扉に鍵が掛かる音がした。
もう逃げる事も他者がこの部屋に侵入する事もできない。
ロ.「ただし直接戦うのは私ではありません」バゼットが入って来た扉から一人の少年が飛び込んできた。

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最終更新:2008年01月17日 18:26