339 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/10(日) 03:50:00

……もう少し、もう少しだけ一緒にいよう。
そんな事を考え、襖を閉め、冷茶を茶碗に注いだ。

——ここはね、僕の修行場なんだ。
ふと、切嗣のそんな言葉を思い出した。
ひたすらに広い屋敷の、二畳しかない、電灯もない部屋。
考えてみれば、切嗣が死んだ時、藤ねえが籠もった部屋だったな、ここって。

それ以来、かな、そう言う場所だと意識したのは。
掃除の時にまとめてやってしまおうと考える位で、ここがどういう場所なのかを考えた事はなかった。

なんとなく感慨に耽ってしまう。
と、襖を叩く音が聞こえた。
「ん、誰?」
「あ、私です」
「桜? どうしたんだ?」
襖を開ける。
「あ、いえ、お風呂全員出ましたので先輩もどうかな、と」
「わかった、もう少ししたら行くよ、あ、あのシベリアトラどうなった?」
「ええ、さっきライダーとキャスターさんが縁側に繋ぎました、寝ちゃったみたいです、ライダーの話だと寂しそうだったと」
「ん、そっか、じゃ適当に風呂は入るよ」
「はい、わかりました、まだみんな居間に居るので何かあったら呼んでくださいね」
「わかった」
それじゃ失礼します、と。
襖は閉められ、居間への足音が続いた。


閉め切った部屋、枕元の士郎、布団で眠る藤ねえ、ただそれだけで表せる畳の部屋。
「切嗣さん……」
藤ねえの呟きが聞こえる。
暗かったがよく見れば分かる、藤ねえが泣いていた。
場所がそうさせるのか、それとも藤ねえの心の奥がそうさせるのか。
「親父……藤ねえはまだ泣いているよ」
——うん、そうだね、でも僕はもう居ないから、士郎が慰めてあげると良い、お嫁さんに貰ってあげるとか良いかもね
そんな事を言いそうだと考えた。
「それは良くない事だよ、桜が居るんだ」
——うん、それじゃ難しいね、じゃあ男の甲斐性を見せつけるとかどうだろう? 幸いこの家には女の子も一杯居るようだからね
「ははは……ハーレム建築かい? 親父も冗談を言うようになったな」
——そう、それが女の子を一番泣かせない選択肢だよ、もしかしたら激怒されるかもしれないけど
「泣かせないって意味ではある意味でそれも正義の味方、か」
立ち上がる。
「ありがとな、親父」
部屋から出る時、そんな事を口にした。
——でもね、今もきっと——
最後の言葉は、よく分からなかった。

——さあ、みんなの為にも、やるべき事を片付けなければ
いつの間にか、全身に力が漲っていた。


藤:まずキャスターの出自の確認だ
ね:まずライダーの傷の事を確認するべきだ
え:まず遠坂と、今日戦ったサーヴァント、そして赤い男について話をするべきだ
の:まず桜の調子を確認しよう、全身の状態が変化しているんだからな
夢:まずルヴィアの精神状態を確認しよう、今なら彼女は引き返せる

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最終更新:2006年09月11日 20:34