589 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/01/13(日) 17:21:15


 少し気になる後輩がいた。
 一成の下で必死に頑張る女の子。しっとりとして、柔らかそうな印象の子だった。
 何となく心配になって、実はちょっと憧れたりして、士郎の心に引っかかっていた。彼女に微笑みかけられると、心臓が跳ね上がった。
 ここまで言えばわかって貰えるだろう。――その子が自分の尻を舐めるように見ていたときの衝撃を。
 もはや衛宮士郎から青春の薫りは去った。今は理性で遠坂桜を追及するのみだ。
「何であんなことしてたんだ?」
 士郎の問いを桜は黙殺した。
 彼女は席に戻りお茶を湯のみに注いでいた。静寂の中、お茶のたてる音だけが響いている。
 士郎は困惑した。桜はあまりに超然としている。この状況で、何故なのか。
 惑う士郎をよそに、お茶を一口含んだ桜は湯のみを置いた。
「まず、不快な思いをさせたことを謝ります。ごめんなさい」
 桜は頭を下げた。唐突で慇懃な謝罪に士郎は鼻白んだ。
「事情をお話しますから、座ってもらえませんか?」
「あ、ああ」
 席に着いた士郎へお茶が出された。士郎は両手でそれを持ち、桜の様子を窺いつつ口をつけた。
「釈明する前に聞いて貰いたい話があります。よろしいですか?」
 士郎は頷いた。
「予算案を提出するために部活動と折り合いをつけたいんですけど、上手くいってないんです。
 会長は格差是正を主張しています。けど運動部の多くは会長に反対しています。
 今の予算は運動部優勢です。だから会長は運動部と衝突するしかありません。
 つまり対立は、会長を始めとする文化部と運動部の争いでもあるんです」
「その辺のことは知ってる。続けてくれ」
「はい。
 争いは既に予算よりも感情の対立による部分が大きくなってます。
 でも裏を返せば、敵対感情さえ緩和すれば歩み寄れるかもしれません。
 運動部で予算上位の弓道部、文化部で大所帯の美術部。この二つが交流する場を作れば、敵対ムードを打破できると思うんです」
「わかったけど、それがどう繋がるんだ?」
「衛宮先輩に美術部のモデルになって欲しいんです」
 士郎の顎がカクンと落ちた。
 寝耳に水どころの話ではない。寝言としか思えない。しかし桜の目は爛々と光っている。
「美術部には、あまりモデルになってくれる人がいないんです。
 そうすると人物は彫刻しか描けません。でも同じ彫刻を何度も描くと飽きてきちゃいますよね?
 そこで、モデルを探して連れて行けば美術部の人は喜ぶだろうって――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。それはいいけど何で俺なのさ?」
「美術部の人って美意識が強いんですよ。だからその、…だったり…すぎたりするとちょっと…。
 それで誰を推薦するか悩んでたんですけど、衛宮先輩は素晴らしいです。
 わたしも彫刻の真似事をしてたから判るんです。先輩の体は格好いいし、きっと美術部も喜びます」
「あー…格好いい?」
「はい。わたしが保証します」
「そうかな――って、そうじゃなくて。
 そのためにあんなにじろじろ見てたのか?」
「はい、勿論です」
 きっぱりと断言する桜。実に堂々としていて、嘘を言っているようには見えない。
「それは…まだ決まった話じゃないんだよな?」
「わたしが考えてるだけです。でも先輩の了解をいただければ、話を進めようと思ってます」
 士郎はこめかみに手をやった。
 一成を見ていても美綴を見ていても、感情面の対立が浅くないのは見て取れる。
 それが少しでも和らぐなら、弓道部にとっても生徒会にとってもプラスだろう。
 士郎は唸った。


策:ヌード以外はOKする。
略:考えさせてもらう。【視点変更:遠坂桜】
家:拒否する。【視点変更:遠坂桜】


投票結果


策:1
略:7(over kill)
家:0

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最終更新:2008年01月27日 22:35