259 :ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM:2008/03/25(火) 23:16:13


――Interlude


「…………何のつもり? マキナ」
「――――え?」

 ふと気付けば――――
 今まさに眼下の少女へ振り下ろさんと掲げられた細腕を、
 悪魔憑きから借り受けた白い義手で、二度と離すまいとあらん限りの力を込めながら握り締めていた。
 メリットも何もない。――――そこに一片の価値すら見出せぬ愚者の所業。
 当然、改めて確認する必要すら無く、
 突然の闖入者に不快も露わに面持ちを歪ませるかつての知己の姿。
 信じられない。日頃から計算高いと自負する自分が犯した、まさかの致命的なミス。
 いかに感情の希薄な巻菜であろうと、先程の現実離れした攻防を目にした手前、
 これから我が身に降りかかるであろう災厄の規模を思えば、
 自然と足は竦み、平坦な筈の胸中には並々ならぬ激浪が立った。
 何故、自分はこんなことをしているのだろう?
 ――――わからない。もとより久織巻菜に自己など無い。

「何のつもりかと聞いているのだけれど? ヒサオリマキナ?
 ……まさか、この女を助けるなんて言わないわよね?」
「あ、ぅ……私は……」
「巻菜!」
「シロウは黙ってて」

 タルタルの少女が小さな掌で印を刻むと同時に、
 傍で従者の如く付き従う人ならざる異形に魔力が迸り、
 丁度三人を取り囲む形で氷柱のサークルが描かれる。
 契約の履行、験術。凍てつく鎧。
 氷柱に触れれば凍るという、単純明快、摩訶不思議な秘術にして、
 慮外な邪魔者を払い除ける役割を担う即席の牢獄。
 半人前の彼にそれを打破する手段などあろう筈もなく、
 自身の秘奥より数段上の魔術を目にし、少年は舌をうち蹈鞴を踏む。

「さてと。……その白い腕って義手?
 便利そうね。指まで動く代物なんて、聞いたことがないわよ。
 オマケに神獣の腕を掴むだなんて何か凄いっぽいし……レアアイテムかしら。
 …………マキナ? ところで、そろそろ離して欲しいのだけれど?」



Ⅰ:離す
Ⅱ:離さない


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最終更新:2008年08月19日 03:23