563 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/12/07(日) 22:32:15
「どうしました? 顧問」
「え?」
突然、諜報部の部長に声を掛けられた瞬間、僕ははっと目が覚めたような感覚に襲われた。
「追悼式の場所に行くのではなかったのですか? 閣下も零観さんも、先ほどからそこで
ほうけておられましたが」
言われてそちらを見ると、確かにメディアさんも零観さんも足を止めていて、動く気配がない。
ついでに言うと式も同じだ。
「何か、夢を見ていたような気分だわ」
「キャスター殿もですか。拙僧もです」
夢にも色んな種類がある。良い夢、悪い夢。
メディアさんたちの見ていた夢はどんな夢なのだろうか。
「どんな夢ですか?」
「虎がヒロインになる夢ね」
「それは……悪夢ですね」
「……そう決め付けるのもどうかと思うけど、まあ一般的には悪夢ね」
虎がヒロインか。斬新だけど、どうなのかね。
「夢か」
「ん? どうしたの? 式」
式がぽりつと呟いたので僕は尋ねた。
「いや、オレも少しほうけていたみたいだ。変な夢を見た」
「へー。どんな夢?」
「幹也には教えてやらない」
式が見た夢に興味があったので僕は尋ねたのだが、式はあっさり駄目だと言う。
「えー。そりゃないよ。思わせぶりな態度をとって」
「幹也が勝手にそう思っただけだろ。大したことない夢だ」
そう言われると余計に気になるというものだが、これ以上追及すると式の機嫌を損ねそうだし、
何よりメディアさんにまた「いちゃついているんじゃないわよ!」と雷を落とされそうだった。
「じゃ、メディアさん、零観さん。今度こそ行きましょうか」
というわけで、メディアさんに何か言われる前に僕から動くことを伝える事にする。式は居残りなので、
この後、メディアさんに怒られる事もない。
式と離れる事はちょっと寂しいけど、当分一緒に柳洞寺で過ごすのだし、今は我慢の時かな。
でも、
「あ、式。糸くずがついているよ」
「ん?」
そう言って僕は式の頬を指差す。
「ああ、いい。動かないで」
式が乱暴に手で払おうとしたので僕は慌てて止めて、式の側にそっと近づく。
「ちょっと待ってね」
式の頬に手を当てて、糸くずを取る『ふりを』する。うん、糸くずなんて無いから。
「式、大好きだよ」
「な!?」
「ほら、取れた。じゃ、行って来るね」
僕は式が好きだから。どんな事があろうとも、この気持ちに嘘は無い。まあ、今朝の返事を何時聞けるのか
という不安はあるんだけど。
さて、メディアさんに怒られないうちに移動しましょう。
【選択肢】で、着いた追悼式の場所では
A:「そこの雑種、もっと丁寧に運べ!」
何故か、設営を仕切っているギルガメッシュの姿があった。
B:「駄目ですよ、お兄さん。もっと丁寧に運ばないと」
何故か設営を仕切っている子ギルの姿があった。
C:「そこの雑種、我(わたし)を馬鹿にしておるのか。もっと丁寧に運ばぬか!」
金髪で巨乳、だけど背はちっちゃい、どこかで見たことがあるような女の子が設営を仕切っていた。
725 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/12/13(土) 08:32:29
「そこの雑種、我(わたし)を馬鹿にしておるのか。もって丁寧に運ばぬか!」
仮の追悼式まで後10分をきった頃、追悼式の予定場所は静寂に包まれていたかというとそうではなく、
一人の女の子の陣頭指揮の下、柳洞寺の修行僧らが必死に設備を移動させていた。
金髪で巨乳、だけど背は小さく、どこかで見たことがあるような女の子。背は小さくとも、存在感は
大きく、仕切っていても不思議を感じさせない子だ。
「……あれ、誰でしょうか?」
「何を言ってるの。ギルガメッシュに決まっているじゃない」
「え? ギルガメッシュって、古代アルスター我様激辛麻婆帝国の国家元首のギルガメッシュですか?」
確かに金髪やら全身から湧き出るカリスマというかオーラというか、圧倒的な存在感は、かの英雄王
ギルガメッシュだと言われて納得のいくものであった。あったんだけど。
「でも、どう見ても女の子ですけど」
「ええ♪ いいわぁ。着せ替えして写真に撮りたいくらい可愛いわね」
僕の疑問もどこ吹く風。メディアさんにとっては些細な問題のようだ。
「む、ようやく来たか。稀代の魔女め。我を待たせるとは良い度胸だな」
「貴方が勝手に来たんだから、文句は言わないの。ほら、後で美味しい紅茶を入れてあげるから機嫌を
直しなさい」
「茶菓子は何だ?」
「贅沢を言うわねぇ。コンビニで100円で売ってるベビーカステラか芋けんぴくらいなら
あるわよ」
「我にそんな物を食わせる気か!
