896 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA:2007/12/06(木) 09:15:02
「いい剣だな。ハサン」
「でしょ?それじゃあ私は応援に徹しますんでいっちゃってください♡」
「ああ、手っ取り早く終わらせてやるよ。イリヤにとって害にしかならないお前を倒してな!!」
ハサンにより正気を失ったかに見える士郎。
だが、彼が剣を振り下ろしたのはハサンに向けてだった。
予想だにせぬ展開に対しバゼットもそしてハサンも一歩も動けなかった。
「…グァッ!!」
激痛に言葉を漏らすハサン。士郎の振るった二撃はハサンの額と左胸の上に大きな傷を与えていた。
英霊にはたいした効果を与えられないとは言ったものの、それは普通の英霊を基準としての意味である。
英霊としての格が低いハサンの中でも弱い部類に入る彼にはこの剣で十分であった。
なおも切りかかり続ける士郎とそれに乗じて攻めかかるバゼット。二人を相手にしながらハサンは現状を整理する。
(確かに私はマスターに洗脳を掛けた。今もそれが効いているのは間違いない)
(あの顔、あれは洗脳に掛かっている人間のするものだ。生前何百人とこういった表情を見てきたから見間違いはありえない)
(しかし、マスターはせっかく与えた武器で私に襲い掛かってくる。一体どういうことだ!?)
答えはいたって簡単である。士郎はここに来るよりもずっと前からイリヤスフィールに
よって洗脳を掛けられていたのである。それ自体はハサンが掛けた洗脳よりもずっと弱く、
士郎本人にもある程度の理性が残されていた。そして、それゆえに決断できたのだ。
ハサンに剣を渡された時に流れ込んできた衝動が脳を満たすよりも速く、彼は自らの
意思で残されていた理性をかなぐり捨てイリヤを守る人形となった。
アインツベルンで士郎が見聞きした事、そして士郎の人生観を知らないハサンは
いくら考えても答えにはたどり着けない。自身の洗脳能力に絶対の自信を持っていたが
ゆえに、士郎の豹変は自らの洗脳によるものだという間違った前提からいつまでも抜け
出せないでいた。
そして、ハサンが答えを得るかどうかに関わらず、人間二人と英霊一騎の戦いは、
―――ハサンにとって圧倒的不利な展開となっていた。
令呪の縛りがあるため捨て身で向かってくる士郎には積極的に攻撃できない。
ならばと剣を奪い無力化しようとしたら、その隙をバゼットに突かれる形となる。
さらに、士郎に最初に斬りかかられた時のダメージ、加えてバゼットとのラインが
切れた事による魔力の減少。限界が確実に近づいていた。
ハサンにとっての限界、それはこの戦いにおいては自らの命の終わりではない。
奇想奇館の維持が出来なくなる時こそが彼の終わりの時である。
これ以上のダメージによって奇想奇館が解除されてしまったら彼は一巻の終わりだ。
建物が元の状態に戻り、全マスターが同じ場所に集まってきてしまう。
外界に対する隠蔽も破れ、この場所にマスターが集まっている事が伝わり審判役である
教会の人間も乗り込んでくるだろう。
(冗談じゃ、冗談じゃあありません。まだ誰も■んでないじゃないですか。せっかく
これから面白くなってきそうだったのに。今私が魔力切れで奇想奇館を解除して
しまったらきっとあの人もあの娘も私を倒す側に回ってしまう。ここは勝たなければ、
どんな手を使ってでも―!)
[選択肢]
イ.令呪によるペナルティ覚悟で士郎を無力化する。
ロ.あえてバゼットの腕を治療する。
ハ.士郎と何かつながりがあると思われるイリヤを人質にとる。
二.何も思いつかない。現実は非常である。
ホ.あの人とあの娘、そしてモニターを利用する。
最終更新:2008年01月17日 18:31