78 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/09/05(火) 22:41:03


 商店街までやってきた。
 何故真っ先にここへ来たのかというと、以前、氷室がここを散策していたのを思い出したからだ。
 もしかしたら再びここへ来ているかもしれない、という期待をかけてみたのだが……。

「……居ない」

 商店街の通りには、氷室の姿は無かった。

「いや、もしかしたら店の中にいるかも……」

 そう思い直すと、この時間から開いている喫茶店や小物屋をしらみつぶしに覗いて行く。
 ……居ない。……居ない。……居ない。

「くそっ……!」

 地道な作業への苛立ちから、思わず荒げた声が出てしまう。
 衝動的に、ショーウィンドウを殴りつけたくなる。

「士郎? こんなところで何をしているのですか」

 そのとき、俺の後ろから聞きなれた声で呼びかけられた。

「……ライダー?」

 振り向くと、そこにはライダーが居た。
 いつもの黒無地の服に、エプロンをつけている。

「ライダー、朝からバイトか?」

「はい。今日は急用で人手が足りない、とのことでして。
 ……それより、士郎のほうは何故ここに?
 学校はどうしたのですか?」

 う。
 学校はどうしたのか、と問われると、サボタージュしました、としか言えないのであった。
 ……いや、待てよ?
 ライダーは朝からここで働いていたと言う。
 ならば、その間に氷室を見ていたかもしれない。

 もしそうなら、俺も言い訳をしている場合じゃない。
 正直に答えて、ライダーに教えてもらおう。

「ライダー。氷室って知ってるか?
 遠坂のクラスメイトなんだけど」

「ええ。以前、一度お会いしたことが。
 その節はお世話になりました」

「そっか。実はさ、その氷室が学校に来てないらしいんだ。
 家にも連絡がつかないって言うから、心配で」

「……厄介ごとですか?」

 ライダーの目が光る。
 厄介ごと、と聞いて神秘がらみだと思ったのだろう。
 ……確かに、発端は神秘がらみだったが、今は違う。

「いや、ライダーの考えてるような危険なことじゃない。
 氷室、多分いま悩んでてさ。
 ……実は、俺、氷室に謝らなくちゃいけないことがあるんだ」

「…………ほう」

 あれ?
 俺の言葉の途中から、ライダーの目が鋭いものから半眼へ。
 なんだろう、その『これ以上はどうかと思いますが』とでも言いたそうな瞳は。

「え、うん、そう、だけど?」

「そうですか。……ですが、残念ながら私は見ていません。
 先ほどまで外の掃除をしていましたが、生憎それらしい姿は」

「……そっか」

「それに、もし悩み事があるとして。
 それを考えるために外出したとするならば、静かな場所で考えるものではないでしょうか」

 ライダーの言うことはもっともだ。
 午前中とはいえ、平日の商店街にはそれなりに活気がある。
 考え事には向かないだろう。

「……そうだな。サンキュ、ライダー」

「いえ。早く見つけてあげてくださいね」

 ライダーに礼を言うと、踵を返して商店街を後にした。

79 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/09/05(火) 22:42:18


 ……ライダーと会話したことで、頭に上っていた血が少し下がった。
 闇雲に探しても仕方が無い。
 手がかりは少ないが、それでも理によって行動するべきだ。
 まずは落ち着いて考えろ。

 今は大体午前十時。
 移動時間も含めると、一つの場所を探すには、最低でも1時間は欲しい。
 しかも、それは深山町の中ならばの話だ。
 深山から新都へ移動しようとすれば、あわせて2時間は必要だろう。
 つまり、何度も行ったり来たりして探すのは効率が悪いということになる。
 あと、考え難いが、郊外の森へ向かうとするなら、行き来で3時間はかかる。
 新都から向かえば4時間になる計算だ。

 ……無駄に歩き回ることは避けたい。
 次の移動場所を良く考えなければ。

『選択肢が移動時間ごとに分類されました』

《1時間》
α:衛宮邸付近を捜す。
β:学園付近を捜す。
γ:商店街付近を捜す。
δ:間桐邸・遠坂邸付近を捜す。
ε:柳洞寺付近を捜す。
ζ:未遠川の公園付近を捜す。

《2時間》
η:港付近を捜す。
θ:駅前付近を捜す。
ι:教会付近を捜す。
κ:幽霊洋館付近を捜す。

《3時間》
λ:郊外の森を捜す。

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最終更新:2006年09月06日 00:27