まあ、良い。どんな供物であろうと受け取るのが王というものだな」
口調とは裏腹に凄く嬉しいようで、ギルガメッシュ(?)は満面の笑みを浮かべている。
ベビーカステラに芋けんぴ、しかもコンビニで100円で売っている品か。メディアさんも、この
ギルガメッシュさんも結構庶民的な物が好きなんだな。
「それで、貴方は何をしていたの?」
「雨が降りそうな天気だというのに、屋根の無い所に設営しているから動かすよう指示を出したまでだ。
もうじき雨が降るぞ。大雨にはならぬが」
確かに昨夜から雨が降り出しそうとは思っていたが、今の天気はいつ降り出しても可笑しくない
空模様だ。本堂に移された設備を見ていると雨が降ったら大惨事になる事間違いない所で、
ギルガメッシュさんの指示も間違いなさそうだが、いきなり現れたギルガメッシュさんの指示に従った
修行僧も修行僧だと思う。
まあ、カリスマというか、あまりにも違和感が無く指示されたため、思わず従ったんだと思うけど。
「む、そなた始めてみる顔だな。名は何と言う?」
「僕ですか? 黒桐幹也と言います」
指を刺して僕に尋ねるギルガメッシュさんに対し、そう言って名刺を差し出す。
「伽藍の堂?」
「建設会社の名前です。本業はそちらなのですが、ここ暫くは柳洞寺にお世話になっておりまして」
柳洞寺諜報部の外部顧問である事は伏せた方が良いと思い、僕はそう答えた。
実際、ギルガメッシュ陣営と言えば、セイバー陣営と並ぶ冬木市の強国であり、そもそも冬木市で
戦闘が起こるきっかけを作った勢力である。
柳洞寺との仲は良くも無く悪くも無くと言った所だが、まあ、警戒した方が良い勢力であるのは
間違いない。今日は親密度が100でも、明日には0になっているような、そんな気まぐれな勢力でも
ある事だし。
「ふむ。気に入った。そなたに我の従者を務める名誉を与えよう」
「そのお言葉は嬉しいのですが……」
ちらりとメディアさんを見ると、にこやかに手を振って「いってらっしゃい」とサインを送っていた。
従者を務める名誉、と言っているが、端的に言えば接待しろ、と言っているわけで、それはどう
なんだろう? と思ったんだけど、どうやらギルガメッシュさんの機嫌を損ねないように相手をした方が
良いという判断のようだ。
メディアさんがそう考えるのであれば、僕に反対する理由はない。
「では、暫くお相手をさせて頂きます」
そう僕が言うと、ギルガメッシュさんはうむ、と機嫌良さそうに返事をした。
「しかし、よく分かりましたね。今日、ここで追悼式を行う事はどこにも言っていなかったんですが」
実施を決めたのは昨日で、柳洞寺のメンバーのみで実施する予定であったため、どこもにこの話は
言っていないはずなのだ。それにも関わらず、ギルガメッシュさんが来ている事に僕は驚きと不安を
覚えた。
情報が筒抜けになっている可能性がある、と思ったからである。
「我を甘く見るな。この冬木市の情報は全て我の手元に来るのだ。まあ、今回は別の理由だが」
そう言ってギルガメッシュさんは得意満々に胸を張る。張った瞬間にぷるんと揺れたが、
何が揺れたのかはノーコメントで。……ひょっとすると、してないんだろうか。いや、そんな所に気を
取られていると式に怒られるな。
「そなたらは読みやすい。贋作者(フェイカー)が亡くなったら我は祝杯を挙げるだけだが、そなたら
は追悼を行うと宣言した。ならば、表向きはともかく、実際には早いうちに行うだろうと、読んだだけだ」
「なるほど」
確かに、僕は零観さんらの動揺を抑え、浮かれた諜報部の頭を冷やすためにも早いうちに行う必要が
あると考えた。本格的な追悼式は招待状やら設営やらで無理だと判断しても、何とか早い段階で柳洞寺の
動揺を抑える必要があると判断して、今日の仮の追悼式を思いついた。
それに葬式はすぐに行うのが普通。ならば、最初の土曜日である今日、柳洞寺でアーチャーさん関連の
何かが行われると想像するのは容易いのだろう。
しかし、祝杯を上げるというのもどうかと思うが、この人らしいと言うべきなんだろうな。
「という事は他の陣営も?」
「そういう事だ。騎士王、いい加減に隠れていないで出てきてはどうだ? こそこそしているのが趣味では
なかろう」
【選択肢】
A:しかし、ギルガメッシュさんの声は辺りに空しく響いた。
B:「セイバーじゃなくて、悪かったわね」(遠坂凛の登場)
C:「隠れていたつもりはありませんが」(セイバーの登場)
739 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/12/13(土) 23:51:31
「という事は他の陣営も?」
「そういう事だ。騎士王、いい加減に隠れていないで出てきてはどうだ? こそこそしているのが
趣味ではなかろう」
