583 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2007/12/28(金) 21:35:31


「……シェロゥ、なにしてるのー?」

「いっ!?」

 振り返ると、そこには雛苺が立っていた。
 土蔵の入り口からこちらの様子を見て、首をかしげている。
 ……まあ、事情を知らない他人から見たら、首をかしげるのもわからないでもないけど。
 土蔵の中で人形の両頬を引っ張って遊んでいる男の姿。
 事情を知っていたとしても、呆れられそうな光景だった。

「いや、これは……その」

「?」

 雛苺の純粋な瞳が痛い。
 別段、疚しい事はしていない……つもりなんだが、なんだろうこの後ろめたさは。
 俺は、視線に押し流されるように、水銀燈を引っ張っていた頬を手放し、ゆっくりと元通りに横たえた。
 そこで初めて、雛苺は寝かされているのが水銀燈だということに気がついたようだ。

「すい、ぎんとう……!?
 シェロゥ、水銀燈どうしちゃったの!?」

 驚きの声を上げる雛苺。
 ……意外と早くばれちゃったか。
 わざわざ不安にさせるのは避けたかったんだが。
 だがばれてしまったらしょうがない、ここは正直に事情を説明することにしよう。

「ごめん、雛苺。
 本当は、昨日、水銀燈は見つけられてたんだ。
 でも……」

 水銀燈の上半身を支えて、雛苺にも見えるように寝顔を向ける。

「見つけた時には、こんな姿だった。
 ずっと眠ったままで、目を覚まさないんだ。
 ……雛苺、さっき言ってたよな。
 眠ったままでいるのは、一人ぼっちとおんなじだって」

「あ……うん」

「だからさ、俺は決めたんだ。
 絶対に水銀燈を助けるって。
 体だけ取り戻したって、意味が無いんだ。
 このままじゃ水銀燈、一人ぼっちのままだからさ。
 だから……水銀燈が目を覚ますまでは、見つけたことにはならないだろう?」

 そう、そのためにはどんな事だってやる、俺はそう誓ったんだ。

「シェロゥ……」

 そんな俺を、雛苺は目を丸くして見つめていた。
 ……よく考えたら、相当恥ずかしいことを口にしていたような気がする。
 けどまあ気にしないでおこう。
 きっと寝てないからテンションがおかしいんだ、うん。

 さて、雛苺に見つかったとなると、取るべき手段は変わってくる。
 次にやるべきことは……。


α:雛苺に、目覚めさせるのを手伝ってもらう。
β:いや、さっきまでの俺の二の舞になりそうな気がする。

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最終更新:2008年01月17日 20:54