135 :エルメロイ物語 ◆M14FoGRRQI:2007/12/17(月) 11:38:03
二分後、僕はパンツも履き替えないままアルバさんの背に乗っていた。
その手にトイレの用具入れからパクッてきたキュッポン(僕はこれの正式名称を知らない)
を持って。
「飛ぶぞヘタレくん。今からあの飛行機に追いつく」
「はい!はりつくのは任せてください!!」
飛び立った飛行機に追いつこうとするなんて馬鹿な話だと誰もが思うだろう。
でもこの時の僕は命を救われた上にサインまでくれたアルバさんの提案を断る気なんて
なかった。何よりこの人のバカ貴族っぷりをもっとそばで見ていたかった。
空港の裏の山道にて一般人の目が届いていない事を確認してからアルバさんは詠唱と共に
走り出す。そして、
「お手軽コース、ただし魔術は尻からでる!」
僅か五秒ほどの詠唱で僕たちの背後に大爆発を発生させる。その反動で一気に飛び立つ。
帰国後に本で調べた事だが、旅客機は安全面の問題等で最短ルートを取ることが出来ず、
また、そのサイズが原因でハイスピードに達するには飛び立ってからもしばらくは
かかるのだとか。そんな理由もあったにせよ僕たちは飛行機の背後に少しずつ近づいていた。アルバさんすげえ!!
が、ここで問題発生。飛行機が少しずつスピードを上げ始めたのだ、対して爆発の反動
で飛び立った僕らはこれ以上のスピードの増加は期待できない。再び離れていく距離に
やっぱダメなのかと思ったのだが――、
「飛行機の奴め、まだこんな力を隠していたのか。なら私も本気を出さねばなるまい」
アルバさんはまだまだ追いつく気満々だった。
「ヘタレくんしっかり捕まっていたまえ。これからさっき使った魔術を再度行使して
追いつく」
「はい!」
五秒後にくる急加速に心を備える。
「Repite!」
ところがどっこい、魔術の発動は一瞬だった。規模からしてどう考えても長時間の詠唱が
必要なはずの魔術。五秒での発動さえトンデモなのである。それが一瞬でなんて――!!
僕たちは飛行機にたどり着く事に失敗し地上に向かって落ちていった。
アルバさんの二回目の大魔術は確かに最初と寸分違わぬ威力で発動した。僕の頭の上で。
結果爆発の衝撃は僕たちを下へと叩きつけることとなったのである。
「いやー、失敗失敗。ついスペルミスをしてしまった。未完成の新魔術にてカッコよく
決めようと思ったんだがダメだったか。あれ六回に五回はちゃんとした場所に
出ないんだよな」
「何考えてんだアンタはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」
現在超スピードにて降下中である。主にアルバさんへの評価が。それと物理的な面でも。
高い所へ飛ぶ→高い所から落ちる→死ぬ、これは当然の事である。
「助けてアルバさーん!」
今回の件はアルバさんのせいである。しかしそれでもアルバさんしか頼れるのがいない
のがこの空中なわけで。
「任せたまえー!」
ビッと親指を立てて男前に返事するアルバさん。でも地上までもう時間がない!
最終更新:2008年01月18日 01:08