291 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/02/10(日) 15:17:49


 気がついたら、昼飯が終わっていた。
 ハンバーグを作り終わった辺りから今までの記憶がすっぽりと抜け落ちている。
 新手のスタンド使いかなにかの仕業か。

「私の鞘はこんなことのためにあるわけでは……」

 あと、セイバーがなんかぶつぶつ言っているのがすげえ気になる。
 遠坂と桜が不自然なまでににこやかなのも。
 でも思い出さないのが身のためだ、と俺の身体が警告しているので、追及はやめておこう。

「ご馳走様。
 それじゃ、私はこれで失礼するのだわ」

 昼飯を終えた後、真紅は優雅に席を立った。
 用事は済んだのだから、居残る理由はない、ってことらしい。
 ちなみにライダーはあからさまにほっとした表情をしていた。

「真紅、帰りも土蔵の鏡から行くのか?」

「ええ。
 私たちにとっては、nのフィールドを使うほうが楽だもの」

 確かに、普通の道路を使うと、目立つし、時間もかかる。
 nのフィールドって思ったよりも便利なのかもしれないな。

「それじゃ、真紅。
 今日はどうもありがとう、助かった」

 真紅がいてくれたおかげで、水銀燈の目を覚まさせることが出来た。
 ……まあ、やってきてから活躍してもらうまでの過程で色々あったけど、それだけは確かなことだ。

「感謝するのはまだ早いわよ、士郎。
 大変なのはこれから……貴方もそれはわかっているでしょう?」

「ああ、そうだな……」

 そう、これからだ。
 俺はこれから、失われた水銀燈の身体を元通りに治す方法を模索しなければならない。
 一度、腕と翼を奪った犯人を捜そうか、とも考えたことがあるが……取り返したところで意味はないだろうと思い直し、諦めた。
 どちらにしろ、水銀燈を治すためには一流の職人《マエストロ》の力が必要だ……それこそ、ローゼンのような。
 果たしてそんな人間が、この時代で見つかるかどうか。
 わからないけど、でも。

「でも、やらなきゃならないんだ。
 俺は、水銀燈のミーディアムなんだから」

 それが、俺と水銀燈との契約。
 もう二度と違えることはしないと誓ったこと。

「そう……気をつけなさい士郎。
 アリスゲームはまだ終わっていない。
 次に戦うのは、ひょっとしたら私と貴方かもしれないのだから」

「……その時は全力で、だな。
 悪いが、そっちのミーディアムには個人的に色々あるんだ」

 本当に、全く言葉どおりに個人的なことなんだが。

「そちらも訳ありみたいね。
 貴方とアーチャーの間に、一体なにがあったのかしら」

「悪いが、それはアーチャーに訊いてくれ。
 きっと珍しい顔を見られると思うけど」

「なるほど、面白そうね」

 それじゃ、と軽い言葉を残して。
 真紅は、姿見の中へと消えて行った。

「行ったか……」

 真紅の言葉は、嘘じゃない。
 アリスゲームはまだ続いているし、俺たちはまだ脱落していない。
 正直、ドールたちが殺し合うなんて、どうかしてると思うけど。
 向こうに戦意があって、避けられない戦いならば、躊躇ってはいられないだろう。
 例え、それが真紅たちであったとしても。
 例え、それが水銀燈を傷つけた相手だったとしても。

「……よしっ」

 両頬をぱしん、と叩いて気合を入れる。
 まずは予定通り、水銀燈を服を調達しよう。
 当てに出来そうな人物は既に思いついている。

「そう、蒔寺――って、本気か俺!?」

 自分で言ってて自分でビックリだった。
 まさか俺の人生において、蒔寺を頼りにするような局面がやってくるとは。
 しかし、なんだかこの人選が一番いいような気がしてならない。
 おっかしいなー、絶対有り得ないんだけどなー。
 ひたすら首をひねりながら、俺は出かける準備を始めたのだった。


α:他人に見られたら拙い、学園には一人で行く。
β:寸法を測るかもしれないし、水銀燈を連れて行く。
γ:氷室も居るだろうから、雛苺を連れて行く。


投票結果


α:1
β:2
γ:5

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最終更新:2008年03月06日 22:19