そう高らかに声を上げるギルガメッシュさんであるのだが、誰も出てこない。
ギルガメッシュさんの声は辺りに空しく響いた。
「はは。セイバーは恥ずかしがり屋だからな。よい、許す。恥ずかしがらずに出てくるが良い」
「…………」
しかし、やはり誰も出てこない。
「セイバー、恥ずかしがる必要はないと言っておるだろう。早く出て来い」
でもやっぱり(以下略)。
「己、我を愚弄する気か! ならば、引き釣り出すまでよ。セイバー、あの世で後悔するが良い」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
いきなり空中から槍やら剣やら竹刀やらを引っ張り出したギルガメッシュさんを僕は慌てて止める。
「む、何をする」
「それはこっちの台詞です。何をする気ですか?」
いかにも心外だ、と言わんばかりの表情を見せたギルガメッシュさんに僕は反論する。
「決まっておろう。我が宝具にてこの辺り一体を耕してやろうというのだ。これなら、潜んでいる
セイバーも出てこざるをえまい。出てこぬのなら、我が宝具のサビとなるのだからな」
「ここは柳洞寺の敷地内です。ここ一帯を攻撃する事は柳洞寺に対する宣戦布告行為になります!」
「我は知らぬ。責任は全て潜んでいたセイバーにある」
僕が血相を変えているというのに、ギルガメッシュさんはまったく動じる事なく言い切った。
うん、確信した。この人、やっぱり暴君ギルガメッシュだ。可愛い顔に騙されると痛い目に合うな。
というか、誇らしげに張った胸はやっぱりぷるんと揺れて……。ごめん、式。和装はね、あの
隠している部分が良いと思うんだけど、堂々と晒している洋装も捨てがたいと思うんだ。
もっとじっくりとゴスロリ衣装を見ることができれば対抗できたと思うんだけど、あんまり
じっくり見る事ができなかったし。今度じっくりと見せてくれると嬉しいんだが。
「さて、では」
「それより急いで室内に入りましょう。そろそろ追悼式が始まる時刻ですし、雨が降る前に
入らないとギルガメッシュさんの従者である僕の立場がないです」
「従者の立場?」
従者の立場、という僕の言葉にギルガメッシュさんは首を傾けて考えてる。
「雨が降るからと設備を室内に移したのに、移させた本人であるギルガメッシュさんが雨に
濡れたら、ギルガメッシュさんを濡らした僕の立場が無いとは思いませんか。
申し訳ありませんが、ここは室内に入っていただけないでしょうか」
言うまでも無く、僕の本音はここでギルガメッシュさんに暴れられると困る、というものだ。
現在の柳洞寺は遠坂凛の暴走すら恐れている状態であり、遠坂陣営より強敵である
ギルガメッシュ陣営と交戦する事はほとんど悪夢だ。理由は遠坂陣営の積極的攻勢を恐れている
のと同じで、例え撃退した所で、国力を疲弊すれば他の陣営に対して圧倒的に不利になるからである。
ギルガメッシュさんがここで暴れれば、柳洞寺はギルガメッシュ陣営に対する宣戦布告や
それに類する行動を余儀なくされる。それは何としても防がなければならない。
……何で僕がそんなに気を使わないといけないのか、と思わないでもないが。
「ふむ。確かに従者に恥をかかせるわけにはいかぬな。それに」
ギルガメッシュさんがそう区切ると、ぱらぱらと雨が降ってきた。
「すでに降り始めたようだ。急ぐか」
「はい」
こうして、ギルガメッシュさんの暴走行為を何とか止めた僕は、大きく安堵の息をつきながら、
追悼式の場所へ急いだのである。
……はいはい。走ると凄いね。
(独立宗教法人柳洞寺、第6ターンです)
イベントが発生しました。
柳洞零観、柳洞一成:仮の追悼式について
閣下、柳洞零観、一成の両幕僚から仮の追悼式が無事に終了した事について報告がありました。
あくまで仮の追悼式でありますが、アーチャー氏の魂も慰められた事と思います。
また、正式な追悼式を2ターン後の第8ターンの土曜日に行い、全ての中立組織と他勢力について
招待状を出したいとの要望も出ております。なお、予算は追悼式の際の見舞金で十分賄えるものと思われます。
このイベントを実施した場合の変動はありません
日程を変更した場合の変動は以下の通りとなります。
人材:柳洞零観、柳洞一成が第8ターン終了時まで行動不能となり
追悼式実施ターンまで戦闘に参加できません。
追悼式を中止した場合は以下の通りとなります。
人材:柳洞零観の不満度+10
柳洞一成の不満度+10
柳洞零観、柳洞一成が第8ターン開始時から行動可能となります
中立組織:ス○ス銀行深山支店を除く全ての中立組織の親密度-20
他勢力:アインツベルン第三帝国の親密度-20
(選択1)追悼式をその日に設定しますか?
Y-1/その日で結構
Y-2/いや、<>ターンにするべきだ
N/仮の追悼式で十分なはずだ
(選択2)招待状はどうしますか?
