826 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/11/29(木) 04:31:59


回避に重点を置き、下がりながら戦うべきだろう。
どちらにせよ速度の面で勝つ見込みはなく、だが引き替えに至近での小回りという点での優位を得たとも言える。
更には敵が遠距離武装を仕舞ったことからも、接近するのは愚策という見方も出来る。
なれば狙うのは敵の接近に合わせたカウンターの一撃が最善か。

そこまでを思考し、更に斜め後方に下がる為に地面を蹴る。
その蹴った力が身体を後方へ弾き飛ばす直前、男の笑みを見た。
『しまった……!』
元より策と呼べるほどの事ではなかったが、失策を理解するまでに要した時間は僅かだった。
即座に重力レベラーを用いて地面に足をつける。
だが即座に解除したとはいえ、己に掛かる重力を数倍に調整したが故に、僅かに直後の行動は鈍る。

距離を取ったと理解すると同時の反転、それが何を意味するかは言うまでもない。
むしろそこを失念していた己の迂闊さに歯噛みせざるを得ない。
急速に離れていく伊藤惣太を名乗る吸血鬼の背中を追うが、その結果など分かり切っている。
重力レベラーを用いての水平落下も試みるが、それとてレベラーの出力が足りず、やはり追いつけはしない。
背中がコーナーに消えていくのを見送りながら、僅かに舌打ちをする。
だがそれと同時、別のエキゾーストノートが耳に入ってくる。

そのエキゾーストが何による物かはすぐに理解できたし、その向かう先も大凡理解できた。
「逃がしはしないわ……」
インカムに声をかける必要すらない。
レベラーの出力を落とし、1Gを維持してビルの側面に着地する。
そのまま音の方へ走り出し、水平方向に跳躍する。


驚愕の視線を投げかけられるが、そのまま構わずバイクの上に着地する。
その存在に気付き、誰なのかを理解するまでの時間がもう少し長ければ恐らく攻撃していただろうが、幸いそのような事態にならずに済んだ。
「無事だったようね」
「ええ、特に問題はなく」
何をやってたのかという疑問が視線から感じ取れるが、それは無視することにした。
「中枢の破壊は?」
「一応それらしき人物を追い出しました、逃げられはしましたが通信機材らしいものは破壊しておきました」
それはどちらかと言えば失敗と言えるのではないか、という事もそうだが、気になったことは別にあった。
「不機嫌ね、何かあったのかしら?」
「……話したくもありません、それよりも、どうする気です?」
突入の際に見てしまった光景は、正直凄すぎて思い出したくはないというのはライダーの正直なところだ。

気を取り直し、互いの情報を簡単に交換する。
その間にエキゾーストノートと銃撃音が聞こえてくる程に、戦場に近付いているのが分かった。
「なるほど……ではどうします? その惣太という吸血鬼を追うのは確実としても、私もそう時間を取るわけにもいかないようですし」
ライダーは、得られた情報から己の直感の正しさを理解した。
「そうね、ならば――」


星と光:「それぞれの目標を果たすことにしましょう」それだけを言って飛び降りた
砕く者:「一度近くを通過して、直接仕掛けるわ」短機関銃を手に取った
螺旋迷宮:「ビルの近くを通過してくれれば、あとは自分でやるわ」

interlude――
聖者と魔女:その光景を見据える二つの影があった
神と暴君:その光景を見据える二つの影があった

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最終更新:2008年01月17日 19:33