88 :とある魔術師と超電子箱 ◆yfIvtTVRmA:2009/11/23(月) 12:23:28 ID:WqdxcIPA0

凛は冷静にここまでの発言を洗い直してみた。

①ケイネスは科学の方面で大敗し無残な最期を迎えた魔術師である。
②私は家電を避けている。(それ以外は学業に問題はなかった)
③アンケートの結果②が判明し、①を根拠にロードは私に特別授業を行う。

まあ、例えが極端だとは思う。科学に無頓着かつ科学を苦手とする魔術師が皆ケイネスの様な
人生を送るとは限らない。むしろ、ケイネスは数十万人に一人ぐらいのレアケースだろう。
だが、それはそれとしてロードの補習に問題性はないしここまでの言葉に理論の飛躍も見られない。
補習はしゃくだが断って単位修得できなくなったり期末判定が1ランク下になるのよりはずっとまし。

「ロードのおっしゃる通りだと思います。確かにこの補習は必要ですね」

凛は補習を受ける事を肯定した。そしてその意見を耳にすると同時にエルメロイは教壇の下に潜り、
目の前から姿を消す。

「ロード?」

ガッサガッサと何かを探る音が鳴り、教壇の上に次々とモノが置かれていく。
ビニールで出来た細い電気コードと思われるもの、数冊のメモ帳、プラスチック製の箱型の電子機器が二つ、
両腕に収まる12インチほどだが新しいテレビ、最後に赤や緑や灰色の長方形の物質が10数個教壇の上に
置かれた後、ロード・エルメロイがよっこいせと呟きながら頭を出す。

「ミス・トオサカ、確かに言ったね。補習を受ける、と」

教壇から生えて来たロード・エルメロイの顔、その変化と教壇一杯に置かれたモノを見て凛は自分の先程の発言を
ただちに後悔する。

ニヤニヤとして緩みきった少年の様な三十男の表情は、先程までのプロフェッサーとまで呼ばれた男の
普段のそれとは全くの別モノ。この場に部外者がいたならば、教壇の下に潜った時に双子の兄と入れ替わったのではないかと
錯覚をおこすだろう。しかし、凛はこういう顔をするエルメロイを知っていた。
7月の暑い日、前期の課題を提出しに部屋を訪れた時、彼は今の様な顔をしながらコントローラーを握っていた。

「始めようか」

Tシャツ一枚姿ではないしあの時からきっちり半年分ふけた顔ではあるが、あの日のままのゲーマーの眼差し。
今日は凛にとって最悪の誕生日だった。


               ゲームセンターCX有野の挑戦×Fate倫敦編
               とある魔術師と超電子箱(スーパーファミコン)
                     プロローグ終了


89 :とある魔術師と超電子箱 ◆yfIvtTVRmA:2009/11/23(月) 12:25:17 ID:WqdxcIPA0
(映像が消え館内に明かりが戻る)

第一章は20分後に開始となります。外に出て休憩する場合はチケットの半券をお見せになってください。
次の休憩はかなり先になりますので今の内にトイレに向かう事をお勧めいたします。
間もなく、第一章が始まります。席にお着きください。

(再度照明落ちる)

第一章『いっき』

「ミス・トオサカ、これが何か分かるかね?」
「舐めないでください先生。流石に私でもピコピコぐらいは知っています」

遠坂凛は現時点で全魔術師中10指に入る科学オンチであるが幸いにも日本人であり、普通の学生に交じり日常を過ごしてきた。
ゆえに分かる。ロードが用意した二つの箱の名称とその差が分かる。

「向かって左、赤と白に塗られた小さなピコピコの名はファミコン。私が小学校入学前頃にピークを迎えた
テレビを使った遊具。
向かって右、ファミコンより一回り大きなグレー一色のピコピコの名はスーパーファミコン。略してスーファミ。
ファミコンから数年後発売されたバージョンアップ機ですね」
「おおむね正解だよ、さて、今回の補習では私の持ってきたゲームソフトの内どれか一つでもエンディングを見たら
合格、君の科学に対する能力の成長を認めよう」
「分かりましたわ。やればいいんでしょう?さっさと終わらせて帰らせていただきます」

とにかく了承してしまった以上、凛はロードの趣味全開の茶番とも思える補習を早く終わらせたかった。
その為に教壇の上に無造作に置かれたソフトを見て最短のクリアへの道を考える。
まず、スーパーファミコンのソフトはファミコンよりも大容量だという話をクラスメートが喋っていたのを思い出す。
何を持って大容量なのかは分からないが、おそらくスーパーファミコンの方が話しが難しく長いと推測される。
それにあんなボタンいっぱい付いたスーファミのコントローラーは触る気にもなれない。
よって、凛がプレイするのはファミコンのゲーム。その中でもより単純そうなものがいい。

「ドラゴンクエストⅠ」…パス、内容はともかく凛もこれがビッグタイトルだと知っている。一日でクリアできなさそう。
「ドルアーガの塔」…パス、パッケージがドラゴンクエストと似ているので危険。
「高橋名人の冒険島」…パス、高校の悪友が「キャラゲーはクソだぜ」と発言していたし、カセットのイラストも凝っている。長編かも。

そして、凛はついに自分の考えた条件に見合うカセットを見つける。
(あ、これいいかも)
「いっき」というタイトルが書かれたカセットを手に取り確認する。
くすみきった古いカセットには適当に書かれた主役らしき江戸時代の農民とそれに寄り添う町娘のイラスト。
大作っぽくないし容量とかも少なそうである。

「ふうん、それにするのかい」
「はい」

カセットをファミコンに差し込み電源を入れる。テレビの中で大冒険が今、始まら、ない。

「…?」

テレビからはブーンという不快な音。画面は灰色一色。
一旦スイッチを切り、再度電源を入れ直す。
テレビからはブーンという不快な音。画面は灰色一色。
一旦スイッチを切り、再度電源を入れ直す。

テレビからはブーンという不快な音。画面は灰色一色。一旦スイッチを切り、再度電源を入れ直す。
テレビからはブーンという不快な音。画面は灰色一色。一旦スイッチを切り、再度電源を入れ直す。
テレビからはブーンという不快な音。画面は灰色一色。一旦スイッチを切り、再度電源を入れ直す。
テレビからはブーンという不快な音。画面は灰色一色。

[選択肢]
イ.「ロード、このピコピコ壊れてますよ」。
ロ.自分で何とかする。

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最終更新:2009年12月01日 19:03