98 :とある魔術師と超電子箱 ◆yfIvtTVRmA:2009/11/25(水) 21:45:13 ID:eHedbMtg0

カチカチカチカチカチカチ、納豆ならば30回はかき混ぜられるほどの時間。

10回近く電源スイッチを上下に動かすがブーンという不快な音と灰色の画面は一向に変わらない。
ここから凛が得た結論は―、

「ロード、このピコピコ壊れてますよ」

電源を入れても動かない家電は壊れているものである。そう考えロードに主張した凛はある意味正しい。

「ピコピコが壊れてちゃ残念ながら補習はできませんよね。ですから補習を後日に、
出来ればピコピコ以外のもので普通の補習をやっていただけるとありがたいんですけど」
「ミス・トオサカ、君は二つほど間違っている」

一見正論を吐いているかに見える凛の意見を真っ向から否定するエルメロイ。

「これ以外の家電だときっと君はもっと酷い思いをする事になるよ、そしてもう一つ」

電源がオフの状態なのを確認してから彼はカセットを本体から抜き取り、
接触部分にフーと息を吹きかける。凛にはその姿がカセットに命を吹き込んでいる様にも見えた。

 アリーノ オ ン
「挑戦、開始」

ポツリと呟きながら凛がやったよりも若干ゆっくり目に電源をオンにする。
10回近くに渡り響き続けた不快な音は聞こえないし画面も灰色では無い。

「…何よ、私の時は応えてくれなかったくせにロードの時は一発なんて」

結果として自分が恥をかいた形になった気がして凛はグチをこぼす。

「昔のゲームはこういうものなのだよ。息吹を与え呼びかけてやらないとすぐに機嫌を損ねる」
「まるでクセの強い使い魔ですわね」
「その通り、だから家電も突き詰めれば使い魔との付き合いより怖いものじゃない。
どちらも人間が怠ける為に生み出したものだからな。さ、ここからは君がやるんだ」
「はい」

右手で本体にはめられたコントローラーを抜き取り胸元に構える。
指の腹で並んだ丸い二つのボタンと十字型のボタンの感触を確かめる。当たり前の話だが
数週間前にいじったホテルのエアコンのリモコンのボタン同様押したら戻ってくる。
つまりボタンは壊れてはいないようだ。(エアコンはその後壊れ、凛は脱兎となったのだが)

だが、しばらくして新たな問題発生。一通りのボタンを押したのにテレビ画面に変化が訪れないのだ。
どれがのボタンがゲームスタートに関わっているはず、それなのに全てのボタン、十字のボタンの
右上についているレバーと四角に並んだ空気穴にも指を置いてためしたのだが相変わらず
「いっき」と大きく書かれたタイトルと思われる画面から動かない。そして凛は当然の結論に辿り着く。

「ロード、画面がフリーズしてます」
「ミス・トオサカ、君が持っているのは二人プレイ時用のコントローラーだ。そっちではスタートは出来ない」

エルメロイのツッコミから数秒、自分がまたポカをやった事を自覚し顔を真っ赤にする。

「ううっ、スタート地点にも立ってないのに凡ミス二回目。留年確定だわ…」
「その判断を下すのは君じゃ無くて私だ、まだ大丈夫だから落ち着きなさい」
「…ハイ」

ちょっとだけ滲んでいた涙を拭きとり、何事も無かったかのように向かって左のⅠと書かれた方の
コントローラーを持つ。さあ準備は整った、整った?本当に?
(…はて、何か忘れていないかしら私?)
後はボタンを押してゲームをスタートするだけ、じゃあその後は何をすればいいのか。
凛はこのゲームの目的も操作方法も理解していない事を今この瞬間に理解した。
家電ならマニュアル、この場合は説明書と言った方が通りがイイだろう。それが必要だ。

[選択肢]
イ.当然ロードに説明書を要求する。」。
ロ.読んだら、というかこれ以上ロードに頼ったら負けな気がするからこのままスタート。
ハ.10秒ほど考え込む。

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最終更新:2009年12月01日 19:06