502 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/13(水) 04:13:20

なにはともあれ、これはキャスターに返しておこう。
「これはキャスターに返すけど、それでいいよな、遠坂」
「え? 返すのそれ」
「なんでさ、借りた物は返すべきだろ」
「そりゃそうだけど、もう少し調べたい……」
「とか言いつつ質に流したりしないだろうな」
「そんなことせんわー!」
ストレート。
今度は顎ではなく頸動脈を狙ってきた。
咄嗟のガードで防いだが、直撃ならば危険だった。
「遠坂、最近凶暴になってないか、カルシウム摂ってるか?」
「摂ってるわよ! 士郎が怒らせるような事言うからでしょ!」
和室の日本刀(切嗣いわく鎌倉土産の安物だが、刃引きはされていない)売ろうとした過去があるので信用できませんがな。
「直接聞けば良いと思うが……調べるならキャスターに許可を取るんだぞ?」
「分かったわよ、とにかく行きましょう、夕飯なんでしょう? 行くわよ、桜」
「あ、はい」
桜が本を閉じ、本棚にしまう。
「桜、後片づけは後で良いんじゃないか? 遠坂が許可を取れば夕飯の後また調べるだろ?」
「そうですけど、この位はやっておかないといけないんじゃないですか?」
「ま、本くらいはしまっておくか……宝石は桜が持っててくれ」
置きっぱなしはまずかろう。


夕食の時間、キャスターはあっさりと許可を出した。
「さっきの宝石を調べる? 別に良いよ? あ、ルヴィアさん、このソーセージみたいなのはなんですか?」
キャスターはむしろルヴィアの料理の方に興味があるようだ。
ジャガイモメインのグラタンを突きながら他の皿にも目移りしている。
「マッカラの事ですか? これもソーセージで……さっきライダーさんに庭で焼いて頂きました。
 火で直接炙るので焦げてるように見えますけど中はまだ冷たいでしょうから気をつけて」
「わ、ホントだ、なんとなく味わった事があるような……でも意外な味ー」
世界に名だたる宝石なのに、この執着の薄さはなんなのだろう。
執着しすぎても嫌だが、この状態も少し不気味である。
……ま、確かに料理は美味いけど。

結局キャスターの正体は不明のまま夕食は終わった。
「さて、では本題に入りましょう」
皿を洗った後ルヴィアが言った。
桜と遠坂は部屋に籠もって調べ物を始めてしまっており、茶の間にいるのはルヴィアと士郎、ライダーとキャスターの四人だけだった。
「キャスターさん、衛宮士郎の仲間として、真名は無理としても、貴方の宝具についての説明を求めます」
「そうですね、出来れば全員の前で説明した方がいいかもしれません」
ライダーが同調する。
「そんなに凄い宝具なのか? ライダー」
「ええ、彼女の説明から判断して、その扱いの難しさと"嵌った"際の威力は私の宝具の比ではありません」
とはいえ、使いやすさや具体性等は私の方が遙かに上ですが、とライダーは髪の毛をさらりと流しながら続けた。
「……わかったわ、説明する」
「待った、長くなりそうだから茶を入れよう、ライダーは桜と遠坂を連れてきてくれ」
「わかったわ」

503 名前: 隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM 投稿日: 2006/09/13(水) 04:14:10

「いざこうやって説明するとなると難しいね……」
全員が揃った後、キャスターはそんな事を言った。

ならば簡単な説明だけをして、それに対して質問をするという形ではどうかと言う遠坂の提案を受けてキャスターが話し始めた。

「まずバーサーカーとの戦いで最初に見せたように、私の宝具は空間を展開、その中でのみ効力を発揮するものよ」
普段はただの布と大して変わりませんと彼女は言った。
「つまり、その空間を展開する間もなく攻撃されたら対処不可能って事か?」
「そうね、空間の範囲はそれほど変化させられないし、私が移動したから移動できるという類のものでもないし」
「じゃあその空間内でどんな事が可能なの?」
「その空間内の現実をねじ曲げるのよ」
「現実を、ねじ曲げる?」
キャスターが頷く。
「まず最初の空間展開の段階で周囲の現実を飲み込むわけだけど、一般人はその空間から一時的に消滅するわ。
 サーヴァントとマスターのように宝具を持つ存在と、それに繋がった人は消滅しないようだけど」
「ちょっと待った、消滅した人間はどうなる?」
「特に何も、その人を消滅させようとしない限りは空間が消滅すれば元通りよ」
「消滅っていうと……あの体がフワフワして気持ち良いような悪いような、あの感覚の事でしょうか?」
ルヴィアが聞く、そう言えばあの戦いの時空間に自分の次に近かったのは彼女だと、士郎が思い当たる。
「私は経験した事が無いからなんとも、でも多分それだと思うわ」
「あの気持ち悪さは何とも言えませんが、被害がそれだけならば許容範囲、と言えるのでしょうか?」
「その辺りは……どうだろうね」
「とにかく、現実をねじ曲げ、その存在が許容しうる現実への復元力を突破させれば、その存在は現実へ戻る事は不可能となるの」
つまり、宝具の限界までね。
「それじゃあ、バーサーカーの力を無力化した……あれは? 空間の力みたいだけど」
「ああ、あれは……そうね、バーサーカーの力だけで現実を歪める事は不可能なのよ、現実で破壊する事は出来てもね。
 一方、宝具の発動クラスの現実歪曲性ならば、空間内の現実を歪める事も可能なの」
「つまり宝具を展開しない限り空間内では戦闘が不能となるということです」
ライダーが捕捉する。
「じゃあキャスターはどうやって戦うんだ? 真名を発動させなかったら意味がないんだろ?」
「それがこの子の偉い所よ」
そう言って彼女は宝具をちゃぶ台の上に置く。
「この中央の宝石と周囲の宝石、これによって宝具の能力は発動するわ、真名を言うことなくよ」
「つまり……貴女は真名を言うことなく宝具の能力を発動させられる、相手は宝具の真名を解放しなくては攻撃にならない……」
遠坂が考え出す。
「……途方もないアドバンテージじゃない」
結論はすぐに出た。
「ええ、でもだからといって必ずしも有利というわけじゃないのよ。
 最初に言ったように展開前に攻撃されたら駄目だし、勿論宝具でやられたら駄目だし」
「なるほど、絶対無敵というわけではないのね」
あのバーサーカー<<ムッシュー・ド・パリ>>はマスターの承認なしに能力を発動させられない。
故に絶対的なアドバンテージを得て、結果撤退させられたと言うことか。

「まあ、宝具の説明はそんなところですかねー」
キャスターがくだけた口調になり、テレビをつける。
「ああ、ちょっと待った」
聞いておきたいことがあった。


イ:「女子高生のお前がどうしてそんな物を所持するようになったんだ?」
リ:「あの宝石はどうやって手に入れたものなんだ?」
ヤ:「結局その宝具はいったい何なんだ?」

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最終更新:2006年09月15日 00:46