696 :エルメロイ物語 ◆M14FoGRRQI:2008/04/29(火) 02:44:52


時計塔専属魔術医療師(37)は事件を振り返り語る―。
(ウィリアム・アーチボルトが医務室に運ばれた時間ですか?そうですね、大体
3時40分になった頃だったと記憶しています。ハイ、つまり彼が負った数々のダメージは
逆算するとここに運ばれるまでの20分余りで負った事になりますね)

「アールーバさーん、ハンコくっださーい!」

ウィリアム・アーチボルトが勇気を振り絞って壁の穴から飛び込むと、二人の横顔が
目に入った、その口は通常の会話の十倍以上で動いており、カセットテープを早回し
したかの様な声が届いてくる。

「もうバトル始まってるしー!」

(高速詠唱って奴ですか?時計塔の講師以上レベルなら皆理論は完璧に知っているモノ
ですが、実用可能なのはほんの一握り、実戦で初手から成功させられるのはさらにほんの
わずかだと言われてます。ハハッ、もちろん私も使えませんよ。
可哀相なのはウィリアムですよ、そんな天才二人が大魔術を使用しようとしている
ど真ん中に現れてしまったのですから。魔術師であっても普通はありませんよそんな不運。
でもそこはウィリアム、彼だからこそこのタイミングで部屋の中に突入した。
ある意味高速詠唱対決実現以上の奇跡ですよこれは)

勢いよく飛び出したウィリアムの足は止まらない。たちまち二人の射線に入ってしまう。
ウィリアムは見た、自分の顔に向かってアルバの指先から紅蓮が伸びるのを、そして、
反対側のセーラの顔が一瞬大きく膨張し、黒いドッヂボール大の痰が口から発射される
のを。

(マッコイ家の得意魔術といったら水、中でも現当主の娘・セーラはロード・エルメロイの
魔術複合理論を元にし、さらなる高みに至った事は日中ここにいる私にも知れ渡るぐらい
有名ですよ。ロード・エルメロイって人は魔術の天才だったけれど自分の技術を他人に
説明するのは苦手だったらしくてね。彼の理論を実践できたのはまだ二人だけ、彼の
婚約者ソラウ、そしてセーラですよ。どちらも女性であり、ロード・エルメロイと個人的
に親しかったのがポイントかも知れませんね。つまり、ケイネス・エルメロイ・アーチ
ボルトという個人は講師としては平々凡々だったとも言えるわけです。ウェイバーやら
チャダやらといった授業について行けない生徒もいたと聞きますしね。
ああ、本題に戻りますね。で、そのセーラの攻撃魔術ってのが強力でね、口から吐き
出した水弾に強力な呪いを付与するんですよ。こうやって口の前に人差し指二本を
並べてね、水弾が通過する瞬間にガンドを二発、ハイ、たったこれだけです。
ようするに凄い投げキッスですね。でも、こうやって説明するのとやってみるのとでは
大違い、もしあなたも水属性を得意とする魔術師なら今やってみなさいよ、きっと
爆発した水弾が自分の顔に降りかかりますから。
でもセーラのそれはそれぞれの魔術が重なり合ったまま効果・スピード・範囲全てに
おいて減退することなくむしろそれぞれの数値を増して敵にぶつかるものですから
喰らえばたまったもんじゃあありませんよ。え、なんで私がこんなに詳しいかって?
そりゃあ、セーラ・マッコイのこの技は既57回もここに来る患者から聞いてますからね。
全員が彼女への求婚者でしたよ)

刹那―ちゅどこーん。

「ぷげらっ!!」

寄声をあげ顔を手で押さえるウィリアム。その顔は真っ赤な粘液でコーティングされ、
その内側でガンドによる発疹と高熱による火傷がどんどん進行していた。
この痛みはウィリアムに到底耐えられるものではなかった、痛みに耐え切れず自らの
任務をほっぽりだし壁の穴から逃げ出していくウィリアム。
後には奇跡を目の当たりにし、立ち尽くす二人の天才が残された。

(きっと絶妙のタイミングと威力だったのでしょうね。アルバの火炎とセーラの水弾が
ウィリアムの顔面という土台の上でさらなる融合を果たし、人間リンゴ飴が出来上がった
わけです。で、前もろくに見えない彼が逃げた先ですが)

【選択肢】
マイヤヒーマイヤフー:女子寮の方ですよ。きっとアルバ達から少しでも遠くに行きた
かったのでしょうね。でもそこには奴がいた、アルバの使い魔です。
マイヤホーマイヤハッハー:体育館の方ですよ。プールにでも飛び込もうと思ったんで
しょうかね。でもそこには奴がいた、アルバの使い魔です。


投票結果


マイヤヒーマイヤフー:5
マイヤホーマイヤハッハー:3

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最終更新:2008年08月19日 03:11