317 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/03/29(土) 01:30:13
とにかく、蒔寺に雛苺を目撃させるわけにはいかない!
俺は即座に踵を返すと、入り口の脇に立ち、息を潜めた。
やるしかない……蒔寺を強引に足止めする!
「このアタシから逃げようったってそうは問屋が……」
勢い込んで入ってくる蒔寺!
だが、その勢いの良さが命取りだ!
「いまだっ!!」
蒔寺の足元に針を差し込むように、低い姿勢で俺の足を差し出す!
タイミングは完璧、蒔寺は見事に足を引っ掛けた!
「のわっ!?」
平時の蒔寺なら、足をとられても、その類まれなる反射神経で、咄嗟に身体を庇うくらいは出来るだろう。
だが、今は走ってきたところを、それも死角から不意を付いて引っ掛けた。
いくら現役陸上部員でも、これを堪えられる道理はなく――。
「ぎゃんっ!!」
蒔寺は、顔面から床にダイヴを敢行。
そして、そのまま地面に突っ伏し……ぴくりとも動かなくなった。
「お、おい……そいつ、今、かなり危険な倒れ方をしなかったか?」
後ろで一部始終を見ていた慎二が、恐る恐るといった風に尋ねてきた。
その手には、相変わらず雛苺がぶら下がっている。
「ま、まあ、大丈夫じゃないか?
ほら、蒔寺って無闇に丈夫そうだし……」
と言いつつ、俺もちょっぴり心配になっていたりする。
成り行き上やってしまったが、仮にも生物学上は女の子という区分に入る蒔寺を怪我させたのだ。
正義の味方志望としては、かなり罪悪感が……。
「そうだね、少なくとも僕には関係ないし。
もし何かあったとしたら、衛宮が責任を取るんだね」
「ぐっ……いや、確かにそうなんだけど……」
そもそも慎二がいなければ、こんなことする必要もなかったのに……いや、やめよう。
それは言っても詮無きことだ。
しかし、責任って……俺が、蒔寺を?
……あまり考えたくないな。
「そっ、それより、慎二!
なんでお前が雛苺を……?」
「ああ、こいつ?
全くとんでもなくふざけた奴だよ。
このまま許してやるわけにはいかないね」
俺が少し無理矢理に話を振ると、慎二は酷く無造作に雛苺を持ち上げた。
遊んでもらっているとでも思っているのか、そんな扱いをされても雛苺は楽しそうだ。
「ふざけた奴って……一体、雛苺に何をされた?
何にそんなに怒ってるんだ?」
「衛宮、お前もほとほと頭が悪いね。
何に怒ってるか、なんて、そんなの決まってるじゃないか」
慎二はそう吐き捨てた後、その怒りの理由を口にした。
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最終更新:2008年08月19日 03:46