Y-1/全ての中立組織と他勢力について出す
Y-2/<>を除く全ての中立組織と他勢力について出す
N/広報を通じて追悼式を行う旨を発表し、参加は自由とする。招待状はどこにも出さない
ギルガメッシュ(女性):喜べ、褒美を取らせる
閣下、古代アルスター我様激辛麻婆帝国から資源と手紙が送られてきました!
添えられた手紙には褒美をとらせるとのみ書いてあります。
なお、黒桐幹也氏宛にも手紙が送られてきましたが、検閲した両儀式によりビリビリに破かれたため、
内容は不明であります。
そのまま送り返す事も、使者つきで送り返す可能ですが、いかがいたしましょうか?
なお、使者は気に入られている黒桐氏が適任だと思われます。
このイベントを実施したによる変動は以下の通りとなります
資源を受け取った場合
資源+100
他勢力:古代アルスター我様激辛麻婆帝国の親密度+10
資源をそのまま返却した場合
他勢力:古代アルスター我様激辛麻婆帝国の親密度-20
黒桐幹也を使者にして返却した場合
他勢力:古代アルスター我様激辛麻婆帝国の親密度+10
人材:黒桐幹也が一週間ばかり古代アルスター我様激辛麻婆帝国に軟禁されます。
人材:両儀式の機嫌が物凄く悪くなります
(選択3)資源を受け取りますか?
Y:接待に対する正当な対価だ
N-1:理由も無く資源を受け取る事はできない
N-2:黒桐氏に頑張って事を荒立てないようにしてもらおう
N-3:いっそ、黒桐・式の両名を使者として送る?
781 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/12/15(月) 23:29:50
降り出した雨はアーチャーさんを慕う者たちの涙雨だったのだろうか。
仮の追悼式は何の問題もなく始まった。。
袈裟を着た零観さんがお経を唱え、アーチャーさんの冥福を祈る。零観さんの隣には
やはり袈裟を着た一成君の姿があり、彼も一生懸命に手を合わせ、祈っている。
僕の横にはつまならそうに、だが決して顔を俯かないギルガメッシュさんが居て、僕の前には
メディアさんと葛木さんがいて、二人とも手を合わせてアーチャーさんの冥福を祈っている。
僕も手を合わせているので、手を合わせていないのはギルガメッシュさんだけ、という事に
なるが、血が出そうなくらいきつく手を握り締めているから、気持ちは十分伝わっているだろう。
『黒桐殿。彼は最強のサーヴァントだった』
ふいに、僕は佐々木さんのあの言葉を思い出した。
最強のサーヴァント。この言葉がリップサービスでないのなら、佐々木さんは何を持って
アーチャーさんを最強としたのだろうか。
仲間二人を逃がすためにその身を犠牲にした彼の生き様なのか、それとも佐々木さんを重傷に
追い込んだその強さなのか、それともその両方なのか。
生きていて欲しかったと思うのは、アーチャーさんを消滅させた側に所属する人間の思う事ではない
と思いつつも、僕を始めとする皆の思いだろう。ひょっとすると、アーチャーさんを消滅させた
佐々木さんが一番その思いを持っているかもしれない。
ふと隣を見ると、顔を上げているギルガメッシュさんがそろそろ限界を迎えそうだった。
(ギルガメッシュさん、目やにがついてますよ)
(む、そうか)
(今拭きますので、顔をそのままにしてください)
小声でギルガメッシュさんに告げて、僕はハンカチを取り出してギルガメッシュさんの目の辺りを
拭く。
少なくとも今は文句なしの美少女であるギルガメッシュさんに目やになどと言うのはどうかな、
とも思ったんだけど、素直に従う辺りはギルガメッシュさんも自覚しているのだろう。
ギルガメッシュさんとアーチャーさんの関係は僕にはよく分からないのだが、セイバーさんとは
また違った何かがあったんだろう。そうでなければ、わざわざ柳洞寺まで来る事はないだろうし。
それでも「祝杯を上げる」と言う辺りは素直じゃないというか、何と言うか。
「では、献花を」
零観さんのその言葉に促され、まずは葛木氏が献花を行う。次はメディアさん、その次が
ギルガメッシュさんでその次が僕、そして一成君、零観さんが献花を行い終了となる。
いつものスーツ姿で黒いネクタイをつけた葛木氏は、やはりいつも通り背筋をぴんと伸ばし、
献花を行う。それはどんな時でも手を抜かない、葛木氏らしい姿だと僕は思った。
続いて献花したメディアさんもいつもの服装。良いのかな、と思ったが、遺族以外は地味な
平服で良いそうだ。もっと言えば、元々は一張羅であれば晴れ着のようなものでも良かったらしい。
とは言え、「元々は~」と言った所で今は今だから、誤解を招かない服が良いだろう。
……良いのだろうけど、隣に似合っているのか似合っていないのか、ふわふわドレスを着込んだ
ギルガメッシュさんがいるからなぁ。うん、ギルガメッシュさんが参加する事が分かっていたら、
