389 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/01/05(土) 19:12:51
1.一月二十六日土曜日
その夢は悲しいのか、それとも嬉しいのか。桜には判断がつきかねていた。
確実なのは一つ。桜は今、過去を見つめているということである。
それは十年と少し前の別れの時。
桜の視界は涙で滲んでいる。きっと、悲しかったのだろう。
だが夢から覚めたくはなかった。きっと、この夢を見れて嬉しいのだろう。
ないまぜの胸中を抱え、桜は夢を見ていた。
別離はなかなか終わらなかった。桜が泣き続け、別れの言葉を口に出来なかったからだ。
泣き止まなかったのはわざとだ。
泣いていれば、別れを告げずに済む。さよならを言わなければ、彼女と少しでも長く一緒に居られる。だから泣き続けた。
不意に彼女が桜の手の中に無理矢理リボンを押し込んだ。
彼女は一つ二つと言葉を残し、去っていった。桜は何一つ返事をすることが出来なかった。
彼女の背が小さくなっていく中、桜は立ち尽くしていた。
桜は早く夢から覚めたいと願った。もう続きを見たいとは思わなかった。
確か居眠りをしている筈だった。誰かが起こしてくれないか。桜はそう期待した。
老:何かを弄るような音がした。
壮:脳味噌の軽そうな声がした。
中:聞きなれた同級生の声がした。
青:夢は続いた。
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最終更新:2008年01月27日 22:26