701 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2006/08/29(火) 01:13:27
「弓塚、そのミルクティーうまいの?」
何か話題にでもなればと思って弓塚が飲んでいるペットボトルを指して言った。
「え? うん、美味しいよ、昼下がりの紅茶。遠野君飲んだことないの?」
「有間の家にいたときはそういうのを飲む方が多かったんだけど秋葉がそういうの嫌いでさ……」
といっても有間でもそういうのを飲むといった事なんてほとんどなかったけれど。何となく気後れして。
今もスポーツドリンクなんて飲んでるけど実はこういうのも数えるほどしか飲んでないんじゃないのかな……。
「弓塚は紅茶好きなの?」
「うん。昨日遠野君の家で飲んだ紅茶すごくおいしかったね」
そう言って嬉しそうに昨日の出来事を思い出す弓塚。そうはいってもやっぱり俺としては今の弓塚の持っている
チープな感じの紅茶も時折恋しくなってしまうわけで。
「あ…………遠野君も飲む?」
「え?」
俺の視線がずっと弓塚の手に注がれていたのに気づいてか弓塚がそんな事を訊いてきた。
「いいの?」
「うん。どうぞどうぞ」
「悪いな、なんかせがんじゃったみたいで」
嫌な顔一つせずに俺にそれを渡してくれる。俺は控えめにペットボトルを傾けて中の紅茶を口の中に運んだ。
「…………ん」
紅茶、というより牛乳の甘さが味覚を刺激する。続いてようやくやすっぽい紅茶の風味が甘味に負けながらも鼻へと抜けていく。
舌に残る甘ったるさがひどく懐かしかった。
「甘いな、けどそれがいいっていうの? そんな感じ」
「だよね。私もそれが好きで」
弓塚のすごく自然な笑顔を見て俺は幸せな気分になった。そういえばレンもケーキがだけどそういう所で気が合ったのかな?
「わざわざ悪いな、俺のも少しやるよ」
そう言って返すと同時に自分のペットボトルも押しつけるように渡してやった。
「え、そんないいよ。私が遠野君のために買ってきたんだし」
「でもくれた側がそっちのもの分けてもらったんだからこっちもお返しするのが礼儀でしょ? だから遠慮しないで」
「でも…………」
いくつか問答をした後、ついに弓塚は折れてくれて俺の好意を受けてくれた。
弓塚は俺が飲んだよりも更に少なくちび、と飲んでさっさと俺に返してくれた。別にそんな気にしなくていいのに。
「………………」
「………………」
そうして何となく話が途切れてしまって再び静けさが戻ってきた。
「………………」
「………………」
再び俺がどうしようかと心中頭を捻っていると、
「っ!!!!!!!!!!」
「ど、どうした弓塚!?」
いきなりゴホゴホとむせた弓塚は顔を真っ赤にしている。
「わ、わたhし……居間遠野君と、かん、官設kッス…………tっ!」
「頼むから落ち着いてくれ」
目を白黒する弓塚に対して冷静に突っ込む俺。何か文字化けやらタイプミスやらがたくさんだ解読する側も一苦労だ。結局俺には不可能だったが。
「………………ふぅ」
「落ち着いた?」
「う、うん…………。ごめんね、いきなり取り乱して」
「いや、何が起こったのか分からないけど弓塚には一大事な事があったんでしょ?」
そう聞くと弓塚はまた顔を紅潮させてうつむいてしまった。
「?」
そうして休憩もそこそこに稽古を再開するも、集中力のなくした弓塚を見ていて可愛そうになり今日の二人の稽古はお開きとなった。
702 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2006/08/29(火) 01:14:19
「なぁ弓塚、さっきのは何だったの? あれのせいで休憩終わってから変だったけど」
「……ごめんね」
「謝るんじゃなくてさ、理由を教えてよ」
どうしてもさっきの弓塚の動揺の原因が知りたくて教室に戻る中で何回目かの問答を繰り返していた。
「目の前であんなに取り乱されたら気になるってば」
「たいした事じゃないから気にしないで。…………本当は気にしてほしいけど気づいてくれてないみたいだし」
「? どういう事?」
練習中に何か俺がやらかしてたって事だろうか。それはそれで教えてほしいな。気づかないうちに恥ずかしい事してたらそれこそ恥ずかしい事この上ないし。
そんなこんなで他の皆が練習しているだろう教室に着いた。
「……………………遠野君の鈍感」
「何か言った?」
「…………………………別に」
ありゃ、珍しく弓塚がむくれてる。今のは本当に聞こえなかったのに。
背中の視線が痛いのを頑張って無視してガラ、とドアを開ける。
すると、そこでは……
紫.真剣に自分の役を全うしようと練習に励む皆の姿があった
陽.真剣にメガネをかけた絶倫朴念仁のどこがカッコイイのか議論している皆の姿があった
花.上記とは違う意味で真剣に殺し合っている三馬鹿トリオの姿があった
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最終更新:2006年09月05日 15:33