401 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/09/21(金) 04:17:21


『足止めをお願いします、中枢は私が』
バイクを加速させ、距離を詰めて行く。
その手には鎖剣が握られていた。
耳元のインカムからの言葉に了解を告げ、片方の手にカスタムされたイングラムを握り、機体を加速させ距離を詰めていく。

振るわれた鎖剣の突きは安定せぬ足場であるとは言え、接近時の加速と彼女自身の腕力によって只の武装ならば諸共に破壊しうるだけの威力を有していた。
だが、その一撃はSPASのストック部に取り付けられた斧によって受け止められ、のみならず押し返された。
「これも敵の固有武装……」
英霊、サーヴァントの固有武装であるならばそれだけで神秘の付加がなされ、その英霊自身の意思ないし武装の神秘を上回る大神秘の一撃でなければ破壊は出来ない。
大して期待していなかったとはいえ、夜気の中僅かに浮かび上がる禍々しきバイクが彼の固有武装であれば残りはそうでない可能性があるという甘すぎるは武器同士の接触による火花によって否定される。
『ならば』
目敏く進路方向の街灯を見つけ、斧による反撃の一撃を横方向に距離を取って回避しつつ加速し、街灯に鎖剣の鎖を投げつけラインを張る。
これは大した意味があるわけではない、これによってバイクという機動性を奪えれば最上だがそこまでは期待しない。
ただ一瞬であれ動きを限定できれば良く、その隙に後方より迫るシャリフ<<仲間>>による一撃をサポートできれば十分である。
その一撃が直撃すれば勝負の天秤はこちらに大きく傾くだろう。

だがそうはならない。
後方からの射撃を見えているかのように回避し、体勢をまるで崩さず街灯と鎖によって張られたラインを粉砕する。
「なっ……」
流石にこれには驚愕する。
バイクのカウルに取り付けられた『牙』と称せざるを得ない極大の刃はそのような妨害を物ともせず、それどころか鎖に与えた衝撃で街灯を破砕し、ライダーの姿勢も崩しにかかる。
無論完全に崩れはしなかったが、それでも急激に加えられたベクトルはバイクの進行方向を90度ねじ曲げようとする。
この戦いは一瞬でも崩れればそれは大きな隙となる。
それを逃すことなく、SPASの残弾全てを発射する。
「くっ……!」
発砲される直前、そのままでは逃げ切れぬと判断し、体勢を崩したままバイクを加速させ、更に体勢を崩すと共に位置を急激に変え、ギリギリの地点で射線から逃れ、その姿勢のまま一回転して体勢を直せば、既に両者は数百メートルと離れている。
「予定通りと言えば予定通りですが……」
悔しさと怒りがこみ上げる。
この高架から飛び降りる予定地点に突入するまでには殆ど時間がない。
ここで追撃が一度もなければさすがに不審に思われるかもしれない。
ならばせめてあと一撃を加え、迎撃された後に突撃するべきか。
それならば確実に意表を突けるはずだ。

そこまで考えてグリップを握り、機体を加速させる。
加速する先に視線を移せば、高架の端と端に分かれて銃撃戦が展開されている。
手元を狙う三連射は全てを弾き飛ばされ、頭部を狙う一撃は回避している。
壁面や地面は穿たれた弾痕で一杯だ。
銃撃に詳しいわけではないが、少なくとも周辺に対して気を配る余裕はないように見える。

ならば――


力比べ:鎖を敵に巻き付け、力比べで体勢を崩す事を狙う
牽制:シャリフの逆側から接近し、敵の気を逸らす事を狙う

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最終更新:2008年01月17日 19:08