968 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/03(日) 02:55:59
interlude——
月の美しい、明るい夜だった。
「何を言うべきかな」
「さてね、何も言うべきではないだろうな」
戦いは必然的だった。
二人は、巻き込まれた人間達ではなく、己の意志で闘いに身を投じていた。
故に、正面の"アレ"は殺すべき相手だ。
「ライダー!」
「バーサーカー!」
マスターの一喝と共に背後に控える二騎が互いに実体化する。
実体化と同時、二人は互いに踏み込んでいた。
数十メートルは離れていたであろう距離を一瞬でゼロにまで詰める。
ライダーは巨大なナイフを振り上げ、バーサーカーは巨大な戦斧を振り下ろす。
「……頑丈だな、そのナイフ、だが神秘さえないナイフがそう保つと思うな!」
「なるほど、以外と見る目はある、だがライダーは負けはせんよ!」
バーサーカーの連続攻撃を巧みな身のこなしとナイフ捌きで勢いを逸らしていく。
だが、体躯の大きさまではどうしようもなく、ライダーが僅かに蹌踉めき後退する。
「やれ、バーサーカー!」
戦斧が僅かに煌めく。
狂戦士の叫び声が夜闇を切り裂く。
ナイフを諸手に、渾身の力を持ってナイフを振り上げた。
その瞬間、ライダーの首筋目掛けて、戦斧が薙ぎ払われた。
「な……!」
咄嗟に、ライダーは左腕を犠牲に首への一撃を回避する。
「なるほど、狂戦士としてのクラス特性……パワーと耐久力に、宝具……首狩りの特性か、なるほどこいつは厄介だ」
愉快そうに笑う。
「ほう、余裕だな、バーサーカー、トドメをさせ!」
レイ・ラインを通じたマスターとの念話。
言葉は簡潔に完結する。
だが、それに応えるのもマスターの仕事だ。
「ライダー、"宝具の使用を許可する!" leuchten Sie bom!」
簡単な言葉と共に投げつけられる時限式閃光魔術。
地面に転がる塊は、術者のイメージその物である。
そして夜闇を切り裂く閃光は、マスターの視界を奪う事が目的だ。
バーサーカーに戦況分析能力はない、故に一瞬だけでも奪えばそれで良いとの判断だ。
閃光の中、バーサーカーは飛来した斧を弾き飛ばし。
同時に右脇腹を吹き飛ばされていた。
視界が戻り、二騎の姿を確認する。
そう思った瞬間には、ライダーのマスターは正体不明の宝具に搭乗して撤退してしまっていた。
「今日の所は痛み分けだぜ! アバヨ!」
轟音と声が高速度で遠ざかり、消え去った。
残されたバーサーカーとそのマスターは、悔しげに佇んでいた.
最終更新:2006年09月11日 20:22