555 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/04/17(木) 19:50:30
慎二の言うとおり、今は蒔寺よりも雛苺のことだ。
説明するなら順番にやらないと混乱するし、慎二が先約だという主張にも一理ある。
それに、雛苺をいつまでも一人で待たせておくわけにもいかない。
蒔寺のことは……氷室には悪いが、後回しにさせてもらおう。
「氷室、その……悪い、まず慎二に説明をしておきたいんだ」
「説明? 一体なんの……ああ」
言いかけて、直後に理解したらしい。
雛苺の声がした場所に慎二が居た、ということの意味に。
氷室は俺に向けていた視線を慎二に移し、ふむ、と眉をしかめる。
「そうか、間桐は見てしまったのか……。
だが、だからといって蒔の字を放置するというのは……」
「は? なんで、そこで氷室が納得してるのさ。
お前はそれこそ関係ないだろ」
氷室の言葉に、今度は慎二が疑問の声を上げた。
慎二にしてみれば、氷室は魔術師でもなんでもない一般人だし、まさか知ってるとは思わなかったんだろう。
「あっ、おい衛宮、まさかお前、氷室にまでバカなことを言ったんじゃないだろうね」
「いや、違うって。
氷室は、たまたまアレと関わってたんだ。
俺からは何にも干渉しちゃいないぞ」
じろり、と、疑わしそうな視線を送ってくる慎二。
慌てて、自分が無実であることを主張する……流石に、蒔寺にあんなことを言った直後じゃなぁ。
「ふぅ……ん?
氷室が、アレと関わってたって?」
慎二は、頭に手を当てて、なにやら一人で納得するそぶりを見せている。
ううん、なんか悪そうな顔をしているな……遠坂みたいだ。
やがて一度頷くと、驚くべき提案を口にした。
「じゃあさ、説明はお前のほうからしてくれよ。
知ってる限りのことで構わない。
ああ、せっかくだから、三枝にも教えてやればいいんじゃない?」
「はっ!?」
思わず声が詰まる。
慎二の奴、なにを言い出すんだ!?
三枝さんに秘密を教えることも驚きだが、それだけじゃない。
「……私が、間桐に説明する、だと?
衛宮に訊くんじゃなかったのか?」
そう。
慎二は、さっきのセリフを、俺に対してではなく、氷室に対して言ったのだ。
氷室も、慎二の言葉の意味が掴めずに眉を顰めている。
「そうだぞ、慎二。
説明だったら俺でいいだろ。
それに、三枝さんには……」
三枝さんに教えるのは拙くないか?
俺がそう言いかけると、慎二はハァやれやれ全く鈍いね衛宮は、とでも言いたそうな顔をした。
「やれやれ、全く鈍いね衛宮は」
つーか実際に言いやがった。
「衛宮が話したんじゃ、余計なことも喋っちゃってややっこしくなるだろ。
氷室が何を知ってるのか、興味もあるしね。
三枝にも教えるのは……まあ、こっちとしての最大の譲歩さ」
……あー、そういうことか。
つまり、慎二は「必要以上に」情報が漏れることを避けようとしてるのか。
俺が説明すると、うっかり『魔力』やら『供給』やらの単語を零してしまうかもしれない。
その点、氷室が説明するのであれば、それは神秘の話ではなく、あくまで不思議な人形の話に過ぎない。
三枝さんに明かすのもあくまで不思議な人形の話だけで、神秘の域にまでは踏み込ませない……ってことか。
「さもなきゃ、僕は衛宮とサシで話をするからな。
お前ら三人はどっかに行ってれば?」
挑発するように手を振って追い払う仕草をする慎二。
これは……どうするべき。
事情を話したら、最悪、アリスゲームという戦いに巻き込まれる危険性がある。
三枝さんや、今の蒔寺を、アリスゲームに巻き込んでいいのか……?
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最終更新:2008年08月19日 03:48