737 :ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM:2007/11/22(木) 22:34:22


――Interlude side Saver in earth


「…………でね、もう一度あの交差点を調べてみたんだけど、やっぱりどこにも魔力の残り香はなかった。とりあえず魔術師が関与している可能性は低いわね」
「はあ」
「でもこれっておかしいと思わない? 人間の仕業じゃないのなら何故2人は消えなければいけなかったの? 衛宮君とカレンを包んだ光。魔術じゃないとしたら現代に甦った神秘としか考えられないわ。だから過去の英雄であるアナタに聞いているんだけど……」
「はあ」
「セイバー?」
「はあ」
「……ちょっと!」
「!?」

 いきなり呼びかけられた声に体は痙攣し、持っていた湯のみを畳の上に落としてしまう。当然中身である緑色の液体は一面に広がってしまい、荒い目の隙間に吸い込まれていった。

「あっ、わっ、リ、リン、雑巾を……」
「……もう! しっかりしてよ、セイバー! 衛宮君が行方不明になって早2ヶ月……。アナタいつまでそんな調子でいるのよ!?」
「…………」

 結局自分で取りに行った雑巾で、床にこぼれたお茶を拭き取る。まがりなりにも王を経験した自分が雑巾拭きだなんて何というかちょっと惨めになってくる。
 もうシロウが居なくなってから2ヶ月が過ぎようというのか……。無事でいるのだろうか? 元気にやっているのだろうか?
 積もりに積もった不安。長らく胸に空いたままの空虚な穴……。
 せめて令呪の繋がりが健在だったのならばここまでの醜態を晒すことなどなかったものの、しかしあれからシロウと繋がっていた契約は消え失せ、彼の思念を感じ取ることはなくなった。リンが言うには完全に断たれた訳ではないとのことだが、それでも我が主を感じ取れぬ今、その言葉には何の説得力もなかった。

「まったく。桜は桜で表面だけ大丈夫そうに振舞ってさ……。それにカレンがいなくなったお陰で教会の連中は管理者である私を一斉にバッシングするし……。泣きたいのはこっちの方よ……」

 そう言い残し、リンは衛宮邸を後にする。
 また調査だろうか? 彼女の努力には脱帽せざるを得ない。
 だが私とて決して今まで何もしてこなかった訳ではない。キャスターに調査を依頼し、趣味の悪い服に着替えさせられたこともあったし、間桐宅に聞き込みに行って服の隙間に虫が入り込んだ時もあった。自身でも例の交差点を中心に徹底して辺りを調べたものの、それでも全く欠片も手がかりは得られなかった。
 最後の手段として英雄王に相談したこともあったのだが、「我に知らぬことなどある筈がなかろう!」と逆ギレされて暴れられる始末。リンも泣きたいだろうが、私も同様に泣きたかった。
 その後リンが帰ってからは特にすることもないのでぼーっとしていたのだが、ふいに廊下から聞き慣れた足音が響き渡る。直後こちらへ続く障子が開けられた。

「セイバーちゃん、いるー?」
「あ、タイガ」
「悪いんだけどおつかい頼まれてくれない? 突然でごめんねー、ちょっと今学校に行かなくちゃならなくなって。余ったお金で好きな物買っていいから」
「はあ、それは構いませんが」

 お金とメモを渡し、よろしくと言った後、タイガは忙しく廊下を駆けて行った。続けて外からスクーターのエンジン音。どう見ても相当慌てた様子だ。何かあったのだろうか?

「……私の与り知ることではありませんが」

とにかくやることがない以上、目的を与えられたのは喜ばしい。早速身支度を整え――――といっても私は化粧などしないので到って簡素ではあるが――――商店街へ向かうことにした。



Ⅰ:屋台で今川焼きが売られている
Ⅱ:何となく公園をブラブラしたい
Ⅲ:件の交差点をもう一度調べてみる
Ⅳ:学校へ行く

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最終更新:2008年01月17日 19:47