907 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/05/13(火) 21:14:36
――Interlude side 1st Doll
「い、一体なんだったのよぉ……」
まだドキドキしてるのをごまかすように、小さく呟く。
……いきなり目の前に物が飛んできたら、私じゃなくたってびっくりするわよぉ。
しかも、それが鞄だっりしたら、なおさらのこと。
そう。
実のところ、私は何が飛んできたのかを、ちゃぁんとわかっていた。
「見間違い、じゃあ、ないわよね」
薔薇乙女《ローゼンメイデン》の鞄。
私たち薔薇乙女《ローゼンメイデン》が眠るための……そして目覚めるための。
それはつまり、どういう事かと言うと。
「……まさかこんな形で、新しいドールが現れるなんて」
『
銀剣物語 第八話 蒼星石、衛宮家にとてもなじむの巻』
改めて、土蔵を……いま、私が出てきたばっかりの場所を……振り返ってみる。
……酷いほこり……中が真っ白に見えるわ。
そのせいで、中の様子がぼんやりとしか分からない。
まあ、多分中の様子は随分しっちゃかめっちゃかに様変わりしてるだろうな、って予想は出来るけどぉ。
「……どうしようかしら……」
片方しかない手を、ぎゅっと握り締める。
正直に言えば、何がなんだか分からない。
さっき、一瞬だけ聞こえた声……危ない、という警告。
つまり相手は、私のことを……薔薇乙女《ローゼンメイデン》がいることを認識していた。
そして、私が不完全の状態であることも。
だからこそ……変よね。
アリスゲームをしにきたドールが、わざわざ相手に『危ない』だなんて言う筈がないもの。
「アリスゲームが目的じゃない、ってことぉ……?
だったらなんで、私のところに……」
自分でも意外だけど、今の私は、あんまりアリスゲームに気乗りじゃない。
どうせこの身体じゃあアリスにはなれない、という諦めが、理由の半分。
もう半分は、士郎が言ってたことが気になって……。
「っじゃなくって!
それはその、色々よ、色々あるのよっ!」
……こほん。
ともかく、相手の意図が分からない以上、うっかりと近寄るのはよくないわね。
私は十分な距離を保ちながら、土蔵の中をじっと見続けた。
もうもうと舞い上がったほこりは、ゆっくりと薄くなっていく。
そして、その向こうから――。
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最終更新:2008年10月25日 16:03