式もあの姿で参加して良かったんじゃないのか、と思わないでもない。ゴスロリは死神を
イメージするので、冠婚葬祭のどれもあまり宜しくない気がするのだが。
そのギルガメッシュさんは自信満々にバラ、それも真っ赤なバラを献花する。
僕がそれは無いんじゃないのかな、という表情をしていると、ふん、雑種には分かるまい、と
自信満々な、でも少し悲しそうな顔をした。言わなければ分からないんだけど、言わなくても
分かって欲しいんだろう。
自信満々に見えるギルガメッシュさんだけど、案外、寂しがり屋なのかもしれないな。
僕は無難に零観さんが用意された蓮華を献花し、一成君がそれに続く。最後に献花する
零観さんも当然蓮華なので、ギルガメッシュさんが献花したバラは浮く事になる。
しかし、
「ふん、分かっておるではないか」
順番からも性格からも、真ん中にギルガメッシュさんが献花したため、真ん中に真っ赤な
バラがあって、その周囲に白い蓮華があるという見事な構図となった。
現世でのアーチャーさんを表す真っ赤なバラ、そしてあの世と来世での幸福を祈る真っ白な蓮華。
それは、やはりアーチャーさんの追悼に相応しいものに僕には思えた。隣にいて、笑みを浮かべる
ギルガメッシュさんの顔が今度こそ、自信に溢れたものであった、というのもあるのだけれど。
「さて、本日は仮の追悼式であるのでここまでです。正式な追悼式は再来週の土曜に実施したいと
思いますが、如何でしょうか?」
献花の後、零観さんが再びお祈りを捧げて、仮の追悼式は終了となった。
全員に向って如何でしょうかと聞いてはいるものの、実際に回答する権利があるのはメディアさん
だけであり、零観さんもメディアさんに向って聞いているのだろう。
「うむ。そのように進めよ」
しかし、ここにはそういう空気をまったく読まない人物がいた。
「ま、それで特に問題があるわけではないからそれでいいわ。じゃ、貴方にも案内状を出すから、
必ず参加しなさいよ」
「無論だ。香典を楽しみにしておけ」
軽くため息をつくメディアさんに、相変わらず自信満々のギルガメッシュさん。一体どこからそんな
自信が沸いて出るのか、本当に不思議だ。
「もしよろしければ、これからお食事を用意いたしますが」
僕たちだけであれば、この後は通常業務となるのだが、ギルガメッシュさんが参加していたためだろう。
零観さんはギルガメッシュさんを食事に誘った。
何故だか分からないのだけれども、日本では葬式の後は大宴会というのが定番になっている。
それに従い、ささやかながら食事の場を設けようという事なのだろう。
「いや、よい。今日はこのまま帰る事にする」
「じゃ、階段の下まで見送りますね」
僕がそう言うと、ギルガメッシュさんは当然であろうという顔をするが、その顔が一方では
尻尾があれば、猛烈な勢いで振っているように見えたので困る。
僕が好きなのは式で間違いないんだけど、後輩とかでこういう子がいたら可愛がったに違いない。
あれ? でも、本当は男性だよな?
「どうした?」
「いえ。雨で滑りやすくなっているので注意してくださいね」
「雑種、我を見くびるな。この程度の雨で滑って何が英雄か。我を滑らせたければ、これの三杯は
持って来いというものだ」
三杯ではなく、三倍だろう、と思ったが、僕は何も言わなかった。かわりに、ぽんぽんと頭をなでる。
子ども扱いするな、とギルガメッシュさんは手を払うが、その怒った顔もまた可愛くて……って、
だから僕には式がいる、というのに。
ぶんぶん、と顔を振って雑念を振り払い、僕はギルガメッシュさんの手をとって、境内を出た。
そのちっちゃな手が、節くれだった十分過ぎる鍛錬を積んだ人間の手である事に少し驚きを覚えつつ。
とは言え、
「すいません、メディアさん」
「魔女よ。我の着替えを所望する」
「はいはい。そんな事だろうと思ったわよ」
それから5分後、滑りやすくなっているから気をつけてと言ったにも関わらず、「我を見くびるな」と
下を見ずに石段を降りようとして、一段目から踏み外して泥まみれ、濡れ鼠になったギルガメッシュさんが
そこには居たのだが。
あと、何でそこだけは汚れないでしっかり透けるんですかね。
それとこけて不安になったせいもあるんでしょうが、しっかり腕を抱えるのはやめて欲しいんですが。
【選択肢】ギル子の着替え
A:「とりあえず、僕の服で我慢してもらえますか?」(黒桐の服)
B:「じゃ、この服なんてどうかしら」(キャスターの用意した服)
C:「ふむ。この服はどうか」(葛木氏の用意した服)
791 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/12/16(火) 18:46:50
閣下のセンス炸裂したロリロリとした服を着たギル様が見たいです……!
我様だから金糸雀にしようかなぁ、と思ったんだが、せっかくなので、選択肢を追加。
【選択肢1】キャスターの用意した服装とは?
