647 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/08/28(月) 02:35:03

「さっ、料理の前のミネラル・ウォーターデス」
喉が少し渇いていた遠坂凛は一口だけ水を飲み込み。
「えっ?」
水のあまりの美味しさに声を上げた。
「どうしたの?」
いきなり食べるのは貴族的でないと考えているのか、手袋を外す等念入りに食べる準備をしていたルヴィアが聞いた。
「この水……本当に美味しいのよ、なんなの……この水」
超純水のようにまるで不純物を感じさせぬ水、
かといって水の純化処理のような人工処理を施される事は決して無いと言い切れる高貴さが存在する水。
その言葉を聞いて、他の四人が一様にコップの水を飲み込む。
「本当だ……凄い」
この水で米を炊いたら凄く美味いのではないかと、そんな事を衛宮士郎は考え、この水は何かを質問した。
「オドロかれましたか? そのミネラル・ウォーターはグリーンランド・フィヨルドの三万年前の雪解け水でス。
 キンチョーをほぐし、眼球の汚れも涙と共に洗い流してくれマス」
言われて振り返ると、桜は大泣きしていたし、ルヴィアも少し涙目になっていた。
一方ライダーと凛は緊張が解けたような表情でリラックスしている。

「なんだか、泣いたら凄くスッキリしちゃいましたね、視界が広がったような気分です」
泣いていたのは一分程だっただろうか、確かに以前より目が輝いて見えた。
贔屓目とかそう言う事はなく、本当に宝石のように光っていた。

「さっ、料理を続けましょうか? まず前菜の小魚とホウレン草のスープでス」
「へぇ、以外とあっさりしているんですね……イタリア料理ってもうちょっとこう、ゴッテリしたモノだと思ってましたが」
「ええ、そう言う料理もゴザイマス、シカシ、ワタシはそういった一部の食通が気取って食べるヨーな料理はお出ししまセン。
 あくまで素材を生かした、母カラ娘に受け継ぐヨーな人々の歴史と共に歩んでいく料理をお出ししマス……」
「なるほど、では頂きます……」
思わず料理にお辞儀した。
一口スプーンで啜って飲んだ。
「あ、美味い……」
「美味しい……」
「脱帽ですわ」
「なんと味わい深い……」
全て飲み干し、桜だけが無言だった。
「どうしたんだ? 桜、こういう味が苦手だったとか?」
「いえ、とっても美味しかったんですけど、食べたら何か鼻の奥が……」
トニオの雰囲気が変わった。
「お客様、こちらのタオルを使う事をお勧めシマス」
桜が渡されたタオルを手に取る。
その瞬間。

桜の花から血が噴き出した。
その勢いは正に噴出である。
「は、鼻血が……」
普通に鼻血の量ではない。
まるでホースで庭に水を撒くような量だ。
「それは、毒デス」
「毒ゥ?」
「はい、体内に残った毒が血液に溜まっていたのを除去して居るんでス。
 小魚とホウレン草に含まれる豊富な鉄分、そしてスープ内の特製素材の成分が体内で急速に血液を作成してイルのでス。
 そして余分で毒の混ざった血液を体外へ押し出しているのデス、他の方々が何ともないのは毒が体内に蓄積されて居ないからでスヨ」
確かに恥ずかしさからか顔を隠している桜の持つタオルの血液はどこか黒さが混ざっている、あれが血中毒という奴なのだろう。

「……あ」
鼻血が止まる。
「凄い……体が軽くなって気持ちも楽になりました、まるで詰まっていた物が取れたようです」
「……良かったじゃないか」
そうとしか言えなかった。

「さっ! 料理を続けましょうか…?」
トニオが満面の笑みを浮かべた。

648 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/08/28(月) 03:18:40

「続いて第一の皿<<プリモ・ピアット>>、パスタ料理でス」
前菜のスープと違い、今度の皿は少し濃厚な香りが漂った、だが濃厚さの中に取れたての完熟野菜のような爽やかさがある香りだ。

「ゴルゴンゾーラスープのパスタでス」
「ゴルゴン……」
ライダーが何か言いたそうにしていた。
「オー、ゴルゴンと言ってもギリシャの女神様とは何も関係アリまセンからね?」
「そうですか」
名前についての興味は失せたようだ。
だが怪物ではなく女神と呼んでくれた事は少しだけ嬉しそうだった。
「ハイ、私はナポリという南イタリアの出身なのですが、
 北イタリアへ勉強に行った際に最初に食べたのがゴルゴンゾーラのパスタなのです。
 シェフも良い方で、トテモ勉強になりました、ですから、自信作の一つでス」
「ちょっと香りに癖はあるけど、確かに美味しそう」
そう言うと早速更に取りかかる凛、食べ方に躊躇とか息を吹いて冷ますという思考法を忘れたように食べた。
ふと「パスタの賞味期限は熱いうちー!」と茹でている時に鍋から取り出して火傷した虎の事を思い出した。

「おお、これも美味しい」
「ソレは光栄でス、ではメインディッシュの準備に取りカカりマスね」

トニオは厨房に消えた。

「桜、大丈夫なの?」
「……何がですか?」
「いや、水飲んで大泣きしたりとか、スープ飲んで鼻血出したりとか、そう言う事よ」
「ええ、その瞬間は驚きましたけど、今は凄く爽快な気分なんです、食べれば食べる程もっと食べたくなるような感覚ですね」
そう言って微かに笑うと、桜はパスタを食べ始めた。
「確かに、私も同じ物を食べて何ともなかったけど……ライダー、何か感じない?」
「……いえ、店内からは何も感じません、魔術的な感覚は市内に入ってからずっとですから、鈍っているかも知れませんが」
「気を張りすぎると疲れますわよ、リラックスするべき時はしておかないといざというとき困りますわ」
警戒は完全に解いたのか、ルヴィアは鼻歌が聞こえそうな程楽しそうにパスタをつつく。
「……そうかもね」
凛もパスタを食べ始めた。

全員が食べ終え、一息ついた時、突然桜が倒れ込んだ。
「桜!?」
床に倒れそうになるところで士郎が支えた。
髪の色が変わっていく、鮮やかな紫色から凛と同じ黒へと。
「髪の色が変わっていくなんて、異常だわ……確定ね」
凛が桜の皿を手に取り、隠し持っていた宝石に込められた魔力の一部を用いてスキャンを開始する。
右腕に全神経を集中、雑音となる市内の魔力をカットする簡易結界を皿とその周囲に展開、魔力を皿のスキャンへと傾けていく。
「……見えた」
それはとても小さな生物、ナノマシンのような生物が何匹か皿の上に存在した。
「これは……魔導生物? これが桜に影響を?」


A:その言葉に弾かれたかのようにライダーが厨房へと駆け込んだ
B:真意を問いただすべく、桜をルヴィアに任せ、士郎が厨房へと駆け込んだ
C:自らの言葉に押され、凛が厨房へと駆け込んだ

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最終更新:2006年09月11日 20:11