221 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/07(木) 03:17:38

バーサーカーの振り下ろした巨大な断頭斧。
それは虚空で停止していた。
「どうした、バーサーカー、何故殺さない!」
バーサーカーのマスターが大声を上げる。
それに応じたのは落ち着いた声。
「なるほど、さすが狂っていても殺しのプロ、無駄な事はしない主義なのね、さすが死刑執行者<<ムッシュー>>」

「……固有結界?」
凛が呟き、その声に−バーサーカーのマスターさえも−振り返る。
キャスターの姿を見続けたのは、衛宮士郎だけだった。
「ああ……これってそんな呼び方あるの?」
そう、展開したキャスターさえも振り返っていた。
「……固有結界だと? 厄介な!」
いや、辻褄が合わない。
例え固有結界だろうと、バーサーカーの速度と力を『無駄な事』にするのは不可能だ。
仮にそんな事が可能だとすればバーサーカーという存在その物が崩れて消えてしまうはずだ。
そもそも固有結界に侵された現実が周囲の景色そのままというのは明らかにおかしい、アレは己の心象世界を写す物だ。

だが、その不可解な空間は現実を浸食する。
そして浸食しつつも、それはあくまで『そのまま』だ。


「さあ、どうするの?」
ゆっくりとバーサーカーのマスターに近付く。
緑のストールの留め金についた、赤い宝石が光る。
何の変貌もなく、現実が浸食されていく。
「チッ……引くぞ!」
苛立ちに声を荒げ、それでも迅速にマスターは去った。

立ち去っていくマスターに興味は失せたというように、キャスターに浸食された空間が戻っていくのを感じる。
「さ、貴方の家に帰りましょう?」
そう言って、まるで戦いなど無かったかのように、キャスターは笑顔を見せてくれた。
「あ……ああ、帰ろうか」
そうとしか応えられなかった。

222 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/07(木) 03:18:53

帰り道。
「なあ、キャスター、さっきのアレはなんだったんだ?」
「アレって?」
「良くは分からなかったけど、バーサーカーの動きを止めてただろ? それの事だよ」
「ああ、アレの事? んー……実は私もよく分かってないんだ」
そういってキャスターは笑ってごまかした。
「じゃあ貴方の宝具の能力と考えて良いのかしら? 貴女、見たところ魔術回路もなさそうに見えるんだけど」
続いて凛が聞いた。
「うん、私に魔術回路っていう類のはないかな、だって私ただの女子高生だからね」
「はー……それが英霊として、しかもキャスターとして召還されるんだからこの街の聖杯はホント意味不明だわ」
力は本物みたいだけどと呟いた声は、近くにいた彼女の妹にしか聞こえなかった。
「ではズバリ聞きますが、貴方の宝具の名称と、貴方の真名はなんなのですか? 差し支えなければ教えて頂きたいのですが」
聞いたのはライダーだった。
当然、それは全員の疑問だった。
「えーっと、こっちに来る前に教え込まれた話を考えるとそれは誰にも教えない方が良いって聞いたけど?」
うーん、と考えるように前髪を弄る。
その仕草は妙に子供っぽく、つい「若いなぁ」なんて事を考えてしまう。
「では名称は秘密と言う事で良いとしても、その緑色のストールが宝具なのでしょう? 隠しておいた方が良いと思いますが?」
「え? なくしたら大変でしょ、そんなコトしてさ」
どうも本当に彼女は英霊として異端らしいと、互いに目を合わせて確認した。
「次です、貴方はあのバーサーカーの真名を知っているように思えましたが、その事については?」
「知らないわ? 何故そう思うの?」
「確か……バーサーカーの事をムッシュー、死刑執行人と呼んでいたと記憶していますが、貴方と同時代の人物なのでは?」
「あはは、ギロチンとか斧で首落とすような時代にこんな恰好の女子高生が居たって話は聞いた事無いですよ?」
緑のストールが目を引く為分かりにくかったが、言われてよく見てみれば、彼女の白服とスカートはどこかの制服のようだった。
「では何故そう呼んだのです?」
「簡単よ、あの武器を見た事があるからよ」
「……生前に彼と闘った経験があると?」
「いえ、武器はアレを加工した物だったし、持っていたのは別人だったから……
 死刑執行人って呼んだのは本来の所有者だと思ったからよ」
「……本来の所有者とは?」
「ああ、それなら俺も大体分かった」
「シロウ? そうか、刃物の解析は得意なものでしたね」
「詳しい名前までは資料を調べないと分からないけど、多分あれはフランス革命期の死刑執行人だと思う」
「フランス革命期ですか?」
聞かれて頷く。
「呪詛か怨恨の類だと思うけど、そう言う物が刃に宿っていた、王族を処刑した経験のある、死刑執行人の家系の人物だと思う」
「つまり、パリの処刑人<<ムッシュー・ド・パリ>>と見て間違いはないと?」
「ルヴィア、分かるの?」
「ええ、欧州近代史は一般教養として学んだ経験がありますから」
「で、名前は?」
「シャルル・アンリ・サンソン、ムッシュー・ド・パリの4代目ですわ」



そんな物騒な話をしていた事もあった為、電車には乗らず、徒歩で衛宮邸に辿り着く。
そして
「な、なんだってー!?」
キャスターを除く全員が声を大にして叫んだ。

衛宮邸では

A:藤ねえが料理をして待ちかまえていた
B:藤ねえが生徒を呼び寄せ待ちかまえていた
C:藤村科の虎がネコ科の虎と闘っていた

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最終更新:2006年09月11日 20:28