617 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/02/27(水) 18:45:29
「そういえば、氷室は……?」
蒔寺のインパクトが強かったせいで忘れていたけど、氷室も練習に参加しているはずだ。
改めてグラウンドを見回してみる、すると……。
「あ、居た」
「鐘だ!」
黒豹に追い立てられる陸上部員たちとは反対方向に、氷室の姿を確認した。
雛苺の声が届いたのか、向こうもこちらを振り向いている。
「衛宮? それに……雛苺も」
氷室は、珍しく慌てた様子で、小走りに駆け寄ってくる。
そんな彼女に、片手を上げて挨拶をする。
ちなみにもう片方の腕は雛苺を抱いてるので動かせない。
「よ、氷室、お疲れ様。
ちょっと話がしたいんだが、まだ練習中だろうし、後にしようか?」
「うん、ごきげんよう衛宮。
別に今なら構わないが……しかし一体何用でここに来た?
衛宮一人ならまだしも、雛苺も連れてくるなんて」
「いや、一緒に行くって言うから連れてきたんだけど」
「軽率ではないか?
他の人間に見られたら大事になりかねんだろう。
それに……」
氷室はそこで言葉を切ると、少し含みを持たせた笑みを浮かべた。
あ、この顔は知っている。
遠坂があかいあくまになったときの顔だ。
「私に会いにきてくれるなら、衛宮だけで来て欲しかったのだが?」
「いっ……!?」
いや、なんか言われるんだろうなーとは予想していたけど。
氷室さんの言葉は想像以上に刺激的で、僕の頭を粉砕していきました。
「え、あ、ああいや、実は、今日は蒔寺のほうに用事があってな」
「蒔の字に?
なんだ、私に会いに来てくれたのではなかったのか」
「~~~っ……!?」
それは違うぞ氷室確かに蒔寺に会いに来たのは確かだけどそれと同時に氷室に会えるだろうと思っていたのもまた事実だしだからこそ雛苺を連れてきたわけでああでもそうすると二人きりにはなれないってだから違うぞ別に二人きりになってどうこうしたいとか考えてないぞそりゃあ氷室と二人きりになれたら嬉しいさまるで恋人同士みたいでいやいやいやいや待て待て待て待て衛宮士郎一体なにを考えているんだお前は昨日氷室を見送ったときのことを忘れたのかあのときは返事ができなかったのに今はそんなことを期待しているのか恥を知れ……でも氷室のほうもそれを期待していたのかなってだーかーらー!!
「いや、半分冗談だがな」
大絶賛絶句中の俺を見て、ニヤニヤ笑う氷室。
頭の中で物凄い思考の奔流に巻き込まれていた俺は、おかげで現実に復帰することが出来た。
でも残り半分は冗談以外のなんだったんでしょうか、とは聞けないチキンな俺。
うるさい、理由は察しろ。
「しかし珍しいこともあるな、衛宮が蒔の字に用事とは」
「あ、ああ……今までは、俺が蒔寺に頼みごとされる立場だったからな」
「一体何の用事だ?
話次第では、私が仲介してやってもいいが」
そうだな……。
さっき氷室がちらっと言っていた通り、薔薇乙女《ローゼンメイデン》のことをむやみに他人に広めるのは危険かもしれない。
氷室に協力してもらえば、上手く口裏を合わせて話を進めてくれるだろう。
いっそのこと、蒔寺に全て打ち明けて協力してもらうのも一つの手ではあるんだが……。
さて、どうしよう?
α:氷室に雛苺を預かってもらい、俺一人だけで蒔寺と話をする。
β:雛苺には一人で待っていてもらい、俺と氷室の二人で蒔寺と話をする。
γ:全てを打ち明ける覚悟で、雛苺もつれて三人で蒔寺と話をする。
δ:氷室の話術を信頼して、氷室一人で蒔寺と話をしてもらう。
ε:こうなったら、その辺を通りかかった三枝さんにも協力してもらう。
ζ:やっぱり蒔寺に頼むのはやめよう。
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最終更新:2008年04月05日 18:18