284 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/03/26(水) 19:19:26


「説明してやるから、とりあえず正座しろよ」
「おう、わかった」
 何の躊躇いもなく、士郎は正座した。
 さすがは士郎。余計なプライドのない好青年であった。
 一方、セイバーは慎二を睨みつけた。慎二への牽制であろう。
 慎二はそれが気に食わなかった。
 慎二たちが士郎とセイバーを助けたのである。
 なら、正座ぐらいがどうだというのか。
「なんか未だに僕のことを疑ってるみたいだけどさ。
 僕がコイツに危害を加えるつもりなら、助けたりするワケないじゃん。
 そのぐらいの頭も使えないの?」
 要らぬ一言にセイバーが色をなす。
 慎二はこれっぽっちも空気を読まずに続けた。
「大体さあ、おまえが呼び出される前から僕は助けに来てたんだぜ?
 このバカを救おうっていう純粋な善意でね。
 僕が居なけりゃ、おまえが来る前にコイツは死んでたよ」
 ふん、と鼻を鳴らして慎二はセイバーを見下した。
 セイバーの怒気が殺気へと変化していく。
 ライダーが片眉を跳ね上げた。
「悪いけど、慎二、ちょっと黙ってくれ」
 二人の衝突の前。険悪な空気を読み取った士郎が口を挟む。
 士郎は慎二との付き合いが長い。仲裁は手馴れたものである。
「セイバー、でいいんだよな?」
「はい」
 セイバーが士郎に顔を向けると、士郎はたじろいで頬を赤く染めた。
 セイバーは美しい少女だ。透き通った水の如き清らかな美貌である。
 正面から見据えられれば、胸が落ち着かないのも無理はない。
 しかし口ごもる醜態は、慎二にとっては気色が悪かった。
 雄ゴリラが内股で腰をナヨナヨ振っている姿に通ずるものがある。
 慎二に黙れと言っておいて、取るべき態度とは思えない。もっと毅然とすべきだ。
「あー、うん。えーと、だな。
 慎二の言ってることは本当で、俺たちへの害意はないと思うんだ」
「しかし彼は」
「慎二は口が悪いし、捻くれてるし、嘘もよく吐く。けど、正直なんだ。
 善人ぶってないから嘘は言ってないと思うし、助けに来てくれたのも本当だ。
 だから、俺は信じる。セイバーも信じて欲しい」
 セイバーが眉の根を寄せる。なんとも反応に困る発言だったからだろう。
 とりあえず、慎二は士郎に小石を投げつけた。発言の冒頭部分への抗議である。
 小石は士郎の服に当たった。士郎がそれを投げ返す。
 二度三度、その応酬は続いた。
「……わかりました。貴方たちの関係は呑み込めた。
 しかし不測の事態に備えるため、側には居させてもらいます」
 セイバーがため息をつく。その疲労感がどこから来たのか、聞くまでもない。
 悪戯を咎められた子供のように、士郎は投擲行為を中断した。
「ハッ、やっと判ったのかい?」
 慎二は厚顔にも言った。
 士郎と変わって、悪びれることも恥じ入ることもない。慎二は慎二なのである。
「じゃあ、本題だ。説明してやるから、よく聞けよ」
 慎二は、彼の知る大凡のことを説明した。
 聖杯戦争という儀式。聖杯の存在。選ばれる七人のマスターと呼ばれる魔術師。
 使役されるサーヴァント。英霊。七つのクラス。
 そして、互いに殺し合い、生き残った者が勝者となるルール。
 全てを聞き終えた士郎の顔は険しかった。
 予想出来たことである。士郎が魔術師の殺し合いに好感情を抱くわけがない。
 たとえ、衛宮士郎が魔術師だとしても。
 ――士郎が魔術師であるということ。それは慎二の胸を引き裂く現実だった。
 それに耐えられたのは、魔術師の士郎が慎二を頼りにしているから。
 その事実は慎二にとって大いなる救いだ。
 反論も無く慎二の言に従い、地に正座した姿も、誇大な自負を癒してくれる。
 だから、慎二はかろうじて冷静でいることが出来ていた。
「納得いかないみたいだね」
「…そうだな」
「悪いけど、僕は参加者の一人に過ぎない。これ以上のことは知らないんだ。
 まだ知りたいことがあるなら、教会に行ってもらうしかないね」
「教会?」
「ああ。あそこの神父が監督役を務めてるんだってさ」
 慎二は首を回した。士郎もその方向に目をやる。
 その先には暗い闇に覆われた街と、丘に浮かぶ神の庭があった。


大:教会に連れて行く。【視点変更:衛宮士郎】
中:一緒に教会に行く。
小:士郎たちを教会に行かせる。
無:士郎は慎二に問い掛けた。


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最終更新:2008年08月19日 02:48