63 :Fate/Rise of the Zilart ◆6/PgkFs4qM:2008/05/23(金) 22:26:11
その身形の奇怪なこと。
果たして伊達を気取っているのやら、厚いプレートに覆われた胴の上から、
金、紫、緑等の極彩色をてらった赤布を巻き付け、
頭には趣味の悪い赤の頭巾を被らせるという、常人とは一線を画す傾奇者の風体をしていた。
腿に当たる箇所をパンのように膨らませたカボチャのズボン。
思案する限り、これから畑仕事に向かおうとでもいうのか、逞しい肩に背負われた大編籠。
更には団子の如き顔に彩られた赤の隈取が、大きな体躯も相まり、男の出鱈目さを決定付けている。
だから、出し抜けに現れたこの奇妙な出で立ちの男に対し、
さしもの英雄王も沸きあがる好奇心には抗えず、
つい、肺から搾り出た空気に、言葉の音を成してしまった。
「貴様……道化……か? 随分趣味の悪い服装をしているではないか。
名は何という? 答えれば我の嘲笑を賜わしてやってもよいぞ。雑種、名を名乗るがよい」
だが、大男はそれに答えず、皺の寄せた眉間をそのままに、
不機嫌そうな面持ちで、質問を投げかける英雄王の双眸から顔を逸らす。
そして、不愉快さから一転、ニンマリと嗜虐心の込めた表情に変化し、眼前の青年を眺めつけた。
「や~だよ」
「なに……?」
「嫌だって言ったんだ。誰がそんな尊大な態度の奴に名前を教えてやるかってんだよ。
どうしても聞きたいってんなら、ちゃんとお願いした上で、平伏低頭して聞き直すんだな。
そうすれば教えてやってもいいぜ」
木枯らしの吹く荒野の中で、大男の心底愉快といった笑い声が響く。
してやったり。
どこの貴族だか知らないが、さも偉そうな者の要求を他愛なく撥ね返すという快挙は、
大男の反骨心を深く満たし、粋がる秀麗な顔に泥を塗ってやったという爽快さを与えた。
だが、大男は気付いていない。
所詮は金持ちのボンボンと侮っていた青年の赤眼が、
瞳に宿る炎とは間逆の、凍てつく殺意を溢れさせていたことに。
「ほぅ……面白いな、お前。面白いぞ」
「そうかそうか、それは嬉しいぜ。もっと言ってくれ」
「ああ、そうだな……。では――――」
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最終更新:2008年10月07日 18:09