327 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/22(火) 22:58:27

二、セイバーのアホ毛が輝いている!

 懐から黄金の光が溢れている。セイバーのアホ毛。あのとき貰った大切な形見が、絶望の淵で助けてくれた! 身震いするほど膨大な魔力。その名に恥じない気高い光。使い方は直接頭の中に流れ込んで来て、己が出番を今や遅しと待ちわびている。

「―――装・着!」

 じゃっきーん、と頭に植え付けた。恥ずかしくない。恥ずかしくなんてないやい。ツインテールも共鳴し、たちまち本来の性能を取り戻す。これぞ究極飛行セット。その能力は最高級。鏡は絶対に見たくないっ! どっちか片方だけだったら、じゃなきゃドリルも一緒なら、とってもオシャレだったのに惜しかった。

 体の奥から、力が沸き上がってくるのを実感する。これが赤竜の力なのか。傷は一瞬で回復した。呼吸をすれば魔力が溢れ、体を動かせば筋力が鳴動している。背筋が震えて仕方がない。あまりの凄さが自分でも怖い。

「待ってろよ、ルヴィア―――!」

 信じられないスピードだった。天空を切り裂き余裕がある。確信した。今なら誰にも負けやしない。あっという間にあいつに追い付き、ルヴィアの体を取りかえした。後はお灸をすえるだけ。それも簡単。俺一人では絶対に無理だけど、最愛のセイバーと一緒なら、乗り越えられない困難なんてないんだからっ!

 それから先を、語る必要はないだろう。もちろん、誰もが思う通りだった。



「まっ、まいった! 俺の負けだ!」
「にゃにゃにゃにゃっ。弱いぞ少年よ。それじゃあ約束通りドレスと中身はもらっていくにゃー」
「まっ、待った! ドレスはやるからどうかルヴィアだけは返してくれっ!」



 太陽は水平線に向かって傾いていく。じゃりじゃりと踏む砂が面白い。深呼吸をして空気を味わい、波の音で耳を洗った。

 ああ……、ほっとした。やっと一段落付いたから。ネコはもうくる事はないって約束してくれたし、念のためキッチンの抜け穴も塞いでおいた。凄くドタバタした数日間だったけど、明日から本当のバカンスが始まると思えばそれでいい。なんだかんだで、結構楽しい思い出だったし。

 ふと、足音がして振り向いた。そこには愛しい誰かの顔。オレンジ色の夕暮れの中、彼女の頬が染まっていた。

一、遠坂だった。
二、桜だった。
三、イリヤだった。
四、ルヴィアだった。

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最終更新:2006年09月04日 17:24