342 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/03/29(土) 22:56:07
「慎二。もう一つ聞かせてくれ。
…もしかして、最近の事件は魔術師の仕業なのか?」
士郎の目に頑迷な光が灯っていた。
それを見て、慎二の中から浮ついた昂揚が消えていく。
今朝は日常と変わりなかった。夜には殺し合いに否応なく巻き込まれた。
それから未だ一時間も経たない。
なのに自身の安全よりも、何の関係もない人々に起きた災難に心が向く。
好悪はともかく、それが衛宮士郎で、それが士郎には大事なこと。
だから真実が士郎にとって望ましいものでなくとも、慎二は伝えるつもりだった。
「…悪いけど、断言出来る話じゃない。僕は一度も現場に居合わせてないからね」
「続けてくれ」
話が続くことを、士郎は解っていた。
慎二が士郎のことを解るように、士郎も慎二のことが解るのだろう。
少し気に食わないが、そういう関係だということだ。
「OK。じゃあ、その上で僕の考えを話そう。
最近の冬木で起きてる妙な事件は三つ。連続昏倒、連続窃盗、連続通り魔殺人。
一つ目は飛ばす。今は収まってるし。
で、二つ目。これは外部の魔術師の仕業だと思ってる」
「外部?」
「無関係って意味じゃない。
よく考えろよ。儀式には七人必要だ。
冬木に魔道の家は二つだけなんだから、余所の魔術師が入らない訳ないだろ?
…まあ、衛宮みたいに隠れて住んでるヤツはまだ居るかもしれないけど」
カメレオンの如き無表情さで、慎二は士郎を見やった。
しかし、カメレオンはお互い様なのだろう。
魔術師ではないのに、偽りのマスターとなった慎二。
四年間も仮面の下を覗かせなかった、魔術師たる士郎。
親友だと思い、互いのことをよく解っている。それは今も変わっていない。
だが二人とも、擬態のない本当の姿を知らない。
「話を戻そう。盗みは聖杯戦争に合わせるように始まってる。
冬木に住んでた魔術師が今さら盗むなんて変だ。
魔術師がやってるとすれば、外の魔術師って考える方が自然だよ」
「よくわかる。それで、三つ目の事件はどうなんだ」
士郎の顔に切迫した色が加わる。
やはり一番知りたいのは、この事件についてだったのだ。
慎二は一つ息を吐いて、口を開いた。
「アレはほぼ確実に魔術師、それも聖杯戦争に参加してるヤツだろうね」
ゆっくりと士郎の表情が変わっていく。
その形相を、どう言い表せばいいのか。
「根拠は、何なんだ?」
「ライダーが一度、警察より早く現場を見つけた。
死体には、もう中身がなかったらしい。内臓とかそんな話じゃなくてさ。
肉体的には蘇生可能な段階なのに、魂がすっかり消えてたんだ」
士郎は怪訝そうに首を傾げた。
妙な反応だ。魔道書を読んだだけの慎二でも解るのに、何故解らないのか。
「いや、だからさ。確かに魂は扱いが難しいし、普通の魔術師には使い道がない。
でも昔から人外との取引には魂って相場が決まってるじゃんか」
「つまり何かの召喚に使うってことか」
「サーヴァントの召喚は特殊だから、役に立つかは知らない。
でも、あって困るもんじゃない。サーヴァントに食わせりゃいいんだし」
「…食わせる?」
「サーヴァントは英霊だって言っただろーが。
自然霊は自然から、人間霊である英霊は人間から力を汲み取るってコトだよ」
「――わかった。ありがとう、慎二。
確かに、魔術師が普通の人たちを殺してるってことか」
士郎が言った。
頑迷な瞳の輝きは、より強くなっている。
戦うつもりか否か。士郎に訊ねる必要はなさそうだった。
暫:士郎と組む。
定:停戦協定を結ぶ。
税:一応は教会に行くよう勧める。
率:士郎の好きにさせる。
投票結果
最終更新:2008年08月19日 02:48