792 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/08/30(水) 04:14:23

天井近くから始まった掃き掃除も、この床掃除で終了となる。
掃除の間中ずっと考え、そして結論が出た。
「よし、トニオさんに弟子入り、とまでは行かなくても、簡単にイタリア料理について学べる事は学んでおこう」
料理のレパートリーが増えればきっとみんなも喜んでくれるだろう、最終的には。
そうと決まれば早速四人に話してこなければ。

「あー、みんな、悪いんだけど教会に行くのはもう少し後で良いかな?」
「? どうしたんですか? 掃除にもう少し時間がかかるとか?」
「いや、掃除はさっき終わったんだけどさ……」
少し躊躇いがちになるのは仕方がなかろう。
何しろ私用の極みと言うところだ、団体行動を乱すのはあまり誉められた事ではない。
「ここでイタリア料理の基礎だけでも勉強していこうと思って」
だからみんな反対するだろうけどここは少し我慢して貰って……
「あ、それなら私も学ぼうかしら」
「ええ、良い考えですわ」
「良い考えですね、賛成です」
「私も構いませんよ」
あっさりと承認された。
「……いや、良いのか?」
話的にも。


「ええ、これだけ美味しい料理ならば学んで損はないでしょう、淑女の嗜みは多く、かつ洗練された方が良いに決まっていますわ」
いつの間にか扇子のような物を取りだして笑うルヴィア、手袋と共に驚く程決まっている。
「言っちゃなんだけど、中華料理は医食同源だからね、デザートに彩りが寂しいと思っていたところなのよ」
顔を少し赤くして答える遠坂。
学ぶ気満々だ、例の豊胸効果のあるデザートを。
「料理のレパートリーが増えますね、トニオさんが師匠の師匠になっちゃいますけど」
「ええ、サクラ、料理の種類が増えて困る事はありません、私は待っていますが」
学ぶ意欲満々の桜と見守るライダーも依存はまるで無さそうだ。


話を切り出した時、トニオさんはいい顔はしなかった。
「ワタシにしてもまだまだ学ぶ事は沢山アルと思っていマス、ヒビ修行という奴でス」
しかし最終的には了承してくれた、基本的な事だけで良ければという条件付きだったが。

そこで掃除の後片づけの後、全員を招いてのイタリア料理基礎講習会が始まった。


結局。
朝一番でS市に来たというのに午前中は何も進展せず、昼食を食べ、トラサルディーを後にしたのは日も落ちかけた夕方であった。
トニオさんに全員で一例する。
「またドーゾー」
そう言って笑顔で見送るトニオさんの笑顔が特徴的だった。
そして頭の中にある事も「得したなぁ」という想いが大半を占めていた。


教会はトラサルディーからそう離れていない霊園の一角に建てられていると言う事だった。
「以外と、近いのね」
「以外と、というか、あそこからここまで建物が殆どありませんでしたよ?」
「あれでよく経営が成り立つわね……あれほどの腕ならば一度で終わりと言う事は無いでしょうが」
そう言いながら、霊園を歩く。
霊園の構造は一般的な物で、冬木の教会近郊とそう変わらないものだった。

教会の庭では、如雨露で花に水を差す黒服の神父の姿が見えた。
「……何かね? 冠婚葬祭の類では無さそうだが」
振り返りもせず声をかける神父、どうもまともな手合いでは無さそうだ。
「私は遠坂凛、冬木の管理人で、時計塔からの依頼で『聖杯戦争』参加の為の報告に来ました」
油断はしない。
何しろ冬木の聖杯戦争では神父が裏で大きく糸をを引いていたからだ。
故にライダーも実体化せず後ろに控えていた。
「……後ろの面々も同じ参加者と見て良いかね?」
「ええ、勿論、無関係の人間を巻き込むようなマネをしないのは魔術師の基本でしょう?」
「なるほど……」
納得したのか、もう一人の神父を呼ぶと、花の水差しを任せ、教会の中へ手招きした。
「あの花は日に弱い品種でね、昼に水を撒くとそれだけで葉が焼け付いてしまうのでな。
 だから日の落ちる寸前に優しく水を撒き、夜中に水を吸収させねばならない」
石畳の床を歩きながら、神父はそんな事を口にした。
「来たまえ、外で話をすれば日も落ちるだろう……それに、説明の前に見せたい物もある」
教会の中へ案内された。


そこで神父は
ト:沢山の人を見せつけた
ニ:とある箱を見せつけた
オ:聖杯を見せつけた

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最終更新:2006年09月11日 20:16