438 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/04/07(月) 22:56:23
「う、ううん……」
俺が慎二に説明しようとしたそのとき、今までピクリとも動かなかった蒔寺が、うなり声を発した。
そして、もぞもぞと身じろぎする気配。
「なんだよ、気がついたのか?
間の悪い女だな」
慎二は、これからというところで水を差されたからか、つまらなそうに鼻を鳴らした。
しかし、俺のほうはそうも言ってられない。
何しろ直接の加害者だし。
「慎二、とにかくワケは後で話すから、雛苺を蒔寺の目に付かないところへ。
お前も蒔寺を神秘に触れさせたくはないだろう?」
「そうかい?
見られたら口を封じればいいだけ、って考え方も有るんじゃない?」
「……慎二」
「わかってるよ、冗談だ。
衛宮相手にそんなこと本気で言うわけないだろ。
お望みどおり、このチビは道場の奥に隠してきてやるよ」
俺の返事を聞かずに、慎二は雛苺を掴んだまま弓道場の奥に引っ込んだ。
奥と言っても、見ようと思えばすぐに覗けるような位置なのだが……そこは俺が、なんとか蒔寺を引き止めるしかないんだろうな。
俺は起き上がろうとしている蒔寺に向き直り、ゆっくりと手を差し出した。
「大丈夫か蒔寺?
ちゃんと自分の名前とかわかるか?」
その言葉をきいた蒔寺は、ゆっくりとこちらを向き直り――。
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最終更新:2008年08月19日 03:47