816 :エルメロイ物語 ◆M14FoGRRQI:2007/11/28(水) 16:28:24


「コルネリウス・アルバ・・・・」
「ほう、ヘタレくんは知っているのかね私のことを?」
「ひょっとして、時計塔の学生プロレスの!」
「ああ、そちらでも有名だな私は。そう、私こそがかつて時計塔プロレスで時の人と
なった事でも有名なコルネリウス・アルバだ!ヘタレくん、サインはどうかね?」
「あ、はい。もらえるのなら頂きます!!家宝にします!!」

おおげさな動きでマーカーを取り出し僕のまわりを踊るアルバさん。
二回ほどまわったところでさっきから開けっ放しのチャックの下から覗いていた
白ブリーフに彼の本名と現役時代のリングネームが記された。
やった、もうこのブリーフは絶対にこれ以上は汚さないぞ。

コルネリウス・アルバ、僕はその名は記録として、一人の卒業生としてしか知らない。
だが僕は彼のもう一つの名の方を記憶としてとても良く知っている。
そう、彼こそが時計塔学生プロレス団体『AAA』のリーダー、アル・フェニックス!!


『AAA』
1992~1993年の間時計塔学生プロレスを盛り上げていった最強の団体。
中心人物の三人、アル・フェニックスとアラ・ゼブラとアオ・ビッグボディの頭文字を
とって団体名とした。結成から数ヶ月で頭角を現し、当時最大派閥であった
『ちょっちゅね軍団』を倒し、以後引退までの間学生プロレスのメーンとなる。
その時行われたアル・フェニックスとちょっちゅねエダブエによる一時間五十四分に渡る
リーダー対決は関係者の間で伝説となっている。
(民明書房刊『言峰綺礼の聖杯戦争ガイドブック』ではなく、僕の去年の思い出より)


「ところでアルバさん、助けてもらったりサインもらったりした後ですが質問いい
ですか?」
「何かね?」
「えっと、どうしてトイレから出てきたのですか?ここに来たというのと何で便器から
という二重の意味でわけが分からないんですが」

僕が疑問を口にするとアルバさんはよくぞ聞いてくれたという感じに顔を輝かせ
アンサータイムに入る。いいなあ、この突き抜けた演技っぷり、あこがれるなあ。
基本的に名家の人間をらしき振る舞いをする魔術師に会ったらドロップキックが
僕の信条だが、(もちろん、ロード・エルメロイとのファーストコンタクトもドロップ
キックからである。あの頃から僕とエルメロイの仲は最悪だった)ここまで天然で
バカ貴族的な行動を取られるともうそこにしびれてあこがれるしかないというものだ。
というかこの人プロレスの時と普段の時のキャラが全く同じだ。

「では、凡人であるヘタレくんにもよく分かるように説明しよう。今日私は君と
同様イギリスに帰る為にこの空港に来ていた。そうしたらトイレに人払いの結界が
張られているじゃあないか。だからトイレから出てきてやったのさ」
「ちょ、ちょっとまってください」

今、論理の組み立てが一気に飛躍した。これでは僕にとっては何もわからないのと同じだ。

「どうしたのかな?私としてはちゃんと説明したつもりなのだがね」
「あ、はい。心意気は伝わってきたのですがどうもちょっと―、すみませんがもう一回
お願いできますか?」
「そうか、ではもう一度」

両手をぶわっと広げ、再び朗々と語りだすアルバさん。

「私は結界に気付いた。ここまではオッケーかな?」
「はい」
「だからトイレから登場した」
「ストップ!」

さっきの繰り返しにならないようにすかさずストップをかける。

「ん?今の話に何かおかしい所があったかね?君だって結界を見かけたらとりあえず
侵入するだろう?」
「しません。僕には結界の突破なんてできません。それ以前に今回の様なレベルの
結界だと正直感知できるかも微妙です」
「そうか、ヘタレくんは随分と変わった感性とヘタレパワーを持っているんだね」
「いえ、変わっているのはこの場合あなたの方だと思うのですが」
「なにぃ!!」

僕のきわめて常識的な発言を聞きようやく自分の行動が変な事に気付いたアルバさん。
がっくりと肩を落とし体育座りの姿勢になる。

「フ、フフフ、そうか、私は常識外れか」

うわ、落ち込んでるよ。すぐに謝ったほうが良いかも、と僕は思った。
だがその考えは間違いだった。アルバさんは落ち込んでいたわけでもなんでもなく、
次のポーズのための前フリをしていただけだったのだ。

「そう、私は魔術師として見ても常人の外にある、故に私は天才!私は万才!3・・・
いや、私は20才!」

その言葉と同時に座った姿勢からジャンプし一瞬で立ち上がりポーズを取るアルバさん。
それと同時にアルバさんの背後で大爆発。トイレのドアは歪み小便器は割れスプリン
クラーの水は勢いを増し僕は驚いて小便を漏らす。そんな中アルバさんは爆風で舞い
上がったコートをなびかせながら高らかに演説を始めた。

(登場人物紹介3:ちょっちゅねエダブエ)
本名は枝笛将衛門(えだぶえ しょうえもん)。フィンランド生まれフィンランド育ちの
正真正銘のフィンランド人だが学生プロレスにおいて沖縄人キャラを演じているうちに
のめり込み、ついには日本に帰化して名前まで変えてしまった。アルバ達と同学年、
つまり(この作品の設定では)『僕』の一つ上。魔術師としての才能は無く、家を継げ
なかった為、現在は時計塔で警備の仕事に就いている。

【選ぶメロイ】
ハボリムと言えば指弾:僕はもう聞き惚れるしかなかった。
ハボリムと言えば邪眼無効:ふと冷静になった僕は飛行機の時間が迫っている事に
気付きその場を後にした。

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最終更新:2008年01月18日 01:04