424 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/11(月) 02:53:40
……まず最初にやるべきは参加する人間を間違えない事だ。
自分、衛宮士郎自身は既にサーヴァントも召還してしまったし、引くつもりはない。
遠坂、桜、ライダーは既に経験者で、芯の強さもある、引く事はないだろう。
問題は彼女だ。
如何せん付き合いも浅く、理解し切れているとは到底言えない、まして彼女は初参加だ。
逃げられるなら逃げても良いはずの事だ、この戦いは"本来"強制されるものではないのだから。
……よし、彼女に確認を取ろう。
桜の話では居間にいるらしい、確認に向かおう。
縁側の廊下を歩く、本当にシベリアトラが眠っていた。
居間に近付くと、誰かの話声が聞こえてきた。
「……では貴方の展開したあの空間、あれは"神秘を明らかにする物"と言う事で良いのですね?」
「そうなるんじゃないかしら、実際、バーサーカーの力を持ってしても……」
茶の間では互いに茶を啜りながら、ライダーとキャスターが話をしていた。
「つまり、貴方が空間を展開させれば"宝具による真名発動"以外で互いにダメージを与える事が出来ない?」
宝具に関する話らしい、その話はあとでまとめて聞く事にしよう。
「ライダー、キャスター」
「士郎?」
「衛宮君、どうしたの?」
二人が一斉にこちらを見た。
「ああ、悪いんだが、ルヴィアはどこにいるか分かるか?」
「私ならここにいますが、何か?」
台所からルヴィアが顔を出す。
風呂上がりの浴衣姿だというのに、少しだけ強張った表情だった。
「ああ、少し話、いいか?」
「ええ、後は盛り付けだけですから……お話は長いでしょうか?」
「いや、それほど手間は取らせない、はずだが」
「分かりました」
タオルで手を拭き、浴衣の上に着込んだエプロンを外した。
縁側に二人で座る。
ライダーとキャスターはまた何か話をしているようだ。
「突然悪いね」
「いえ、お気になさらず、それで、何の御用ですか?」
「ああ、今日、実際にサーヴァント同士の戦いを見たわけだろう?」
「ええ」
ルヴィアの声が暗い。
「それで、明日もまた、戦うのかの意識確認をね」
「……それは私を試していると?」
ルヴィアの目がつり上がった。
「いや、そうじゃない……前回の、二年前の聖杯戦争の話だが、俺は戦いを止めるって初志があった、結局沢山死んでしまったがね」
自嘲気味に笑う。
無力な自分を笑った。
「そして今回はどれだけ召還されるか分からないだろう? だから、巻き込まれたり、巻き込んだりの人間は少ない方が良いと思ったんだ
」
「……聖杯が目的ではなかったと?」
「ああ、俺に望みなんてない、ただ人が死んでいくのを見たくなかった、守りたかったんだ」
それは、二年前の志の話だった。
ルヴィアが言った。
「私もそうです、聖杯に望みなんてありません」
「ルヴィア?」
「あるとすれば、己を試す事ですわ……」
夜空を見上げる。
「貴方の話を聞いて、どれだけ巻き込まれる人間を少なくできるか、どれだけ守れるかにもチャレンジしたくなりましたわ」
「それじゃあ……」
「ええ、勿論明日も戦いますわ、その為にも、サーヴァントを呼ばなくてはなりませんがね」
「ああ、そうか……」
きっと彼女は、遠坂と同じ、芯に甘さがあるが、その甘さが好ましい人間なんだ。
勿論それを口に出したりはしない、きっと同じように怒るだろうから。
「ああ、時間を取ってくれてサンキュな」
「いえ、それよりも夕飯も出来ましたから、二人を呼んできて頂けます?」
「そういえば二人居なかったな、桜と遠坂はどこに居るんだ?」
「確か洋間の方でしたわ、キャスターが落とした何かを見たら、急に二人の表情が変わったように思えましたが……」
料理の火加減が丁度微妙なところでしたから、とルヴィアが笑った。
「ん、わかった、呼んでくるよ」
なんだろうな?
とにかく洋間の方に向かおう。
洋間で明かりがついている部屋は……
遠坂の部屋か。
「桜、遠坂、夕飯だぞ……?」
何度かノックをする、だがまるで返答がない。
「……入るぞ?」
遠坂の部屋に入る。
すると。
最終更新:2006年09月11日 20:35