A:黄色のベビー服にオレンジ色のドロワーズ。小物で日傘
B:紐ビキニ
C:胸元の真っ赤なリボンが特徴的なピンクのベビードールのような服。小物はリボン
D:紫のドレスに薔薇のようなロングスカート。小物は眼帯。
E:式が着せられているのと同じ服
【選択2】採用するかどうかは未定だけど
F:せっかくだから俺は【 】を主張するぜ!
5票入ったのは当然として、Fでネタにできそうなのがあればそれも使いたいかな、と
こんな投票でした
|
+
|
... |
792 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 18:50:14
F:せっかくだから俺は【 純白のウェディングドレス】を主張するぜ!
地雷を敷設してみる。
793 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:01:06
F:せっかくだから俺は【エプロンドレスで不思議の国のギル様風】を主張するぜ!
794 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:03:26
F:せっかくだから俺は【闘魂ムーン仕様のコスチューム】を主張するぜ!
795 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:05:19
F:せっかくだから俺は【ツインテールとニーソックス】を主張するぜ!
服の為に髪型までこだわる、それが俺のジャスティs
うわなにするやめ
796 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:08:02
F:せっかくだから俺は【姫騎士装備(セイバーリリィ風】を主張するぜ!
797 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:26:36
どいつもこいつもwwwwwwwww
798 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:31:49
B:紐ビキニ
Fのどれかになるのかもしれないが、選択1と2とあるのでこちらにも。
これなら、まず着替える事になるだろうしw
799 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:36:12
なんで不人気やツンデレ、男装の衣装はないのに紐ビキニがあるんだ?
800 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:38:10
なんてこったい!カナだったなんて!カナ!カナ!
A:黄色のベビー服にオレンジ色のドロワーズ。小物で日傘
もいいけど
F:せっかくだから俺は【姫騎士アンジェリカ風】を主張するぜ!
ののしって!ギルさま!
801 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:43:52
B:紐ビキニ
802 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 19:54:18
F:せっかくだから俺は【清楚なブラウス 1 枚 だけ】を主張するぜ!
803 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/12/16(火) 20:06:14
思った以上にFに集中したので、投票はここで終了にします。つーか、A~EはBが2票だけとは(苦笑)。
799
当初、紐ビキニ→カナの衣装の予定だったので。あと、赤は遠坂のイメージが強かったため、
翠と蒼はその姿の我様がイメージできなかったのでです。翠の子も蒼の子も嫌いじゃないですよ。
804 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/16(火) 20:09:34
いつぞやのFFの投票を見ているようだったw
|
870 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/12/19(金) 22:37:03
「じゃ、この服なんてどうかしら?」
そう言ってメディアさんが出したのは、清楚な白いドレスとそれと一帯となった白銀の甲冑。
そして、黒いリボン。
某ゲーム風に言うならば、白銀の胸当て(ドレス付き)、白銀の篭手、白銀のブーツ、黒の
リボンと言った所か。うん、一体どこから出してきたんだろう? まあ、メディアさんなら
何も無い所から出しても不思議じゃないけど。
「ふむ。確かに純真な我に白は良く似合うな。魔女よ、褒めて使わす」
「ええ。他にも衣装はあるけれど、まずはこれをね。
それじゃ、今からお風呂を沸かすから、暫く待っててくれるかしら」
そう言うと、メディアさんはにんまりと笑みを浮かべる。
その笑みは式の着替えを断った時と同じもので……はっきり言って怖い。どうやら、ギルガメッシュ
さんも式と同じく徹底的に遊ばれる運命にあるようだ。
だが、そのメディアさんの笑みは瞬時に凍りつく事になる。
