492 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/02/21(木) 21:07:46
士郎は坂の下、コンビニへと向かった。
三時のおやつを買いに行くのだ。
食は身体を成す基本である。栄養摂取は集中力の維持にも必要だ。
空腹だとネガティブになりやすいという心理的な側面もある。
特に、冬は体が冷えやすい。定期的なカロリー摂取は重要だ。
コンビニには、士郎の他にも客が居た。
学園の生徒に加え、外国人の男もいる。
背が高いわりには細身で、サイズの合わない服を着ていた。借りた服かもしれない。
男は店員にあれこれと聞いている。どうも食材の鮮度に不満があるらしい。
山で採れるものとか、今の時期の魚だとか、聞く場所を間違えているとしか思えなかった。
果ては地形や街の歴史にまで話が飛んでいく。
店員は明らかに困惑していたが、男は陽気な笑顔で話を続けていた。
「やっぱ、一口で食べれるのがいいよな…」
菓子類の棚に向き直って、士郎は考えた。
あくまで、おやつである。
短い休憩時間の間に食べるのだから、手を汚さず、口に放り込めるものが理想だ。
カロリーがあって、吸収しやすいもの。アーモンドチョコあたりが妥当か。
二箱あれば、部員にも行き渡るだろう。
「あ、衛宮くん」
横から声がかかった。三枝由紀香だった。
陸上部の買出しか。カゴには所狭しとスポーツ飲料が詰まっている。
いかにも小動物然した由紀香には、少し荷が勝ちすぎているように見えた。
「大変そうだな。手伝うか?」
「ううん、だいじょうぶ。ありがとう、衛宮くん」
小柄な由紀香が両手でカゴを運んでいる姿は痛々しい。
だがよく観察してみると、由紀香なりに上手くバランスを取っているようだった。
伊達にマネージャーをやっていない。重い荷物の運び方ぐらいは心得ているのだろう。
とはいえ、レジの台に上げるのには単純に膂力が必要とされる。
そこだけには助け舟を出した。
「うわあ。衛宮くん、力持ちなんだね」
由紀香が純粋に尊敬の眼差しを向けてくれるのが、士郎にはくすぐったかった。
レジ打ちが由紀香にはちきれんばかりの袋を手渡した。
重いものを下ろすのは、実は持ち上げるよりも危険が大きい。
うっかりバランスを崩したのか、由紀香がよろめいた。
由紀香がたたらを踏む。多量の重荷に、由紀香が振り回される形になっていた。
士郎は慌てて、由紀香を庇いに入った。
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最終更新:2008年04月05日 17:38