968 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/03/11(火) 00:44:26


 甘かった。
 全くもって俺という人間は、蒔寺楓を甘く見ていたと言わざるを得ない。
 蒔寺楓は俺が思っていた以上に、もっと……こう……黒豹だった。
 だが今は違う、もう認識を改めた。
 え、どういう風に改めたかって?
 そうだな、今の率直な感想を述べるとしたら……。

「衛宮テメェ! 一体どんな卑劣な手段で氷室をたらしこみやがった!?」

 とりあえず、その場ジャンプから怪鳥蹴りが放てる女学生って、そうそういないと思う。
 そして、人体急所である鳩尾にその蹴りを喰らうまで、認識を改められなかった俺にも乾杯。

「ぐふぅっ……!?」

 さて。
 以上が蒔寺マッハキック喰らってから地に倒れふすまでの、俺の思考の流れだったわけだが。
 実際には一瞬だったはずなのだが、痛みで鋭敏になった意識が時間を引き延ばしていたんだろうか。
 崩れ落ちると吹き飛ぶを足して2で割ったような倒れ方をした俺を見てから、氷室が口を開いた。

「……蒔の字、出会い頭に他人に奇襲をかける癖は直したほうがいいと思うが」

「癖じゃねー!
 これはれっきとした正当防衛!
 言うなれば氷室を守るための積極的自衛権の行使だね!」

 なにその拡大解釈し放題な自衛権。
 憲法第九条を木っ端微塵にしかねない発言をする蒔寺に、氷室が冷静に水を刺す。

「守るためと言われてもな。
 衛宮に襲われていたわけでもないのだが」

「襲われてからじゃ遅いっての!
 犯罪は未然に防ぐのが大事なの!
 なんつったっけ、東洋で言うところの未病?」

 それは病気になる前の状態のことだ。
 ひょっとして予防って言いたいんだろうか?

「……なんとも、激しい反応だな。
 いや、蒔の字の性根に古風なところがあることは知っていたが」

「なっ!?
 そんなわけあるかっつーの!
 アタシは男の後ろを三歩離れて付いて行くような女じゃないもんね!」

「そうだな、私が見るに、蒔の字は付いて行くよりは家で帰りを待つタイプだと思う」

「そんなのありえねー!!
 むしろ男のほうがアタシの後ろについてきやがれってんだ!!
 もたもたしてたら置いてくぜ!!」

 蒔寺、それ黒豹じゃなくって音速ハリネズミ。
 というか話が脱線してないか二人とも。

「そもそもさぁ、なんでアンタらそんなに仲がよさげなのさ?」

「ふむ。そう見えるか?」

「ああ見えるね。
 アタシが思わず蹴りを入れたくなるくらいには」

 お前は人の恋路を邪魔する側だろ、なのに蹴るのか。
 ……ちなみに、さっきから俺は突っ込みたくても腹が痛くてそれどころじゃありません。

「一体全体どうしたのさ?
 先週辺りから氷室が学校休んだり衛宮の様子がおかしかったりよー。
 …………まさかとは思うけどさ、もしかしてお前ら付き合ってるとか?」

 この歩く取り扱い注意は、いきなりなんてことを言いやがるのかっ。
 見れば、氷室のほうも何か言いたそうにしていた。
 俺と氷室、それぞれの返答は……。


第一群と第二群から一つずつ、ゆっくり選んでいってね!

第一群 俺は――
α:「いや、そんなんじゃないぞ」そう言って否定した。
β:「付き合ってる……ってわけじゃないんだけど」曖昧に答えるしかなかった。

第二群 氷室は――
γ:「いや……付き合っている、と公言するのは、その……語弊がある、な……」と、ごにょごにょ呟いた。
δ:「付き合ってなどいないさ。……今はな」含みのある笑みで答えた。


投票結果


α:5
β:1

γ:5
δ:2

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最終更新:2008年08月19日 03:45