「キャスター。寺の風呂は夜と決まっている」
「そ、宗一郎様、申し訳ありません!」
メディアさんの旦那さんである葛木氏のこの言葉は、普段どおりの冷静なものであったけど、
それだけにメディアさんには強烈であったようで、今にも泣き出しそうな顔になっている。
「いや、宗一郎殿。客人に湯を振舞うのも寺の勤め。客人を汚れたまま帰すのは、柳洞寺の
名折れですぞ」
しかし、間髪入れず、零観さんがフォローに出た。
柳洞寺の風呂は昔懐かしい薪を使って湯を沸かすタイプで、これは時間がかかるが大量の湯を
一度に沸かすのは向いているものだ。
ただ、時間をかけて一度に大量の湯を沸かすという事は、少量の湯を沸かすのには向いておらず、
また二度三度沸かすのにも向いていないという事である。
だから、葛木氏は風呂を沸かすと言ったメディアさんを注意したわけだが(実際はどうあれ、
葛木夫妻は柳洞寺に居候している身分であるという事もあるだろうし)、そこは零観さんが素早く
フォローを入れた。
メディアさんの判断はルールから逸脱したものではなく、正しい判断に基づくものです。
宗教法人としての柳洞寺のトップ代理である零観さんがそう断言する事で、風呂を沸かすという
行為がメディアさん個人の行動ではなく、柳洞寺という組織の行動となり……最も単純に言うと、
「メディアさんは間違った行動をしようとしたわけではありませんぞ」と葛木氏に伝えようとした、
というわけである。
「すまん、キャスター」
「いえ、宗一郎様に謝って頂く事ではありません! 出すぎた真似を」
葛木氏に言われた時のメディアさんは一瞬で顔面蒼白になり、ぶるぶると震えていたが、
零観さんの言葉を受けて顔に赤みが刺し、そして今は葛木氏から優しい言葉をかけてもらった事で
歓喜のあまり震えているメディアさんというのは、本当に分かりやすい。
しかし、メディアさんの葛木氏への依存度は異常だな。その姿をギルガメッシュさんに見られたのは、
まずい気がする。
「黒桐、寒いぞ。湯を所望する」
そんな僕の心配を他所に、ギルガメッシュさんはそんな事を言ってくれた。
まあ、実際あの服で濡れ鼠になると、体は重いは、服が肌にひっつくわで大変だというのは分かる。
「体を拭くくらいのお湯を沸かすのなら10分ほどで出来ますが。それで良いですか?」
「うむ。よきにはからえ」
ギルガメッシュさんからの返答を聞くと、僕は振り返らずに厨房の方に急ぎ足で向う。
ギルガメッシュさんはギルガメッシュさんで大変なんだろうと思うのだが、僕は僕で大変なので
ある。彼女は見た目どおり無邪気で、好奇心旺盛で、大げさなジェスチャーをして……。その一つ一つは
悪くないのだが、その行為、一つ一つで揺れるのである。
しかも、雨で透けていて、薄桃色のとがったものが認識できるのである。
なお、何が、とは聞いてはいけない。
昨晩、織に興奮させられ、今朝は式に興奮した僕は、今、ギルガメッシュさんによって混乱させられている。
彼女が無邪気に僕に飛びつく度に……まあ、それ以上のコメントは差し控えさせて欲しい。
慕われるのは嬉しいんだけど、もうちょっと考えて欲しいものだ。
そう思いながら、僕は厨房に急いだのである。
【選択肢】厨房では
A:「あれ? 黒桐。どうしたんだ」
式が丁度お湯を沸かしていた。
B:「遅いぞ、雑種」
何故か、ギルガメッシュさんが待ち構えていた。
C:「げ、黒桐の旦那!」
何故か、楓ちゃんが戸棚からお菓子を漁っていた。
912 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/12/21(日) 10:48:16
「……一体何をやっているのかな? 楓ちゃん」
「げ、黒桐の旦那!」
ギルガメッシュさんから逃げるかのように(というか、実際逃げたわけだが)移動した僕が厨房で
見たのは、戸棚を漁っている楓ちゃんこと蒔寺楓の姿だった。
「何で旦那がここに!?」
「何でって、三枝さんから聞いてないの? 今週の頭から柳洞寺に雇われているんだけど」
うろたえているのに、口に加えたどら焼きを離さない辺り、やっぱり変わっていないな、と
ほっとしたような呆れたような感じで僕は答えた。
楓ちゃんは式と並ぶくらい由緒ある家柄の子で、呉服屋「永鳥庵」(えいちょうあん)の一人娘である。
今もそうだけど、式は昔から和服で過ごしていて、当然というかこの辺で一番大きい「詠鳥庵」は
両儀家の御用達の呉服屋になっている。式も幼い頃から何度となく買いに行っており、自然と二人は親睦を
深めたそうだ。
式も楓ちゃんも普段は着物を着ていたから、その辺りで話が合ったというのもあると思う。
もっとも、式は「(蒔寺さんは)私はお高く止まっていているから、嫌いだそうよ」と言っていたし、
織も「オレの事は姐御と言って慕ってくれるんだけど、式がどうも苦手みたいでなぁ」と言っていた辺り、
色々あったんだと思う。
とは言え、織を知ってからは式ともそれなりに付き合うようになり、何より織が楓ちゃんの事を
気に入っていて、二人で遊びに行く事もあったそうだ。
僕が引っかきまわされた織を楓ちゃんはさらに引っ掻き回しており、織をして「あれには勝てない」と
言わしめたのが楓ちゃんである。
