886 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/01(金) 04:58:45
運に恵まれぬ彼らに 勝利が続くはずはない
彼らは 時代が変わったことに 気づかなかった
敗戦を繰り返しては領土を失い 小国に戻りつつあった彼らは
比類無き工業力を養い それを武器に 世界に向かって 最後の戦いを挑んだ
彼らは猛々しく戦い 惨敗した
そして戦争が始まった。
現れたのは歩兵であり、戦車であり、機械化歩兵である。
それが意味するのは弾丸の嵐であり、押し潰す重圧であり、寄せ付けぬ弾幕である。
屠る刃であり、守る盾であり、電撃戦の立役者である。
その、前に立つ者全てを鏖殺する嵐の前に、ただ一人、女神が立つ。
「将軍<<ジェネラル>>……ッ!」
「ふふふ……正しいけれど、そんな呼び方はして欲しくないわね」
彼女は謳う。
「そうよ、彼は将軍、近代最大の愚者<<フール>>であり悪役<<ヒール>>、その印と義務を世界から貰い受けた人間よ」
サイレンが鳴る。
「サクラ! 避けなさい!」
見返す余裕すらなく、それでもライダーが叫んだ。
弾かれるように、三人を抱きかかえて士郎が飛ぶ。
避けると同時、飛び退くと同時に、地面に巨大な穴が穿たれた。
「ふぅん、知ってるんだ、賢いわね、えらいえらーい」
空に舞うは『悪魔のサイレン』と呼ばれた名機、『シュトゥー・カンプ・フォルクツォイク』と呼ばれた名機。
「その穴はラインだよ、お兄ちゃん他の人も、そこから出てきたら、容赦はしないから」
それだけではない、気付けば空は軍用機で埋め尽くされていた。
「これだけ見て、これだけ聞けば彼が何者かくらい分かるでしょ?」
その言葉に全ての人間が理解した。
彼の事は、教科書にも載っている。
彼の書籍と、彼に関する書籍は、簡単に一つの部屋を埋めるだろう。
彼に関連する書籍だけを集めれば、図書館の一つも出来るだろう。
それが彼の巨大さを意味していた。
「アドルフ・ヒトラー……」
「そうよ、彼は総統<<ヒューラー>>、世界にその運命を狂わされたバーサーカーよ」
兵が殺到する。
鎖と、その肉体でもって部隊ごと薙ぎ払う。
その強さは圧倒的だが、一団を払う間に、弾丸で体が削られていく。
構わず前進し、さらに弾丸で削られていく。
そうしなければ後ろの彼等が死ぬのだと、自分に言い聞かせるようであった。
出血で動きが鈍り、ますます兵隊が殺到する。
凛のガントによる支援にもまるで意味が無く、無き倒される数倍の兵が殺到していく。
『サクラ、宝具を使います、下がって!』
そうしなければ全員が殺されると、現実と認識が叫んでいた。
そう、この状況は断崖での圧倒的な逆風に似ていた。
力と気を抜けばすぐに死ねる。
適切な指向性を持って、最大の力で抗おうと、やはりただ死ぬだけかもしれないと言う意味で。
既に流した血が虚空に魔法陣を描き始める。
群がる歩兵を吹き飛ばし、圧倒的な魔力が彼女の流した血と魔法陣から溢れ出す。
それを阻むべく、上空から地上への掃射が行われ、弾丸が彼女の体に巨大な穴を開けていく。
歯を食いしばり、意識を保ち、展開を続ける魔法陣。
流れゆく血液と共に魔法陣の文字が太く、力強くなっていく。
同時に、彼女から力が失われていく。
ライダーの近くに、戦車砲弾が炸裂する。
そんな光景を見て。
「ライダァァァァ————!」
士郎が死地へと走り出した。
そしてその直後。
1:桜も死地へと走り出した
2:凛が虎の子の宝石を取り出し、走り出した
3:ルヴィアが魔具兵装を取り出し、走り出した
4:その場の全員が走り出した——
5:赤い侵入者が現れた
最終更新:2006年09月11日 20:20