642 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/04/23(水) 19:51:01
考えた末に、俺はnのフィールドについては保留することにした。
やはり、いまだ出会わないドールの話を当てにしても仕方ないだろう。
蒔寺については、今は下手に強い刺激を与えるよりは、いつもどおりにさせて日常を思い出させたほうが良さそうだ。
「しかし……どうしよう。
元々蒔寺には、水銀燈の衣装を頼むつもりだったんだが」
「衣装だって?
衛宮、お前まさか、人形のパシリなんかやらされてるのかい?」
「パっ……違う、必要になったから探してるだけだ!」
なんだその軽蔑するかのような目は、心外な。
けど流石に、腕が無くなるほどの戦いをしてボロボロなので代わりが必要なんだ、とは言えない。
……氷室や三枝さんの目があるこの場では特にな。
「ふぅん。
蒔寺の家は呉服屋だっけ?
でも人形用の服なんて、そもそも普通の店には売ってないんじゃない?」
確かに慎二の言うとおり、ドールの衣装なんて、一般店が置いているようなアイテムじゃない。
もしも頼んだとしても、多分一から仕立ててもらう、特注ものになってしまうだろう。
そうなると時間もかかるし、同級生の頼みで作ってもらえるようなものじゃない。
とすると――。
「やっぱり、そういうのの専門店を見つけるしかないか?」
この街で、人形を取り扱う店を探すべきなのかもしれない。
今まではそんな店、探してみたことすらなかったが……案外、探してみれば見つかるかもしれないし。
俺がなかば無理矢理に楽観的な思考を進めていると、突然、三枝さんが提案をしてきた。
「あ、じゃあ衛宮くん。
わたしたちも、探すの手伝ってもいいかな?」
「えっ?」
なんと。
三枝さんは、練習が終わった後、人形店探しを手伝ってくれるというのだ。
氷室を見ると、こっちもやぶさかではなさそうな顔をしている。
もちろん、こちらとしては断る理由は無い、むしろ大歓迎だ。
一人よりも二人、二人よりも三人のほうが行動力も土地勘も向上するからな。
「そうすると、蒔の字も連れて行かなくてはな。
どのみち目を離すわけにもいくまい」
「間桐くんも、一緒に来てくれる?」
三枝さんに尋ねられて、しかし慎二はあっさりと首を横に振った。
「冗談だろ?
お前らと一緒に、ぞろぞろ連れ立って店探しなんて、ぞっとしないね」
そう言って、その場から立ち上がる。
三枝さんのぽかんとした表情と、氷室の冷たい表情を受け流しながら、背中を向ける。
「やりたきゃ勝手にやってなよ。
……僕は帰る。
衛宮も、そいつらと一緒に店探しなんかしても無駄だぜ。
見つけられるものも見つけられなくなる」
じゃあな、と手をヒラヒラ振って、慎二は弓道場から出て行った。
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最終更新:2008年08月19日 03:49