116 :とある魔術師と超電子箱 ◆yfIvtTVRmA:2009/12/01(火) 20:53:14 ID:X4yt.TB20
手裏剣が刺さるまで数瞬。このままじっとしてやられるのを待つのは合格から一歩遠のく。
凛は間に合うよう祈りを込め全力で右方向のキーを押す。
そして、初心者のプレイにありがちだがこの時凛は体も傾けつつキーを押していた。
忍者の投げた手裏剣は農夫の立っていた場所を通り過ぎる。凛の反応は間に合っていたのだ。
しかし凛がいくらキーを押しても農夫は二度と動かない。農夫の首は胴体から離れ田んぼに転がり、
画面の上半分は竹やりで覆われていた。
凛は自分が持っている聞きかじりの情報を照らし合わせ答えを導き出す。
「ふっ、早くも裏面突入というやつですかロード?」
裏面の意味も分からないがハッタリでそう言ってみる。
「違う、これこそ正真正銘のフリーズだ」
遠坂凛不正解。正解はこちら。
手裏剣を交わす為の操作で凛が体を傾けた時、その運動はコントローラーのコードを通して
本体にも伝わっていた。並みの初心者を遥かに凌駕する凛のムーブは本体の重心を狂わせるのに
十分なものだった。結果ファミコンは凛達から見て90度回転し、Ⅱコンを足場とした縦置き型にチェンジした。
家庭用ゲーム機が縦置きに対応したのはプレステ2の時代以降。ファミコンのフリーズは
時代を先取りしすぎた凛の無茶振りへの精いっぱいの抵抗だったのかもしれない。
さて、フリーズしてしまったゲームは再起動しなければプレイできない。
凛は電源をオフにしてからソフトを抜きロード・エルメロイに渡す。
「先生、お願いします」
「自分でやんなさい」
「だってぇ、さっき先生の息が入ったじゃないですか。間接キッスになりますよ」
「はいはい、カマトトぶったフリして嫌な事を私に押し付けない」
「…はーい」
これも補習の一部と諦めロードがやった通りの行為を繰り返す。
カセットに息を吹き込み本体に差し込んでからゆっくりと―、
アリーノ オン
「挑戦、開始」
『いっき』のオープニング画面が出る、だが少し様子がおかしい。
文字が所々潰れており、キーを押すたびに画面にノイズが走る。
「まさか、今度こそ裏面」
「フリーズしかかってるね、やり直し」
4回目の電源切り替えでようやく最初に見た『いっき』と同じ完全なタイトル絵に到達。
凛はこのプレイで絶対にクリアする事を決意しつつスタートボタンを押す。
フリーズする度にアリーノオンアリーノオン連呼するのは19歳の女性にとってかなり恥ずかしいものだから。
今度はタイトル音に物怖じする事なく、凛はある閃きをゲーム開始と共に実践する。
これこそがまだ手裏剣一回避けただけの彼女なりに辿り着いた攻略法。
最終更新:2009年12月01日 23:25