350 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2008/03/30(日) 03:39:32
「あの女王蟻を止めれば」
振り返り女王蟻を見据える。
残念ながら空中に対する攻め手は少なく、また命中精度もそう高くはない。
敵が巨大、ないし行動予測が立つ相手ならばまだしも、敵は不定形に歪みながら突撃を繰り返しているという有様だ。
対するに、恐らく司令塔である『女王蟻』は極めて大きく、また小型の敵に比して動きは鈍い。
「なるほど、司令塔を撃破することで動きを止めると言うことですわね……しかし、アレに対しての攻め手はありますの?」
「無かったらこんな事言わないわよ……やりたくはないけどね」
ジェネラルの腕が振り下ろされると同時に大砲が一斉に砲煙を上げる。
幾つもの砲弾が炸裂し、女王蟻を守護する『蟻』達に炸裂する。
そして次の瞬間蟻達は崩れ落ち、数秒後に形を取り戻す。
女王蟻を狙う砲弾も、自ら崩れ去った蟻の展開する膜に阻まれ威力は殺される。
覆いきれなかった砲弾が女王蟻に炸裂するが、それでも決定打と為る様子はない。
「手詰まり、か……」
状況は膠着している。
敵の攻撃が行われる前の連続砲撃で主導権は握れているが、決定打を出す事は出来ていない。
この防御態勢を考えれば、予測の通り女王蟻が重要な存在であることは確実だ。
また、敵は驚異の再生能力と合わせて『進化』しているらしく、砲撃への対応が早く、鋭くなり始めている。
現状は無視しても良いレベルだが、あと数分、それでこちらさえ飲み込みうるモノへと変化するだろう事は容易に予測できる。
砲撃だろうと火炎瓶だろうとそれは同方向の力であり、それが敵を撃滅しきれない以上、勝利する可能性は多くない。
敵魔術師の魔力切れ、その後に起こる生物の自壊や、進化の中での自殺因子の誤作動、進化の先にあるという自滅、その程度しか思い
浮かびはしない。
懸命に可能性を探りながら、ジェネラルは敵を攻撃し続ける。
「……なるほど、砲による攻撃ならば一時的でも敵を止められるのね」
走りながら、遠坂凛は一人呟いた。
敵によって混乱させられてしまったなのはは、最も得意とする砲撃ではなくスフィアによる弾幕を展開させていた。
一撃の威力が低ければあの敵は止められない。
通常ならば気にもしないほどのチャージタイム。
叩き付けられた未知の感情による混乱が、その時間を使うことをさせなかった。
「本当に良いんですのね?」
「大丈夫、信じるわ……言いたくはないけど、戦力としては私達よりも上なんだから」
「より小さな力でより大きな敵に向かう以上、気遣ってる余裕はない、と言うわけですのね?」
「ええ、そう言うこと……勿論手伝ってもらうわよ、貴女にも、ジェネラルにもね」
走りながら作戦を大まかに説明する。
念話で同時にチャネリングしていたのか、離れた位置のジェネラルも軽く頷いたのが見えた。
「……なるほど、運任せですけれど、このまま進化増殖する相手と真正面からつつき合うよりも余程勝率が高そうですわね」
「理解力が高くて助かるわ」
一度立ち止まり、数秒の間呼吸を整える。
互いの顔に軽く視線を送り、同時に頷くと、
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最終更新:2008年08月19日 03:34