535 :エルメロイ物語 ◆M14FoGRRQI:2008/04/16(水) 04:11:27
【人物紹介13 ウィリアム・アーチボルト】
ケーン・アーチボルトの弟であり、現在生存しているアーチボルト姓の男性の中では
一番若い人物。28歳 A型、好きな食べ物は焼き餃子。離婚暦あり。家族は父・母・
兄・娘の四人。愛称はウィー。
名門に生まれながらも兄や従兄弟とは違い魔術師としての才能は凡人クラス、それゆえに
家族だけではなくエルメロイ派全体からも存在を軽視されており、ケイネスの代役
の候補としても一回も会議で名前が挙がらなかったほどである。
本人もその事を自覚しており、魔術師として大成する事は少年時代から既にあきらめて
いた。
基本的にのほほんとした気弱な人物であり、成人後なんとなしに魔術用品の管理や
論文の添削といった雑用で食いつなぐ日々を送っている。
しかし、彼にも一応はエルメロイ派の危機について思う所があり、育ててくれた両親を
助けたいと思っていたり兄を一回でいいから見返してやりたいと思っていたり娘にたま
にはかっこいい所を見せたいと思ってたりするわけである。
自分が悪であるという自覚がないまま全てを滅ぼす真の邪悪。
彼の自分勝手な思い込みと行動によってエルメロイ派は完全に崩壊し、ウェイバーは
凡人魔術師のまま時計塔を去る。そして、この事が間接的に二十年後聖杯からこの世の
全ての悪が這い出てくる原因となる。
これを打ち倒すのがいつものエミヤの仕事なのだが、『磨耗したくねーよ病』が発病した
彼は未来ではなくこの時代において原因を取り除く為に動き出したのである。
この事がバゼットを始めとする多くの人物の運命を捻じ曲げ、そしてウィリアムの
運命をも変えようとしていた。
「えーとっと、ウェイバー君の部屋は四階の一番奥だったかな」
今エルメロイ派の中で一番働いているのは誰かと時計塔の学生新聞部に聞いたならば
間違いなくこう答えるだろう。
「それは、ウィリアム・アーチボルト氏です。何故なら彼には取るべき責任がない、
それゆえに責任を取りたくなくて何の仕事もしていない人達の分まで働いている」
父母はエルメロイ派重鎮、叔父は現在の代表、兄は今やケイネスに代わる継承者候補、
にも関わらず、ウィリアムの役職は18歳で会議デビューした時からずーっと「進行係補助」。
今日も今日とてホワイトボードの字を消し、食堂で人数分パスタを注文し、会議終了後
は食器を食堂に返しにいき、その帰りに責任逃れの為に痴呆老人の演技をし廊下を
徘徊する両親を捕まえ彼らの教授室に押し込み、そして今、コルネリウス・アルバが
いるらしい男子寮に到着した所である。
「さあ、さっさとこの書類にサインしてもらって次の仕事に取り掛からないとな」
ウェイバーを助けるため会議室に乱入し、異議あり&待ったで逆転を勝ち取ったエミヤ、
しかし、彼はこの事によって大勢の前に姿をさらしてしまい、身分の証明をする必要が
生じた。そこで彼の採った詭弁が、「自分は今ここにきているコルネリウス・アルバに
召還された使い魔だ」という事だった(苦しいが一応嘘ではない)。
「あれぐらいの知能を持った使い魔を時計塔内に持ち込む場合、例えコルネリウスの名を
持つものであっても書類の申請が必要だからな。多分、アルバ氏はそういうのをすっぽ
かしてそうな人だし、色々面倒な問題になる前にこの書類にサインしてもらわないと
………ってさっきから僕は誰に対して喋ってるんだ?」
ウェイバーの部屋、
「なんぞこれー、誰がやったんだよこんなの」
壁の大穴を見てウィリアムは思わず呟く。住宅の欠陥や事故による穴ではなく明らかに
人為的に開けた穴である。まるで魔王が待ち構えている洞窟の入り口の様だと思った。
この穴の向こうに自分ではどうしようも出来ない脅威が待っている気がする。
「あー、帰りたくなってきた、でもアルバ氏を見つけてサインもらっておかないと
明日の会議で僕が叱られるからなー、僕は悪くないんだけどそういう運命のもとに
生まれたっぽい人生がそういう予感をさせるんだよなー、ええい悩んでも仕方ない。
この穴からパッと覗いてアルバ氏がいなかったらすぐ逃げ出そう。それならこの穴の
向こうが地獄だろうと問題ない、多分」
壁を軽く二回ノックしてから穴から顔を覗かせる。
果たして待ち受けるのは地獄かアルバか。
「ウヒョークカココキィー!よくぞ気づいたな美少女戦士セーラーマッコイ!
そう、私こそが時計塔より派遣され、ロード・エルメロイの監視をしていた人物だ!
そしてこの封筒の中身こそが教会からの報告書にはない私の見た真実が書き記された
戦争の記録、欲しいか?欲しいだろう?でもてめえにはやんねー!糞して寝ろ!」
「その封筒の中身の内容が何なのかは分からない、でもこれだけは分かるわ。
あなたは自分だけがケイネス先生の生前のより詳しい状況を知っているという優位
を保持することでいい気になっている。それはケイネス先生に対する侮辱として
私は受け取るわ!その封筒殺してでも奪い取る!」
地獄とアルバの二択だと勝手に思っていたウィリアムが甘かった。
穴の向こうはアルバ地獄だったのだ。
意味不明の事をわめき散らし頭にA4サイズの茶封筒をのせてアホ踊りをするアルバ、
そのアルバに向かい目をカッと見開き拳を握り締めるセーラ。
危機に直面したウィリアムの頭が瞬時に状況を整理する。
1.この二人マジに戦う五秒前。
2.ケイネスや兄に次ぐ実力であろうサラの強さは良く知っているが、アルバ氏も天才だ。
3.仮にアルバ氏の魔術の実戦におけるレベルがサラと互角かそれ以上だとすると―、
4.男子寮全壊プラス時計塔全体の二割崩壊が予想される。そして現場にいる無力な僕。
5.自然と責任を押し付けられるのは目に見えている。
6.大変だー!!
二人は影の薄いウィリアムの様子には全く気づいていない様子、一体どうすればいいか。
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最終更新:2008年08月19日 03:11