49 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA:2008/01/29(火) 16:14:12


最終章『もしも』

朝日。
いつもと変わらぬはずの7人を照らす日光、だが、今日に限っては生みたて卵の黄身のごとき黄金の輝きに感じられた。
この光こそ彼らが生還し、聖杯戦争が終わったことの何よりの証拠なのだから。


「やったぞ、僕達は生きて帰れたんだ!やったんだよ、遠坂!桜!衛宮!」

パーカーの少年間桐慎二が皆を代表するかのように歓喜の声を上げ、今までの歩きつかれた疲労もどこへやらと
いった感じに飛び上り走り回る。
そして、その様子をあきれた顔で見ている彼のパートナーとかなりおびえた表情で見ている妹。


「間桐君、脱出にほとんど貢献していないくせに完全に主役気分ね」
「あ、あのー姉さん」
「何よ桜」
「あのパーカーの人ってうちの兄さんですよね?」
「ううん、あれは『妖怪・慎二の叔父さん』よ」
「はうっっっ!!!」
「―っていうのは冗談。姿はだいぶ変わっているけどあれはあなたの兄の間桐慎二だってば。
ちょ、ちょっとどうしたのよ桜!いきなり尻持ち付いたりして!!」

凛は知らなかった。桜もまたあの外見にトラウマを持っていることを。


「これは、君が持っていてくれ」

そういい男はバゼットに己の武器を預けた。
バゼットは無言でそれを受け取った後、ベルトで彼の手首を拘束する。
優秀な魔術師である彼からしてみればこの程度の拘束は何の枷にもならないだろう。
だが、バゼットはもう彼が他人に牙を向ける可能性は低いだろうと感じていた。
手首を縛られた後、その場に座り込んだ彼の姿は館内で対峙したときの様な殺気が
まるで感じられない。まるで贖罪の時を待つ罪人の様に映った。

彼の変化の原因、すなわち彼は聖杯に何を願おうとしていたのか。まだ彼の過去を知らされていないバゼットには
いまは分からないし、本人に聞こうとも思わない。彼女の仕事は彼が再び心変わりしない様に見張り続け言峰に引き渡す事、
今はそれに集中するほかない。


聖杯戦争という儀式が終わり魔術師たちも人としての生活が、退屈かもしれないが何物にも変えがたい平和な時間が戻ってきた。
これから、ここにいる者たちはその平和に中に幸福を見出し、あるいは本業へと戻り、あるいは次の聖杯戦争へと向けて
研究と鍛錬に時間を費やしていくのだろう。

だが、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、器である彼女にとってはこの儀式の終わりこそが人生の終焉。
自らの内に次々と入り込んでくるハサンの魂、それが確実に彼女の意識を奪っていく。

「イリヤ、どうした!?」

いち早く彼女の異変に気づいた士郎が駆け寄ってくる。
彼に伝えなければ、まだ言葉を発する事ができるうちに。

[選択肢]
イ.「シロウ、今までありがとう。ごめんね」
ロ.「シロウ、私をアインツベルンの皆の所へ―」
ハ.「数が足りない。アサシンはまだ、生きて」


投票結果


イ:0
ロ:0
ハ:5


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最終更新:2008年10月25日 16:16