43 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/12/12(水) 04:20:28


二本の内一つを投げつけ両手で一つの刀を構えた。
投げつけられた剣など一顧だに値しない。

投擲された剣の軌道は僅かに下、初見では猛禽類の牙としか見えなかったチタン製の刃への直撃コースを取っている。
そしてその後の軌道は左に流れていく事が最初のモーションから分かっている。
故にそれは驚異たり得ず、その手に残る刃さえも、身体を切り裂くよりも早くデスモドゥスの『牙』によってその身を抉り取られる方が早かろう。

だがその考えは直後に修正される。
その程度の事は分かっているはずだ、ならば突撃した意味は、投擲した刃の意味は何か。
答えが出るよりも早く、刃が牙に接触し弾かれる。
だがその直後、刃が押し戻され牙の上を滑った。
牙の上を滑る刃を足場に、肉体を抉る牙の上に立ったのだ。
余りにも馬鹿げた、だがデスモドゥスの真正面に立つ数少ない手段。
一瞬の自失、だがその隙は、シャリフの次の行動に移るだけの時間を与えた。

『聖者の絶叫』が一閃されるより早く、右手首へと踵での蹴りを叩き込まれ、その衝撃で聖者の絶叫が吹き飛ばされた。
だがそれとほぼ同時、蹴りを知覚すると同時に左手には『サド公爵の愉悦』が握られ、衝撃を受けると同時に一閃される。
それは膝蹴りの衝撃を加えた回転による一閃であり、続けて繰り出されようとしていた刃の一撃の軌道を完全に阻み、そして未だ刃の上で不安定な体勢のままのシャリフを弾き飛ばそうとしてさえいた。
それを阻まれた段階で察知したシャリフは、その衝撃が完全に伝わるよりも早く刃を手放し、更に足場の刃から跳び上がり『サド公爵の愉悦』による一閃を紙一重で回避する。
跳び上がって一体何をと思う時間すらなく、デスモドゥスの上でその身を伏せ、鎧すらも貫く回し蹴りを回避したのだ。


それは短いが円熟した演武のようであった。
だがそれは演武ではなく、その全てが必殺の意思の込められた攻撃である。
それを嫌と言うほど理解している両者だったが、それでも尚口元を歪めることを止めることは出来ずにいた。
本質的に戦いを好むことのない者同士であったが、そうであっても、戦いへの高揚感は確実に存在していた。
そしてその戦いは、時間にすれば僅か数秒で終結した。


その両者を顧みることなく、メドゥーサはY2Kを駆り、その場を走り抜ける。
そこに躊躇はない、戦友への信頼と己の直感を信じて。


プルキシ:ルヴィアは一つの影が弾き飛ばされるのを見た
ディース:ジェネラルはビルの一室に一つの影を見た
オンコット:その場の全員がその『異常』に気付いた

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最終更新:2008年01月17日 19:35