まあ、その姿は容易に想像できるのだけれども。
僕と楓ちゃんも式を通じて、というよりは式の家令である秋隆さんに無理やり永鳥庵に連れて
行かれたのがきっかけで、知り合った。
ちなみに初めて会ったときに印象に残っている姿は屋号を「エイドリアン」と読んだ僕にいきなり
蹴りをかます姿と、その後、親父さんに鉄拳制裁を喰らう姿である。
永鳥庵が「エイドリアン」と読める事、そしてよく人にそう読まれる事は相当気にしているらしく、
今でも「エイドリアン」を読んだお客に「『えいちょうあん』だ!」と言い返す事は多いらしい。
なお、親父さんの鉄拳制裁は僕に対して蹴りをかました事ではなく、僕を見て「式嬢に男が出来た!」と
騒いだ事が主な理由だそうだ。
和服で物静かな女性に育っても可笑しくなかった楓ちゃんが、こういう活発過ぎるくらい活発な子に
育った理由は、ほぼ間違いなく親父さんの教育方針にあると思う。
まあ、それでも考えてみれば、僕より先に式と織の事を知っていて、それでも接する態度が変わら
なかったのも楓ちゃんなのである。物怖じしないというか、重要な事を重要だと感じる感性が鈍いと
いうか。
そんな性格も親父さんの教育の賜物と言えるだろう。
なお、僕を旦那と呼ぶのは「式の旦那だから」だそうだ。僕のことを旦那という度に物静かで冷静な
式の顔が歪むのが面白かった、僕の事を旦那と言った際の織の笑いこける顔が好きだったそうで。
やはり良い性格をしていると思う。
「そう言えば、黒桐の旦那が柳洞寺諜報部の顧問になったとユキカが言っていたような。しかし、アタシには
関係ない事だぜ!」
そう言って、何が楽しいのか自信満々で握りこぶしを見せる楓ちゃん。口にどら焼きを加えたまま
器用に話すもんだなぁ、と思う。
というか、物を食べながら話すのは行儀が悪いと習わなかったのだろうか。親父さんにばれたら、
また鉄拳制裁を受けるぞ。
「じゃ、何で楓ちゃんがここに要るのかな? その服を見る所、学校帰りか何かだと思うんだけど」
楓ちゃんの服装は通っている穂群原学園の制服で、永鳥庵での和服姿しか知らない僕には意外な姿に
見えた。
考えてみれば、学生なんだから制服があって不思議じゃないし、霧島さんたちも休みにも関わらず、
制服で過ごしていたりするんだけど。
「旦那には分からないだろうが、これはアタシの戦闘服なんだぜ! 今のアタシは超絶美人戦闘員の
蒔寺楓。柳洞寺に侵入し、柳洞寺に損害を与え、そして去っていく。まさに完璧だぜ!」
「で、その手始めに、柳洞寺の厨房に損害を与えようとした、と」
「おうよ!」
僕の呆れた返答に自信満々に答える楓ちゃん。
……式が意識不明の重体に陥った時の取り乱した姿も知っているし、昏睡期間中も頻繁にお見舞いに
行っていたのも知っている。式の意識が戻って一人暮らしを始めた際に何かと遊びに行こうとしていた
(式が色々と理由をつけて断ったんだけど)のも知っているんだけど、こういう子でもあるんだよなぁ。
式が自分の目の事を楓ちゃんに言わないのは、警戒されるからではなく、嬉々として色々と聞いて、
騒いでとするのが目に見えているからだろう。
「本当に? 僕には、侵入したのは良いけれど何をすれば良いのか分からなくて、とりあえず
うろうろしていたら厨房に着たらどら焼きがあったんで食べて、美味しかったので他にも無いかと
探っていた所に見えるんだけど」
「違うね! アタシの狙いは始めから厨房さ。ここの食料を食い尽くせば柳洞寺は食料不足で困る、
アタシは腹いっぱい飯が食えて喜ぶ。まさに一石二鳥の大作戦だぜ!」
このどら焼きは茜丸の良い物だ、とまたも自信満々に答える楓ちゃんを見て、ちょっと頭が痛くなる。
何でこの子は一人で柳洞寺の食料を全部食べつくせるとか考えるんだろうか。ここで何人が
生活しているのかちゃんと理解しているのかどうか不安になる。
初めて会った時から、予想の斜め向こう、道のない所にあえて突き進む子ではあったんだけど。
敵にするとやっかいだが、味方に回すと恐ろしい。それでいて、指揮官としては無能でないのが困る所だ。
また個人戦でも中々強い。昔の話の恐縮だが、蒔寺家に代々伝わるという伝説の槍で、式を相手に一歩も
引かない戦いを見せていたと言うから、槍術はかなりの腕だと思うし。
「うん。とりあえず住居侵入、窃盗の容疑で拘束するね。あと、敵対している組織に対する侵入だから、
拘束後は捕虜として丁重に扱う事も約束するよ。弁護士を雇う権利も黙秘権もないけれど。
ちなみに、逃げたら問答無用で警察に連絡するから」
「へへん、アタシがそんな脅しに屈するとでも思ったか。さらばだ、明智君!」
そう言って楓ちゃんは、どこからともなく煙玉を出してきて、床に叩きつけて炸裂させた。
この煙玉で厨房はあっという間に煙だらけになり、まともに見えなくなる。しかし、出入り口は
一つなので、そこで待ち構えれば逃げ出すことはできないはずだ。
……普通であれば、だけどね。
【選択肢】マキジの行動を読もう(マキジがその通りに行動するというわけではない)
A:ガラスを破って逃げる
B:床下に抜け穴があり、そこから逃げる
C:見えないのを良いことに戸棚を漁り続けているはず
D:お菓子を持って瞬間移動
最終更新:2009年03月22日 21:50