216 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/03/23(日) 00:29:44


「あ、あれっ? 衛宮くん、こんにち……は?」

「さっ、三枝さん!」

「お、由紀っち!」

「……む、由紀香か」

 殺伐としたグラウンドに救世主が!
 蒔寺の猛攻に轟沈寸前だった俺を救ってくれたのは、陸上部のマネージャーにして歩く癒しこと、三枝由紀香その人だった。
 三枝さんの登場に、蒔寺と氷室が平静を取り戻した。
 つっても蒔寺の腕は俺の胸倉を掴んで離さないのですが。

「ま、蒔ちゃん、衛宮くんになにしてるの?」

 そんな俺と蒔寺を見咎めて、三枝さんは目を白黒させている。
 当然だ、親友が男の胸倉掴んで振り回してるなんて光景が目の前で繰り広げられていたら誰だって驚く。

「実はな由紀っち。
 この男には氷室を骨抜きにした疑いが強くかけられている。
 それを今、尋問している最中なのさ」

「だからそれは誤解だとあれほど……!
 つーかまずは手を離せ!
 このままじゃ話せるものも話せないだろうが!」

 あと、女の子に胸倉掴まれると自分の身長の低さが悲しくなるからやめてくれ!

「あ、あの、蒔ちゃん。
 とりあえず、苦しそうだから離してあげたらどうかな?」

 ああ、三枝さん、あなたのそのごくごく普通な意見が今はとっても輝いて見えるよ。
 頼もしい援軍を得て、少々強気に蒔寺を見返してやる。

「だ、そうだが? 蒔寺?」

「ぬぐっ、卑怯なり衛宮……これで手ぇ離すなかったらアタシが悪者みたいじゃんかよ……」

 しぶしぶ手を放す蒔寺。
 三枝さんをダシに使ったようでちょっと嫌な気分だが、こうでもしないと話が進まないからな。 

「あー、助かった。
 ありがとう、三枝さん」

「わ、わたしは何もしてないんだけど……」

「おい衛宮、まだこっちの質問に答えてないぞ。
 氷室と一体なにがあったんだっつーの」

 む、まだその話に食いついてくるのか……。
 しかし、いくら聞かれたって、今までの出来事を正直に話すわけには行かないのだ。
 氷室から告白されたことはもちろん、薔薇乙女《ローゼンメイデン》やらアリスゲームやら、広まっては拙い話が盛りだくさんだ。
 それだけじゃない、もしそこから派生して、魔術やら神秘やらにまで話が及んだら……まず遠坂が黙ってないだろう。
 つまり、なんとかして辻褄の合う話をでっちあげなければならないわけだが……どうするべきか。

 俺は三人を前にして悩んだ。
 このとき、全くうかつなことに、俺は雛苺のことをすっかり失念してしまっていた。
 わざわざ連れ出してきておきながら、一人だけ置き去りにしてしまった雛苺。
 そのことを思い出すのは、まさにこの直後。
 向こうから聞こえてきたのは――。


α:雛苺の悲鳴だった。
β:雛苺の怒声だった。
γ:雛苺の笑い声だった。


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最終更新:2008年08月19日 03:45