522 :銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/12/20(土) 20:00:50
「あれ?」
慎二と連れ立って居間に向かったのだが。
そこでは、なにやらおかしな人だかりが。
「……みんな、何やってるんだ?」
三枝さん、蒔寺、雛苺、ランサー、あと青い服のドール。
全員が居間と廊下を隔てる障子戸にひっついていたのだ。
……傍から見てると凄い絵だ。
「あ、衛宮君」
「おっ坊主。
いいところに来たな」
「え?
いいところって、なにがさ」
ランサーの言葉に、思わず眉をひそめる。
やってきていきなりそんなことを言われても、意味が分からない。
「まあまあ、お前もこっちに来てみろって。
ほれ、ここから覗けるぞ」
促されるがままに、居間に近寄る。
見れば、障子には少しだけスキマが開けられている。
どうやら、みんなはここから居間の中を覗いていたらしい。
「……?
一体なんだってんだ?」
居間の中に、何か面白いものでもあるのだろうか?
そう思いながら、障子戸を覗き込もうとして……。
『うふふふふふ』
『くっくっくっくっ』
「…………」
部屋の中からなにやら笑い声が聞こえてくる。
それも、決して和やかじゃない類の。
聞こえてくる笑い声は二つ。
かたや俺と契約した薔薇乙女(ローゼンメイデン)、水銀燈の声。
かたやたった今一緒に帰ってきたばかりの氷室の声だ。
「……こ、これは一体……?」
なんで居間からこの二人の不穏な笑い声が聞こえてくる?
一体、俺が土蔵に向かっている間に何があったって言うんだ?
「……だからぁ、何度も同じことを言わせないでくれるぅ?
私のミーディアムなの。
契約者なの。
下僕なの。
貴女が介入する余地なんて無いってことが分からないのぉ?」
「いやいや、おかげで理解できたとも。
君との関係にあれこれ口出しするつもりは毛頭ないさ。
だが、君のほうこそ、男女の関係にまでは口出しはしまい?
私が言いたいのは、つまりそういうことさ」
「お馬鹿さぁん、下僕の身の振り方は主人が決めるのよぉ。
そしてぇ、私の下僕は死ぬまでずぅっと私の傍に居るの。
これは契約が行われた時から決められている掟なのよ」
「薔薇の契約というやつか。
だが、どんな法であろうとも人の心まで縛ることは出来ない。
それを無理に抑圧しようとするのはどうかと思うがな。
あまり我侭ばかり言っていると底が知れるぞ、薔薇乙女殿?」
「……うふふふふふふ。口だけは達者ね、人間(ヒューマン)」
「くっくっくっくっく。君ほどではないさ、人形(ドール)」
――障子を閉める。
正直、これ以上聞いていたら嫌な汗だけで脱水症状を起こしそうだ。
隣では、ランサーがニヤニヤと笑っている。
く、こいつ絶対他人事だと思って楽しんでやがる……!
「どうだ?
状況は把握できたか、坊主」
「……おおむね」
二人の会話から、なんとなく事情は察した。
ならば、俺の採るべき道は決まった。
「おい衛宮、なんで無言で踵を返して玄関に歩いていこうとするんだい」
「すまない慎二、俺はもう帰らせてもらう」
「ここじゃん」
なんだか今日は慎二のツッコミが冴えているような。
いや、いいからホントに帰らせてくれないかなぁ無理だろうなぁだってランサーが俺の肩をがっしり掴んでるもん。
「そんじゃ、理解してもらえたところで、次のステップだ。
坊主、二人の『話し合い』に乱入して来い」
「はぁ!?
いやいやいやいや無理だからそんなの!
いいか、開けるなよ! 絶対に開けるなよ!? 振りじゃねぇぞ!!」
「はっはっは、だが断る。
お前も男なら覚悟を決めろよ、ホラ行けっ!」
「ちょ、まだ心の準備がっ!?」
俺の制止も聞く耳持たず、ランサーは勢いよく障子戸を開け放ってしまった。
そして、俺を居間の中へと無理やり押し込む。
「ひっ!?」
途端に、こちらに集まる二人の視線。
先ほどまでの笑い声も、ぴたりと止まった。
後ろでは、障子戸が再び閉じる音。
……ランサー、覚えてろ。
後で絶対カレンにあること無いことチクってやる。
「……あらぁ、士郎」
「衛宮か、遅かったな」
当然、そこに居たのは、水銀燈と氷室だった。
二人ともテーブルを挟んで、対面で向き合って座っている。
いや、それだけなら普通だ、普通なんだけど。
「あ、ああ、お待たせ。
えっと、二人とも、なにか話を……?」
勇気を出して尋ねてみると、二人は互いに申し合わせたかのように、同時に頷いた。
「いや、今ちょうど衛宮の話をしていたところだ。
なあ、銀の字?」
「ええ。
ちょっと込み入った話だったから、きちんと話し合ってたのよぉ。
二人で、じっくり、きっちりと……ね? 鐘?」
ね、と互いに微笑を交わす二人。
へー、ふたりともいつのまにかなまえでよびあうくらいなかよしになったのかー。
って、いやいや騙されないぞだって目がちっとも笑ってないじゃん二人とも!
