573 :アトルガンの娘 ◆6/PgkFs4qM:2008/08/04(月) 16:31:32


――亀道場 建設予定地


 主役――
 それは物語を描く上で欠かせない存在である。
 世界を異にする二人のギルガメッシュ。
 そして彼らをメインに据えた『Fate/Rise of the Zilart』がスタート。
 念願の主役を得たことにより希望に目を輝かせる二人であったが、
 しかし、時を遡ること一ヶ月前、
 作者の浮気を経て無念の更新停止を受けたことにより事態は一変。
 ギルのギの字すら出なくなった『セイバー編』の出現により、
 二人は先の見えない暇を持て余していた。


ギル「ギルガメッシュどんよぉ……」
ギル「なんじゃあ、ギルガメッシュどん」
ギル「わしらが活躍していた『ギルガメッシュ編』じゃがのぅ……
 『セイバー編』と交代して一ヶ月近く経つが、まだ更新の目処はつかんのかのう……」
ギル「そうさのう。まだわからんのう」
ギル「わしゃあ、寂しゅうて敵わんわい。ちと悪ふざけが過ぎただにか」
ギル「安心しゃあ。わしらは主役じゃあ。ついでに言うと王様がぁ。絶対出番はあるに決まっとるぎゃ」
ギル「そうかのう……。わしの胸は不安で一杯じゃあ……」
ギル「はぁ…………」
ギル「はぁ…………」
ギル「……でも、一つ気になることがあるがに」
ギル「なんじゃあ。拙者とあんたの仲じゃ。何でも言いんさい」
ギル「主役って物語の中心じゃろう? ヒーローじゃろう?」
ギル「そうじゃ。一番って意味じゃ」
ギル「だったら主役が二人居るのはおかしくないかのう?」
ギル「!」
ギル「物語の中心に据えるのは常に一人でなくちゃいけないぎに」
ギル「そ、そう言われれば、そうだのう……」
ギル「そこでのう、ここは一つ、どっちが本物の主役か勝負じゃ」
ギル「おどりゃ! ヤルっちゅうんかい! 拙者『トロの剣』持ってんぞぉぉぉ!!」
ギル「そんな脅しにビビル思うてか! 表出えやあ!!」
ギル「おどりゃ! 痛い目見んとわからんのか! 掛かって来いやあ!!」

???「君達、落ち着きたまえ^^」

ギル「貴様は……」
ギル「あんたは……」
ギル×2「「タイガー!!」」

藤村「喧嘩は主役のすることじゃあないな」

ギル「し、しかし、これは我にとって退けぬ戦いなのだぞ……!」
ギル「そ、そうだ。いくらあんたといえど、邪魔すればただじゃおかねえぞ!」

藤村「それでは訊ねるが、君達にとって、主役とは何なのだね?」
ギル×2「「そ、それは……」」
藤村「主役とは……希望、だよ」
ギル×2「「希望……」」
藤村「希望がたくさんあっちゃ、まずいかね?」
ギル×2「「…………」」
藤村「理解したようだね。では皆で主役しよう」

ギル「わかったぜ、主役(ヒーロー)!」
ギル「いいだろう、主役(ヒーロー)!」

藤村「ふふ、君達も主役じゃあないか^^」

ギル「そ、そうだったな、主役(ヒーロー)!」
ギル「そ、そうであったな、主役(ヒーロー)!」

藤村「よし。さあ――――行こう!」


SHIROU「そこまでにしておけよ、藤村」


――――――――。


「うっ!」
「どうした、セイバー」
「い、いえ。酷く悪い夢を見ていたようだ。
 白昼夢、でしょうか。本当に酷い夢だった」

 額に浮かぶ汗の玉を手の甲で拭い、
 体内に溜まった疲労を溜息と共に外へと吐き出す。
 まだ捕虜の解放は済んでいないというのに夢を見るだなんて……
 ここ最近の防衛線の激しさを抜きにしても、些か以上に気が緩んでいる証拠か。
 とにかく、不可解な幻が頭を苛もうとも、今やるべきこと不変であり、
 もたついて時間の無駄を許すのは愚かな振る舞いに他ならない。

「仕方がありませんね……」

 今は偶然敵の姿が見当たらないというだけで、
 本来ならば、ここは大挙を構えるマムージャ藩国軍の本拠地の只中であり、
 眼前の洞穴の壁を挟んだ向こう側には何匹の魔物が徘徊しているやも知れず、
 何時渦中に呑まれる事態に陥るかわかったものではない。
 私達がこうして案山子のように突っ立っているだけでも、
 当初の優位性は無駄に消費し、事態は刻一刻と形無き猶予を失していく。
 ならば――――。
 口元に当てた指を払い、沈めた顔を持ち上げ、再度寂寥を感じさせる牢獄へと目を向ける。
 拙速は巧遅に勝る。
 やや乱暴な手段ではあるが、意味もなく命を落とすよりは、本人にとって遥かにマシな筈だ。

「アーチャー、少し退いていてください。
 ……そこの貴方。このままでは危険ですので、早く出て来て貰えませんかー!?」

 一見、先程までと何ら進歩のない、刺激の弱い一方的なコンタクト。
 だが、柔和な沈黙を秘めていた空気は直後けたたましく震え、
 平然と繕う問いとは裏腹の喧しい音が辺りに木霊し、
 静けさに油断しきっていた耳を容赦なくつんざいた。
 足の底に設えられた鉄板と鉄の棒が打ち付けあう音。
 これは入室の断りを入れる慎ましやかなノック音ではない。
 これは宛ら猛獣を追い詰める銅鑼の音であった。
 先程まで大地を踏みつけていた足底を、鬱憤を晴らすが如く、鉄の棒目掛けて蹴って蹴って蹴りまくる。

「んん、出てきませんね……。仕方ありません。
 アーチャー。すみませんが、貴方も蹴るのを手伝って頂けます? 事態は一刻を争うのです!」

 二人掛かりで牢屋を親の仇とばかりに蹴りまくる。
 無情に! 激しく! それでいて繊細に!
 そんな像も逃げていく騒音に直面し、
 中に居た者はいよいよ堪えられなくなったのか、

「おい、やめろ馬鹿」

 などと、少々の苛立ちと、ちょっとした動揺を込めた声をこちらに寄越してきた。

「早く出てきてください。
 ここは敵の本拠地なのですから、長居をしてもあまり良いことはありませんよ?」

 問いを投げかけてみたところで、彼と私達の間に流れるものは、
 依然変わらぬ静かな沈黙と小さな隙間風の吹く音ばかり。
 ……警告の意味も兼ねて、片足を上げてみる。
 あ、出てきた。



Ⅰ:転移魔法で皇宮に戻ろう
Ⅱ:歩いて帰るか
Ⅲ:ちょっと寄る所が


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最終更新:2008年10月08日 16:50