800 名前: 766 ◆6XM97QofVQ 投稿日: 2006/08/14(月) 20:16:23
予定通り、シャワーを浴びる。
「だよなー」
ほっ、と安心する。
最後のなんて選ばれたら我慢ならない。
こんな寒空の下、なんで全裸にならねばいけないのか。
脱衣所でも全裸になるが、それはそれこれはこれ。
風呂に入るために裸になるのは当然だが、庭先で裸になるのはただの変態である。
……というか、そもそも何をさせたかったんだろう?
「まあ、そんなことよりシャワーシャワー」
足音を立てて廊下を横切り、風呂場へと向かう。
これで、多分桜も俺が起きた事に気付くだろう。
一日の朝はすっきりさっぱり迎えた方が気持ち良い。
朝風呂まではしないが、朝シャワーは良い。寝ぼけた頭をしゃっきりさせるのにも役立つし。
脱衣所で汗が冷えて冷たくなったシャツを脱ぎ、洗濯機の中に放り込む。
「ついでだし、洗濯しちまうか」
寒気を感じながらも洗濯の準備をして、洗濯機の電源起動。
ゴゥンゴゥンと音を出して動き出す頃には、俺の身体は完全に冷え切っていた。
さすがは冬の朝。
冬木の冬が暖冬だからと言って、気を抜いているとすぐに痛い目をみる。全身鳥肌だ。
ちゃちゃーっと三分ほどでシャワーを済ませる。
風呂場で一通りタオルで身体の水分を拭ってから脱衣所に出る。
こうすると脱衣所に水滴があまり落ちず、カビが発生したりする原因を減らせるという豆知識。
腰にタオルを巻いて、意気揚々と脱衣所に繋がる扉を開き———
「あ」
「え?」
———そこに、桜がいた。しかも、なぜか俺の服を抱えて。
「あ、え——?」
意味が分からない。頭が働かない。まともに思考できない。
それは桜も同じコトらしく、わたわたと戸惑いながら、身振り手振りで慌てていますとアピールしている。
「こ、これはですね、先輩がシャワーを浴びに行ったようなので、タオルを取り替えようと思ってお風呂場にきたんですけど、
先輩が着替えを忘れていたようなので、その、持ってきてあげようと思って、先輩のお部屋に行って、
取ってきた着替えで、あの、や、やましい気持ちがあったわけじゃないんです!
その、あの、えっと—————す、すいませんでしたぁ!!」
顔を真っ赤にして謝るなり、たたたー、と凄まじい勢いで走り去ってしまう桜。
そして状況が把握できず、置いてけぼりな俺。
ワケが分からずその場で固まっていると、ガララーと玄関の扉を開けた音がした。
「————まさか、桜!」
おそらく、桜があのまま玄関を飛び出したのだろう。そして、そのまま桜は学校に直行する。
学校で桜に会う機会は皆無だ。まして、今日はバイトがあるため帰りは遅い。そうなると、謝る機会は明日になってしまう。
相手は引っ込み思案なあの桜だ。このまま謝らなければ、今日一日中落ち込みまくる姿は容易に想像できる。
今すぐ追わなければ追いつけない。
しかし、俺の今の格好は腰にタオル一枚巻いただけ。着替えなくては外には出れない。
最終更新:2006年09月14日 16:55