「ま、士郎も来たことだしぃ?
ここからは士郎も交えて三人でお話しなぁい?」
「そうだな、それがいいだろう。
衛宮にとっても大切な話だろうからな……将来的な意味で」
「しょ、将来的……ですか?」
俺、なぜか敬語。
ちなみにとっくの昔に正座スタンバイ。
「そうねぇ……まず最初に聞いておきたいんだけど……」
水銀燈が、じっ、と俺を見つめてくる。
「士郎。
貴方は、私の契約者よね?」
「え?」
思いもよらない質問がやってきた。
俺が、水銀燈の契約者かだって?
「あ、当たり前だろ。
最初に会ったときから、俺は水銀燈のミーディアムだ」
「……そう」
「待て。
衛宮、私からも聞きたいんだが……」
続いて、氷室が俺に詰め寄ってくる。
ううっ、いつもと迫力が違う……。
「私と君は、その、恋人同士になったのだよな?」
ちょっと頬を染めながら、それでも毅然と尋ねてくる氷室。
俺の思考回路はショート寸前だ。
壊れたおもちゃのように、カクカクと首を縦に振る。
「う、うん、確かに、俺と氷室は、恋人になった」
「っ、士郎!」
再び水銀燈が、氷室を押しのける勢いで問い詰めてくる。
「貴方、私に言ったわよね?
足りないところを助け合うのがパートナーだ、って。
私と一緒に居てくれる、って!
まさか忘れてないでしょうねぇ!?」
「忘れてない!
忘れてなんか無いから!」
「衛宮……君が、水銀燈を大切に思っていることは知っている。
だが、私のことを好きと言ってくれた、あの言葉は嘘だったのか?
私だけが空回りしていただけだったのか……?」
「んなわけあるかっ!
俺が氷室を好きだって言ったのは本音も本音だっ!」
「……では……」
「それじゃあ……」
って、あ、あれ?
いつのまにか、二人とも俺にめちゃくちゃ近寄ってきてるような……。
「「どっちが大事なのか、はっきりして」」
投票結果
α:3
β:1
γ:5
連載時コメント
+
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... |
525 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 20:15:10
あれ? αとβに「複数選択可」の注釈が無いよ?
526 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 20:15:50
γ:無理! 決められない!!
( ゚∀゚)o彡°修羅場!修羅場!
527 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 20:16:16
もうどれを選んでもデッドエンド一択にしか見えない件w
528 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 20:27:22
α:水銀燈の契約者。
たとえデッドエンドでも後悔はない
いや、銀剣終わったら後悔するかも
でも銀様が好きなんだっ!
529 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 20:35:03
γ
誰か割り込んで来いwww
530 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 20:51:04
γ:無理! 決められない!!
531 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 20:54:22
α:水銀燈の契約者。
俺はこの当初の目的を選ぶぜ!……いや、結構真面目に考えて。
532 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 20:56:16
γ:無理! 決められない!!
533 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 21:28:16
β:氷室の恋人。
せっかくだから(以下略)
534 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 21:50:07
α:水銀燈の契約者。
まあタイトルがあれなんで
535 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 22:07:08
γ:無理! 決められない!!
536 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 22:26:02
α:水銀燈の契約者。
529が無効になるかもしれないので一応。
デッドエンドっぽいが、俺には他の選択肢はない!
537 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 22:42:40
γ:無理! 決められない!!
シロウはヘタレだ!
538 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 22:44:04
α:水銀燈の契約者。
新必殺音速火炎斬!
539 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 22:46:25
「水銀燈の契約者」「氷室の恋人」
「両方」やらなくっちゃあならないってのが、「主人公」のつらいところだな。
覚悟はいいか?士郎はきっとできていないw
540 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 23:36:32
α
541 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 23:49:39
なんか急に雲行きが怪しくなってきましたねw
542 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 23:51:01
γで決定か
まあおまいら落ち着け
銀様は契約者つまり婚約者転じて嫁
そして氷室は恋人
なんの問題もないじゃないか
543 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/20(土) 23:53:14
そんな修羅場を尻目に蒼い子のターンを全裸で待ってる俺もいる。
544 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/12/21(日) 00:43:45
542
お前が…お前たちが俺の鞘だ!!
でさわやかにエンドですね、わかります
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最終更新:2008年12月21日 08:28