隣町での聖杯戦争 今までの設定のまとめ


459 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/12(火) 03:45:32

「納得できるかー!」
部屋に入った途端、遠坂に殴られた。

顎に綺麗に入った一撃は、割と簡単に人間の体って吹き飛ぶんだなぁと言う事を実感させてくれた。
実感したくもない事だったが。

「ね、姉さん、いきなり殴るのはマズイんじゃ……」
吹き飛んだ先の壁に寄りかかりぐったりしたままの士郎を見ながら桜が言った。
「ええぃ、離せ桜、私はこいつを問いつめねばならんのじゃ」
なんだか時代劇がかっているなぁと、朦朧とした意識で思った。
「何者なのよアンタのキャスターは!」
怒っている、なんだかわからんが凄く怒ってる。


「と、遠坂、何を怒っているのだ……」
意識を取り戻して、気をはっきり戻してから聞いた。
「これよ、これ!」
指さした先には幾つかの宝石が転がっていた。
数は6、色は似た色もあるがバラバラだ。
「……遠坂の宝石か?」
値打ち物のようだが、と続ける。
「ええぃ、どこまでボケよるかこの男は」
「多分姉さんが殴ったからだと思いますよ」
そう言いながら、無事を確かめた桜は再び手元の本に目を戻す。
「とりあえずここに座りなさい、士郎」
言われた場所に座る、宝石の目の前だ。
「桜、その本貸して」
言われて桜が遠坂に本を渡す。
「これよ、これ」
本のページに載せられた写真と、目の前に転がる宝石は、少なくとも素人目には同じ物であった。
しかし、そのページの内容が驚愕に至らせた。
「遠坂、これって……」
「そうよ、そこに転がってるのは間違いなくホープ・ダイヤよ」
続いて桜が開いたページの写真も、他の宝石の一つにそっくりだった。
「それにこれは、ピゴット・ダイヤモンド、写真の物は模型ですが、多分これは本物です」
「他にもサンシー、リージェント、コ・イ・ヌール、どれもこれも値段の付けられないような代物よ」
売るつもりはないけど、と遠坂が付け加えた。

『持ち主を死に至らしめる』ホープ。
『歴史の闇に消えた』ピゴット。
『暗殺者を招く』サンシー。
『叶わぬ夢を囁く』リージェント。
『男を破滅に招く』コ・イ・ヌール。

「確かに本を読む限りだととんでもない事のようだが……遠坂、何を怒ってるんだ?」
「決まってるでしょ、まるで正体が分からない事よ」
確かに、キャスターは自称『女子高生』だが、本当にそうなら美術館に見に行く事は可能だとしても、所有者となることは不可能だ。
特にピゴットなど、19世紀にどこかに散逸してしまっているのだから尚のこと不可能だ。
「それに……曰く付きの宝石だけじゃないのよ」
そう言って差し出した赤い宝石は、どうと言う事のない、普通の宝石のようだった。

460 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/12(火) 03:46:47

「これは?」
「待って……öffnen Sie sich——」
遠坂が何かを唱え始める。
すると宝石は一本の刃物になった。
「手術用のメスみたいな形になってるけど……ナイフか?」
「そう、士郎なら解析できるでしょ? ちょっとやってみてくれるかしら? そうすれば多分分かるから」
「わかった……解析、開始——」
己の内に没する。
ナイフを己の内に取り込み、解析する。

——見えた。
どうと言う事はない市街、恐らく日本ではない、周囲の車が現在の物ではない、というか馬車だ。
視界の端に国旗が見える——ここはイギリスか?

ナイフの持ち主が見える、顔までは見えない、だが、持った人物が、女性をザクザクと刻んでいく——
刻んで——
刻んで——
刻め——

「う——」
解析が中断される。
それほどに不快な光景だった。
「見えたでしょ? 今の」
「……ああ、もの凄く気分が悪い、女性が滅多刺しで殺された瞬間が見えた」
「でしょうね、私も時計塔で保管されてるのを見た事があるナイフだったからまさかと思ったんだけど……」
「あれは、やはり『そう』なのか?」
「ええ、士郎が見たのは多分ジャック・ザ・リッパーよ」
英国史を学ぶならば必ず通るであろう19世紀の殺人鬼、ジャック・ザ・リッパー。
世界における連続殺人の起源とされる程の人物。
「これを、キャスターが持っていたのか?」
「ええ、宝石の形でね、私はそれを形にしただけ……しやすいようになってたけどね」
「……なるほど、遠坂が怒る理由も何となく分かった」
確かにまるで正体が掴めない。
調べれば調べる程深みに嵌ってしまうような気がする。
宝石を持っていただけならば宝石に関して何らかのの功績を挙げた人物という評価も可能かも知れない(それでも正体不明だ)が……
さらに切り裂きジャックである。


「考えても仕方ないだろう……直接聞けば良い、そうだ、それに夕飯が出来たんだった」
それで呼びに来たんだったと、思い出した。
「分かったわ、行きましょう、桜」

——確かにキャスターは正体不明だな。


正:夕飯の時に直接キャスターに聞いてみよう
体:いや、それよりも気になるのは何故こんな凄い代物を落として平然と会話をしていられるのだろうか聞いてみよう
不:……そういえばさっき何か話していたな、夕食の後、夜になったらライダーに聞き出せたか聞いてみよう
明:何はともあれ、これはキャスターに返しておくべきだろう

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最終更新:2006年09月12日 13:55